第6話 ゴールフード
「この変態が~、1%の確率の未来を呼び寄せるなんて、わたしの計画を粉みじんにしたのはお前か、なにしやがってくれたんですか、あああ、まじ、ドン引きなんですけど!!」
ドン引きにゃんこの部屋の扉が開かれたとき、ヤンデレにゃんこは狂おしいほど愛する対象以外は興味がないので、ふんわりにゃんこがドン引きにゃんこに蹴りを入れられて泣き叫んでいる光景ももちろんスルーした。そして、部屋の隅に置かれた椅子に胡坐をかき、ヤンキーのような態度で腰を下ろした。
「しくしく、ひどいよぉ・・・」ふんわりにゃんこは涙を流しながら地面に倒れた後、壁の隅でシクシクと泣いていた。
「ところでどうするんだにゃ?」ヤンデレにゃんこは裏で狂気に染まった瞳を隠しながら尋ねた。
「こんなバカはほっておいて、考えないと、まじドン引きだわ。」ドン引きにゃんこはふんわりにゃんこを一瞥もせずに言い放った。
ドン引きにゃんこは、姫にゃんこの昨日言っていたことを思い出した。
「ゴールドフードがないと、生きていけない・・・」
「まじですか。このシルバーフードならたくさんありますよ? シルバー向けになりますけど?」
「おいしくない・・・」といいながらも、姫にゃんこはシルバーフードを黙々と食べていた。
「あいつ、ゆるせない」姫にゃんこはシルバーフードを口に運びながら呟いた。
「それで姫様、ゴールドフードのために地球を侵略するなんて、どうするつもりですか?」ドン引きにゃんこが問いかけた。
姫にゃんこは静かに振り向き、ぼーっとした瞳でドン引きにゃんこを見つめた。
「猫パンチする」
「えええええええええええええ、ま、まじですか。ほんきですか…」ドン引きにゃんこは困惑しながら尋ねた。
「とりあえず殴る」姫にゃんこは微かに微笑んだ。
「ええっ、まじで、まじで、本気ですか、姫様!?」ドン引きにゃんこは驚きの声を上げた。
にゃんこ帝国は戦闘にゃん族であり、戦闘に優れた力こそが全てという考えを持っていた。王族は比類なき力を持つものが多く、一騎当千の力を持っていた。その一騎当千の力をもつ帝国でも指折りの第二王女、姫にゃんこの妹でさえ指先一つのチョンだけで半殺しにしたのに、姫にゃんこの必殺技【ねこパンチ】なんかしたらゴールドフードどころか地球が爆発するのではないだろうか。相手のしろにゃんこの戦力も未知数であり、自分のスキルを使用してもエラーが出て、確率が読めないぐらいだ。この二人が戦うと危険な予感しかしない。地球もろとも消滅するのでは、まだ死にたくないんですけど?
「うわー、地球はどうでもいい・・・命がやばい」ドン引きにゃんこは心の中でそう呟きながらも、どうにかしてこの状況を打破しなければならないと決意を新たにした。姫にゃんこの無謀な計画をどうやって軌道修正するか、そしてゴールドフードを確保する方法を見つけるため、ドン引きにゃんこは行動を始めた。
まずは情報収集だ。ドン引きにゃんこは、情報収集のためににゃんこ帝国の一番賢いにゃんこ、メガネにゃんこを呼び出した。メガネにゃんこは、いつも落ち着いていて、情報分析が得意で、ぶかぶかの白い学者服に身を包み、四角い帽子をかぶったちびっこにゃんこだ。
「メガネにゃんこ、ゴールドフードについて詳しく調べてくれない?」ドン引きにゃんこは真剣な表情で頼んだ。
メガネにゃんこは眼鏡をクイっと上げながら、「お任せください。すぐに調べます」と冷静に応じた。
その間にも、ふんわりにゃんこはまだ泣いていた。「うう、ひどいよぉ・・・」
もちろん、皆でスルーした。
一方、ヤンデレにゃんこは部屋の隅で静かに座りながら、心の中で愛する対象を追いかける日を夢見ていた。「えへへ、食べたいにゃ、美味しそうだにゃ。彼を骨の髄まで食べたいにゃ」狂気の愛情は抑えられない。彼女の瞳には狂おしい光が宿っていた。
メガネにゃんこが情報を持って戻ってきた。「ゴールドフードは地球のある企業で作られているお菓子です。一般的なお菓子です。しかし、原材料とレシピが秘匿され不明です。」
「不明?」ドン引きにゃんこは眉をひそめた。
「そうです。未開惑星のどこかにそのレシピ発案者または原材料があるのではないかと」とメガネにゃんこは続けた。
地図を広げ、「ここです。この惑星のどこかの村に隠されているようです」と指差した。
「村?」ドン引きにゃんこは眉をひそめた。
「その村には暗号のような文字列が書かれており、解読が必要です」とメガネにゃんこは続けた。
「【ああああ】ね、シルバーフードがなくなるまで、時間がない・・・そもそも一般的なお菓子のために命がけで戦争とか、まじ、ドン引きなんですけど?」ドン引きにゃんこはため息をついた。
にゃんこ帝国の民衆はほとんどが脳筋かバカが多い・・・戦争も祭り気分で乗り出すだろう。笑って死にそうなやつらだ。あの王でさえ、姫にゃんこが地球侵略というお馬鹿なことを言ったにもかかわらず、泣いて大喜びしだすし。その横で胃痛に苦しむ自分の父親がいた・・・
ドン引きにゃんこが小さな頃、自宅に帰ってきた父親が呟く言葉を思い出した。
「やぁ、ドンちゃん、父さんは昔、執事をしていたんだ。ちとばかし頭がよかってね、くそがあああああああ、あの馬鹿王がああああああ!!」ドン引きにゃんこの父親、シリアスにゃんこは年季の入った執事服を身にまとい、いまだに鋭い目を持っている。しかし、その目は今、激しい怒りで燃えていた。シリアスにゃんこは頭にかぶっていた帽子をぶん投げて、地団駄を踏んでいた。
「あれが私の未来になるのは流石にごめんだ」ドン引きにゃんこはそう思いながらも、現実を見据える。
「メガネにゃんこ、具体的にどこを調べればいいの?」ドン引きにゃんこが尋ねた。
メガネにゃんこは地図を広げ、「この国です。レシピ発案者がいるはずです」と指差した。
「確か村ね・・・それでどの村?」ドン引きにゃんこはさらに問い詰めた。
メガネにゃんこは困ったように首をかしげ、「それが分からないんです」と答えた。
「まじか・・・。だけど、やらないと、ヤられる」ドン引きにゃんこは小さく呟いた。
姫にゃんこの「ねこパンチ」に巻き込まれて蒸発していく部下たちの姿が脳裏に浮かぶ。「あははははは、綺麗なお花畑が見える」と、彼らの最後の言葉が響く。その中に自分の声も混ざっている。「あらやだぁ、ドン引きなんですけど」と、まるで天国が見えるような光景だった。
地球の運命はドン引きにゃんこにかかっていた。自分の命もかかっていた。だからやるしかない。戦争が始まる前にこのレシピ発案者をこの国に来てもらうようにお願いしよう。強制的に・・・ドン引きにゃんこは心に誓った。姫にゃんこの無謀な計画を阻止しながら、ゴールドフードを手に入れるための情報戦が今、始まるのだ。
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