第7話 私は目立ちたくないのに・・・
「本日より、こちらのお二方が我が学院に転入いたしました。それでは、自己紹介をお願いします。」
決闘の翌日の朝、私たちはアカディア先生に付いて、これから授業を受ける教室の教壇に立っていた。
黒板には私たちの名前が書かれており、やはり私の名前が雷帝の名前と同じなのが気になるのか、それとも転入生が来るというイベントがそういうものなのか教室内は少しざわざわとしていた。
「私の名前はエルルア。適性は雷属性で、仲のいい人からはエルルって呼ばれているからそう呼んでくれると嬉しいかな。今日からよろしくね。」
自己紹介はこんなものでいいだろう。名字まで入れると雷帝云々で騒ぎになる可能性があるし、この世界において名字がない人間っていうのは少なくないから、名乗る必要はないだろう。主従関係については自分からは公言しないように言ってあるし、この学院ではあくまでただの雷属性の魔術師『エルルア』として平和に過ごせるといいな。
「私の名前はルゥといいます。お隣にいらっしゃるエルル様とは旧知の仲で、私の魔術の基礎はエルル様に教えていただきました。昨日の決闘をご覧いただいた方ならご存知でしょうが、私の適正は水属性です。以後、よろしくお願いいたします。」
いい感じなんじゃないかな?特に火種になりそうなことも言ってなかったし。
まぁ、基礎を教えた云々の件は果たして必要だったのかと思うところはあるけど。
「エルルちゃんに質問いいでしょうか!?」
快活な感じの茶髪の少女が席を立って質問してきた。
ちゃん付けにルゥが一瞬反応したが、前からは見えないところを軽く電気ショックをして牽制した。
「何かな?」
「私昨日の決闘を最後まで見ていたんですけど、適性が雷属性ということは昨日のルゥちゃんの大津波を蒸発させた雷ってエルルちゃんが放ったものなんですか?」
「あー、えっと・・・それは・・・。」
「その通りです。」
私が返答に困っている間にルゥが即答した。
「昨日のエルル様は攻撃魔術で私の魔術を相殺しておりました。それも観客席にいた皆様どころか私にも傷一つ負わせないように。」
「ちょっとルゥ?」
なにやらルゥが目を輝かせているような気がする・・・。
「ということはエルルちゃんはルゥちゃんよりも強いってコト!?」
「もちろんです。昨日の私の魔術が本気の一撃だったわけではないですが、エルル様は私なんか足元にも及ばないほど強いですよ。」
その後も、ルゥと天真爛漫な少女『クレア・ウィンガルド』による私談義は、恥ずかしさで完全に顔が真っ赤になった私を見かねたアカディア先生が止めるまで終わらなかった。
無論、目立たず平和に過ごすことなどできるわけもなく、初日から有名人となってしまったのは言うまでもない。
・・・ほんと勘弁してほしい・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます