居眠り雷帝は抱き枕と夢を見る
満月 新月
第1話 おはよう、ルゥ
目が覚めると、そこは何度も見た記憶のある天井だった。
閉め切ったカーテンの上下の隙間からは、太陽が昇っていることを表す光が差しており、風が木々を揺らす音に混じって鳥の囀る声も聞こえてくる。
まるで物語の中のような環境の中で、私『エルルア・シュレイガン』は起床した。
同年代のくらいの見た目の少女と比べると、些か貧相な体を動かそうとすると、まるで長いこと使っていない蝶番のように、体の節々が軋むことや、常に抱きしめている宝物の抱き枕がそばに無いことに違和感を覚えながら、辺りを見渡す。
今日はまだ来ていないようだ。
「ルゥ」
私の従者にして、唯一の家族である銀髪の少女の名を呼ぶが、しばらくしても物音一つしない。
いつもなら、私が名前を呼ぶとすぐ、扉のノックをするとともに入ってきて、朝の身の回りの世話を始めてくれるのだが、今日はいつまでたってもノックどころか、扉の前に気配すら感じない。
しかし、そのまま寝ていても退屈なだけなので、今日は先に食堂で待っていようと思い、服を着替えて食堂に向かった。
すると、食堂ではすでにルゥが朝食を食べていた。
「おはよう、ルゥ。今日はどうして起こしに来てくれなかったの?」
私は普段通りに声をかけたつもりだった。
しかし、私の声掛けに対し、ルゥは驚いたように目を見開き、やがて涙目で駆け寄り、
「おはようございます。エルル様」
と言いながら抱きしめてきた。
「どうしたの!?ルゥ。私何かやっちゃった?」
「特に何かされたとかではありません。ですが・・・。」
「ですが?」
「1000年もの間お眠りになられていましたので・・・。」
「誰が?」
「エルル様がです。」
「・・・へ?」
その日、屋敷中に私の声が1000年ぶりに響き渡った。
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