BLUE BLOOD

ぽめ島 ぽめ三郎

青い血の夏

俺達の机上には今でも青い血がついている───


日照りの下、校舎の影で

赤い血が流れていた


死体のように

意識を失い、地に横たわる無数のチンピラ

ほぼほぼ吐血で地面が赤く染っている


「…くそ、覚えてろよォ!!青空あーくぅ!!」


血の味を覚える前に逃げ去った1人の男は

隣のクラスの鞠山まりやま 黄花おうか

通称『マリオ』

このチンピラ達のボスであり、俺の幼なじみ

何年も争い続けている──────


いきなり相手からがんを飛ばされてしまっては

こっちも手を出さない訳にはいかないと、

およそ500人の軍団を1人で片付けてしまった


「ちっと左手の薬指が傷んじったな」


別に俺はヤクザでもチンピラでもない

身長が195センチで体重100キロと

ほんのり大きいだけの普通の高校二年生だ───


前置きが長くなってしまって申し訳ない

俺の名前は「纐纈こうけつ 青空あーく

声が低く、風貌も男前で校内では有名だ


こっからは俺が記憶してる範囲で語る

─あれは夏休み前日のことだ

そう、さっきチンピラを500人倒した日のこと

とても不思議なやつと出会ったんだ

いや、不思議ってより

理想だな───────────


チャリンコで登校中、地元の河川敷に

水色のワンピースに麦わら帽子を被って

立ちながら常に川に向かって笑顔を振りまく

大体、小学校低学年よりちょっと上ぐらいの

赤髪でボブに近い髪型でちょっと容姿端麗…な

見慣れない少女が目に映り、

不思議と俺はその子に声をかけに足を運んだ


そして少女に近づき背丈に合わせて尋ねてみた


「お前、ここ地元じゃないだろ

どっから来たんだァ?母さんは?」


初対面じゃこの聞き方は

あまり適していないかもしれないと

不安げだったが

彼女は笑顔のままこちらに振り向いた


「わぁ、

そのまんまだね、うちの父ちゃんそっくりだ」


とても不思議な気持ちだったのは

今でも覚えてる

たった一言が胸に響いた、そんな感覚だった


「ねぇ、お兄さんってもしかして

苗字が『こぉ』…なんだっけ『こぉう』…」


「まさか、纐纈か?」


そのまさかだった


「そうそう、それ!!

やっぱりお兄さん『こぉけつ』って苗字でしょ」


思わず俺は目が点になってしまった

当たり前だ、

見知らぬ少女に俺の苗字を知られているのだから


「…あァ、君は?」


「うちは ゆり、由利ゆり 朱殷しゅあん

普通の人間に見えるけど幽霊だよ!!」


……………笑顔で言われても

ってなんて言ったんだコイツは…?

幽霊?アホにも程があるんだぞと言いたかった


「幽霊だとォ?んなはずがねェよ

だってお前はただの小学生だろォが」


ほんと、こん時はそう思ってたな

でも時が経てば何とやら、俺も懐かしいぜ


「んじゃあうちに触れてみてよ」


「幽霊な訳ねェ…」


スカッ

と通り抜けてしまった

何度もこの手で触れようと試した

腕を幾度となく振り回したが


「なんだこれ、当たんねェよ!!

ほんとに幽霊なのかよ!!お前!!!!」


今までに無い感情が出て、

少し息切れしちまったのをよく覚えてる


「ほら言った通りだったでしょ?

うち幽霊なの、それにうちは『お前』じゃなくて

『シュアン』!!そう呼んでちょうだいよね」


いちいち喋り方が…

って、そんなことはどうでもいいんだよ!


─そんで『シュアン』は

これから俺と一緒に暮らしたいと言い始めた


「あァ?俺と暮らすだと?

無理に決まってんだろ、部屋もねェし

そもそも俺のお父さんが許してくんねェよ

ってかなんで俺と住みてェんだ?」


そうだそうだ!!

女の子を自分の家に入れるなんて

違法なのもいいとこだぞ!!

…まァ、


「風呂に入らなくとも寝なくとも、

うち、幽霊だからさ、迷惑にはならないよ?」


だめだ、こんな可愛い子に頼まれてるからって

だめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだ


「…俺は纐纈 青空、付いて来い」


やっちまった────

─だがまず向かった先は家ではなく俺の高校だ


「おはよう、青空!!

…ん?なんだ?!その宙に浮いてる女の子!!」


あ?宙に浮いてる?


「てへへ、見えてるんだね、うちのこと」


「え、こいつのことみんな見えてんのか…?」


衝撃的だったな、こんときはまだ

こういうタイプの幽霊は俺にしか見えない

ていう考えだった。

ほんと、浅はかな生ぬるい考えだな

懐かしい


ええぇぇぇぇ!!??


