第13話 裏門(2)
倉庫街のいくつもある細い路地のひとつから裏門の様子を見ていた影があった。
ストリートチルドレンの別グループだ。
このグループのリーダーであるマージは一部始終を観察していた。
『やっべぇ。マジ、やっべぇ。あれ、やっべぇ。』
声にならない声で呟いていた。
建物の角から顔だけ出しているマージの下からひょこっと顔を出す複数の影。
「いやー、カッコイイっすね。冒険者でしょ、アレ」
「あ、あのひとガクッてなった」
「…」
ルッコとシュー、そして最近流れてきた子がマージの下から顔を出したのだ。
「うわっ!びっくりした!おまえら、ここには来るなって言っただろ」
「どかーんって音がしたからびっくりしたんだよ。リーダー大丈夫かなって」
「ルッコが行くって言うからついてきたー。サンカクも」
ルッコの金魚のフンのように後をついてくるのがシューだ。
この町に流れてきた子の名前はサンカクと言った。
「…」
目だけ動かして様子を伺う仕草をするサンカク。
「リーダー、何がどうなってるの?」
下に顔を出しているルッコ達に向かってニッと笑うと言った。
「もう少し奥で話してやる」
細い路地にすこし入り、建物を背にあぐらをかいてどすんと座るマージ。
子分どもは扇状に座った。
ワクワクする目でルートを見る。
「まず暴走荷馬車が門に向かってめっちゃ速く走ってきてな。何かあったんだろうな、すげぇ暴れ馬だった。どこ見て走ってんだってくらい首を振りながらよだれを垂らしながら走ってくるわけさ!土埃で馬車の半分は見えやしねぇ」
「それでそれで?」
「それに気が付いたのが門番さ。大声で叫ぶわけさ、『とまれーっ!』ってな。もちろん馬が止まるわきゃないわな。で、その門番が指笛を鳴らしたわけだ。かなり甲高い音だった。」
「ふんふん」
「すると、そこに現れたのがフルアーマーの兵士が3人」
「え、3人だけ?」
「そうそう。3人だけ。で、突進してくる荷馬車に向かって真ん中の兵士が口上を述べたんだ。『静かな町であるアンカー・ヒッポをかき乱す愚か者に成敗を!』『『成敗を!!』』とね。」
「おーっ」
「重い盾を頭の上に持ち上げたかと思うと、それをすぐ前の地面へ斜めに突き刺したんだ。ズシンってな。こっちまで響いてきたぜ。だが荷馬車は目の前に来てる。」
「ごくり」
「馬が真ん中の兵士の盾に当たったその時!」
「そのとき?!」
「盾で馬を持ち上げたっ!」
「「えーっ!!」」
「空中に浮かぶ馬!そして両側の兵士の盾に荷馬車の車輪が乗った!兵士たちが吠えた!『があああああっ!!』って聞こえたぜ。次の瞬間」
マージはゆっくりと3人を見た。
立ち上がって、両手を上に持ち上げた。
「荷馬車が飛んだっ!!」
「「ええーっ!?!?」」
「
「「えええーーー?!?!?!」」
「なにもかもふっとんだっ!…で、今ああなってるのさ」
フンスと鼻息荒くドヤ顔をするマージ。
話の後、建物の角から3人が顔を出し、裏門の様子をじっと見つめた。
それらの上からマージも顔を出してしばらく見ていた。
その間にひとりいなくなったことに気づいたのは人さらいが拘束されて連れていかれるのを見た後だった。
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