第2話 1000年間に何があったの?

私は朝食を取りながら、ルゥに何があったのか説明してもらった。

曰く、1000年前に私たちがいる国『アストライア』と周辺諸国との間に起きた戦争を終結させた晩に眠りについて以降、今に至るまで私が目覚めなかったとのこと。

ここでなぜ1000年もの間、私やルゥが生きているのかという疑問が湧くと思うので説明しよう。

まず、この世界の住人は例外を除いて火、水、風、雷、地の五属性のうち、一属性のみ適性があり、適性がない属性の魔術は使うことができない。例えば、私であれば雷属性、ルゥであれば水属性が適正となる。そして、適性のある属性の魔術を極地まで極めることにより、体内で魔力を循環させ続ける事で年を取らない体になることができる。そういった不老の特性を持つ者たちは『到達者』と呼ばれ、私やルゥも到達者となっているため1000年間生きていたという訳である。

「ところでアストライオやエンディは元気にしてるの?」

「エンディミール様はご息災の様子で、900年ほど前に開校されたアストライア魔術学院の学院長としてご活躍されております。」

エンディことエンディミール・ワイズマンとは、1000年と少し前に私達が起こしたアストライア建国戦争と呼ばれる戦争で共に戦った戦友であり、私とルゥに魔術を教えた師匠でもある。オールマジシャンと呼ばれる五属性すべてに適性がある魔術師で、その属性数の関係で難しいと言われている複数属性持ちの到達者となっている数少ない人物である。白髪の老人のような外見と、戦時中の活躍により『賢者』の二つ名を付けられている。

「アストライオ様は800年ほど前に隣国との間に起きた戦争の際に・・・。」

「・・・そっか・・・。」

アストライオ・シュレイガンとはアストライア建国戦争を起こし、私達を率いて勝利に導いた『建国の英雄』であり、アストライア王国の初代国王となった男である。火属性の適正持ちで到達者となっており、かつて孤児だった私を拾い、育ててくれた私にとって父親のような存在である。

800年越しの訃報を受けた私を、慰めるように抱きしめてくれたルゥの胸の中で、私はしばらくの間悲しみと後悔で涙を流した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る