第6話 そういえば結局試着してないじゃん

「エンディミール様がいていいわけがないでしょう。」

アカディア先生とルゥの決闘が終わった後で、学院長室で私たちの制服の試着を始めようとしたら珍しくルゥが声を荒げた。

「別に知らない相手じゃないんだしよくない?それこそ小さいころにはお風呂に入れてもらったこともあったじゃん。」

「それは小さい時だったから許されたのですよ、エルル様。今の成長されたエルル様の肌を男性にさらすわけには参りません。」

「ほら、ルゥがいるから試着するのは問題ないだろうし、僕は外でゆっくりしているから。ね?」

「そんな気にする必要ないと思うんだけどなぁ。」

私がそうぼやくと、ルゥから気にしてくださいと言わんばかりの目が向けられた。

「それから、あなたも出て行ってください。アカディアさん」

そう言ってルゥは目を向けた先には、こちらに戻ってきてからずっと土下座の姿勢で動かないアカディア先生がいた。

「ですが、私は雷帝様に対し、大変な無礼を働きました。それについての謝罪をさせてもらえるまでは動くわけにはいきません。」

そう言って土下座の姿勢のまま動かないアカディア先生。

あぁ・・・すごく嫌だ。

「私は気にしてないから顔をあげてよ。」

「それでもまだ罰していただいておりません。」

やめてよ。私にとっては舐められるよりもこっちのほうが嫌だ。

こうなってしまった人間はてこでも動かない。

ルゥは怒るだろうけど仕方がないかな。

「それなら罰として、私たちが学院で馴染めるように手伝ってよ、教師として。」

「エルル様!」

案の定、ルゥは私を窘めようとしてきた。

「ルゥは黙って。今回のことはルゥにだって悪いところがあったんだからね。」

「ですが・・・。」

「ですがじゃない。反省して。」

「・・・申し訳ありません。」

「それで良し。」

そう言って、私は落ち込んでしまったルゥの頭をなでてあげる。

実際には、手が届かなくておでこのあたりになってしまったけど。

「ですが、私はルゥさんとの決闘に負けました。そうなった以上、賭けに従って私は教師を辞めなければいけません。」

「そんなの再就職でも何でもすればいいよ。少なくともエンディは私が説得するから。もし、それが気まずいっていうんなら、それも罰のうちっていうことで諦めて。」

『頭の固い人相手はこうして先に逃げ道を塞いであげればいい。』

アストライオが交渉術を教えてくれた時のことを思い出した。

「・・・そういうことでしたら分かりました。私の全力をもってお二方が馴染めるように努力いたします。」

「ありがとう。それじゃあこれからよろしくね、アカディア先生」

「はい、よろしくお願いいたします。エルルア様」

「・・・えっと、様つけるのもやめてね?あくまで私生徒だから。私も敬語練習するし。」

先が少し思いやれるけど、とりあえず学院内でエンディ以外に味方を一人作ることができたのだった。

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