第3話 ふんわりぺたぺた(一年前)その2

王宮の朝が始まり、陽の光が美しい庭を照らしていた。庭には色とりどりの薔薇が咲き誇り、その香りが空気を満たしている。ふんわりにゃんこは元気いっぱいに庭を歩きながら、相棒のぺたにゃんことの会話を楽しんでいた。彼女の笑顔と、ふわふわ、にゃぁ、にゃぁな話し声が庭に響く。


「ぺたにゃんこちゃん、今日もお仕事がんばろうね!」


 ふんわりにゃんこは明るい声で言った。


「あ、そういえば、ぺたにゃんこちゃんのお胸って、すっごくかわいいよね!」


 突然の言葉に、ぺたにゃんこは驚いた顔をした。


「・・・なっ、何を言ってるんですか!」


 彼女の声は震えていた。


 ふんわりにゃんこは無邪気に続ける。


「また、大きくなっちゃったかな。うーんこまったなぁ~」

 

 ぺたにゃんこの顔が少しずつ赤くなり始めた。


「そんなこと言うなんて・・・本当に失礼ですね!」


 しかし、ふんわりにゃんこは気にせず続ける。


「でも、ぺたにゃんこちゃん、本当に可愛いと思うんだよね。綺麗で、それに、とっても(顔が)可愛いいし。」


 ぺたにゃんこの顔はさらに赤くなり、怒りが込み上げてきた。


 ふんわりにゃんこは、気にせず微笑みながら言った。


「あぁ、でもきっとまた(背丈も伸びて)大きくなるんじゃない? どんどん可愛くなって、みんなが注目しちゃうね!」


 その言葉を聞いたぺたにゃんこは、瞬時に半年に一回行われる成長の儀式の日を思い出し、顔が真っ赤になった。もう何年も、彼女の胸はその儀式で記録されるたびに変わらないままで、彼女の心に深い傷を残していた。この事実がぺたにゃんこの心に突き刺さり、怒りがふつふつと沸き上がってきた。


「私を怒らせるなんて、大した度胸ですね!」


 ぺたにゃんこは声を震わせながら言った。

 

 ぺたにゃんこ達は王宮のメイド騎士であり、犯罪者を捕まえるための特別な魔法のロープを常に携帯していた。このロープは持ち主の魔力に反応し、魔力が高いほど束縛が強化される仕組みだった。怒りに満ちたぺたにゃんこは、そのロープを素早く取り出し、ふんわりにゃんこをぐるぐる巻きにしてしまった。

 

 ふんわりにゃんこは生まれつき魔力が低く、そのためロープの束縛の抵抗値も低かった。そのため、抜け出すことはほぼ不可能だった。縛られたふんわりにゃんこは、まったくもって抜け出すことができず、庭の片隅に無造作に放置されてしまった。


「ぐすん、ぺたにゃんこちゃん、ひどいよぉ~、でも、胸が、くいこんで、すっごく、きついかも・・・うーん、あうぅ、はうぅ・・・だめだよぉ、こんなの…わたしじゃ、とけないよぉ」


「な、なにを言ってやがるんですか・・・?」


 胸にくいこむだと・・・


ぺたにゃんこの前で起こった光景は、まるで悪夢のようだった。心臓の鼓動が早まり、息をするのも忘れそうになる。こんなことが本当にあり得るのだろうか?目の前の現実が現実でないかのように感じられる。自分の胸元を見下ろしながら、さらに嫉妬の炎が燃え上がる。そして、ふんわりにゃんこに向かって叫んだ。「ち、ちきしょおおおおおお・・・!」そう言いながら、足音を立てて去っていった。


その様子をじっと見ていたのは、無表情の姫にゃんこだった。姫にゃんこは、じーっとふんわりにゃんこを見つめている。


「姫さまぁ~、助けてください~!」


ふんわりにゃんこは叫んだ。しかし、姫にゃんこは微動だにせず、ただ見つめるだけだった。

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