第10話 倉庫通り(1)

倉庫に使われている建物が密集する場所に二人は到着していた。

Sランク冒険者のエノーズとライアである。

人通りは少なく、荷物を出し入れする商店の者がぽつぽつと見える。

どこにいるの?

ライアの胸の鼓動は激しく打っていた。

荷馬車が通れる道がメインの通りでさらに裏の裏の奥の倉庫にルートはさるぐつわを嵌められて転がされていた。

人さらいに連れ去られてきたからだ。



少し前に遡る。

ライアに待っていて欲しいと言われたSランク冒険者のエノーズは転がっていた小石を人差し指ではねて川に落とすを繰り返していた。

その時に酔っ払いがぶつかってきた。

「おおっと悪いな、に~ちゃん」

「おっと、大丈夫か?じいさん」

「ヒック。ああ~だいじょうぶだぁ~」

「川に落ちるなよ」

「へへ~へ…」

ふらふらとした足取りで手を振り答えた。

片手に酒瓶を持っている爺さんだった。

そのまま千鳥足で建物の隙間に消えていった。

その後に戻ってきたライアがニセ金貨をエノーズに返したのである。

ライアはその時のエノーズを見て違和感に気づいていたのだが、言えなかった。

胸鎧のすきまに薄茶色の用紙らしきものが挟まっているなどとは。


Sランク冒険者のエノーズはライアに言った。

「しかし、どこに連れていかれたのかが分からんのが問題だ」

「そう…だね」

ライアは考えた。

ルートが襲われた所から先には倉庫街があって、その先は裏門で門番がいる。

出ていったなら別の町や村に搬送されているに違いない。

「エノーズさん、裏門の門番に聞いてもらえますか?ボクが直接聞くことが出来ないから」

「おう。町から出ていったかどうかの確認をするわけだな?まかせとけ!」



町中は兵士たちが増えていた。

人さらいを檻にとじこめるために。

そんな兵士の一人を捕まえて、裏門がどちらの方向にあるのかを聞くエノーズ。

なぜ兵士が増えているのかの理由も聞くことが出来た。



裏門へたどり着き、門番に聞いても有力な手掛かりがつかめず、どうしたものかと前かがみになるエノーズ。

隠れていたライアがエノーズの元に寄ってきた。

その時、胸鎧のすきまに挟んでいた用紙がポトリと落ちた。

「エノーズさん、それなんですか?」

落ちた用紙を指さすとエノーズはなんだ?という顔をした。

拾い上げて読むと、その情報に彼の表情がみるみる変わってゆく。

「どうしたんですか」

「ルートの場所が分かった。倉庫街の奥だ」

「え」

「あの時のジジイか!」

橋の上での酔っ払いを思いだした。

「ライア、ルートはまだ町を出ていない。倉庫街へ戻るぞ」

「は…はい!」



「やばいっすよ、ボス」

倉庫のひとつにダークブラウンチュニックを着た男が4人いる。

その中心にルートが転がっていた。

「門番の監視が厳しくなってやす」

「兵士がわしら探し回ってますぜ」

「いままでこんなことはなかったが…こいつか?こいつのせいか?」

男の足がルートの腹を蹴り上げた。

「かはっ」

痛みに耐えるルート。

「とにかくもう少し暗くなるのを待つんだ。それから出発する」


その倉庫から少し離れたところにフードをかぶったアイボリーチュニックの男が人さらいたちの動向をじっと観察していた。



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