「ほんとにこの子、幽霊なのかよ!?」

「きゃぁ!!何されるの怖い怖い!!」

「いやぁ!!かわいいけどいやぁぁぁ!!」


まぁそうなるわな

1番驚いてるのは俺なはずなのに


「えぇ…みんな驚きすぎじゃない?びっくり…」


なんでシュアンまでびっくりしてんだ

やれやれ、でもみんなは心が広いから

すぐ納得してくれた、特に女子は…


「ねぇシュアンちゃん!!

好きな俳優さんとかっているの??」


またベタな…


「ん〜、みのもんたとか?」


「渋っ!!かわいい〜♡♡♡♡♡」


みのもんたさんは俳優じゃねぇよ!!

─まぁこうやってすぐみんなに愛されて

シュアンのことを知らない生徒が居ないぐらい

とんでもなく知名度が上がった、俺以上に、

夏休み前日だけど─


キーンコーンカーンコーン


「さぁ席に着け〜

ん?そこ、纐纈の上にい、る…少、女…??

おおおおおおお!!???なんだその子!?

宙に浮いとるぞぉ!?」


「ギャハハ、そういや先生達は

まだシュアンちゃん見てなかったんだったな!」

ワハハハハ

アッハハハ

ウフフフフ


いつも温厚な先生がこんなリアクションしたら

そりゃクラス中大爆笑だよな

でもなんか、不思議だ────

元々こんなクラスじゃなかった

この高校は偏差値がとんでもなく低いから

喧嘩は当たり前、廊下は血まみれで

たまに欠けた歯が下駄箱から

大量に出たことだってあった

不良校として名を馳せているこの高校は

校内で笑うことなど決してなかった

男子同士の仲が最低最悪だ

殴り合う日々が途絶えることさえ脳裏に無かった

だが今日、初めて見た

同級生という大衆が笑い合う姿に


「照れるなぁ、うち、しゅあんっていいます

先生、以後お見知りおきを…」


「え、いやぁ、いえいえ…」


先生、弱すぎるぜ…

相手は幽霊だぞ?

もっと驚いてもおかしくないのに

─まぁそれほど、なんだろうな

俺だってそう思……ってん…だから


こうして淡々と

1学期最後の授業は終わりを告げていく…

そしてどの授業でもみんなはシュアンの虜だった

色々なことを聞いた、

好きな色は『赤』

好きなアニメは『おそ松くん』

好きな食べ物は『福神漬け』


「渋いなぁシュアンちゃん

…ていうかなんで幽霊になったの?」


「それがね、分からないの…

なんでここにいるか。

死ぬ前の記憶は残ってるんだけどね…」


─そういやシュアンの苗字は由利って言ってたな

なんか引っかかるんだよなァ

不自然にシュアンのこと見つめながら

考えてると…


「うちの顔になんか付いてる?

…ほーっんと、うちの父ちゃんに似てるね


そんなシュアン父に似てるのかってなるより

…あーくんだとォ?

あんまりそんなニックネームつけられたこと

なかったから、なんか新鮮で

いいな…


「ほーら、なに顔赤らめてんの」


「青空くん、ひょっとして

シュアンちゃんのこと好きなんじゃないの?」


おいおいおい!!

絶対言っちゃいかん

こんなちっこいのにか…わいぃって思ったこと…


「んなことねェよ!!

もっと大人っぽくてロングヘアで

愛想良くて、飯が美味い優しい人が俺の…」


シュアンは涙ぐんだ目で俺のことを見つめてきた

ぐすんぐすんと、何とか泣くのを堪えた目を


「アハハ、まさか、シュアンちゃんも

青空くんのこと好きなのかもね?」


調子乗るのもいい加減に…!!


「…うん、あーくぅん好きなのにぃ

ずーっとぉ否定してぇくるからぁぁ

…うぅぅんん…ぐずん、ヒック、ヒック」


おぉぉおい!!良くないだろ!!

少女泣かせる俺!!何してんだ俺!!!!


「そうか、

別に俺はシュアンのこと嫌いじゃないから

だから、泣くなよ」


「好きなぁら好きって言ぃってよぉ…ぐすん」


「言わん

ただ、ちょっと……かわ、いぃ…?」


シュアンの涙はすぐに涙腺へと引っ込んだ

なんならとびきりの笑顔を振りまいてきた


「まるでヤンデレだなシュアンちゃん…」

「でも可愛いから良し!」

「今日からシュアンちゃんはクラスの女神だ!」


せーのっ

シュアンちゃん!!シュアンちゃん!

シュアンちゃん、シュアンち…ゃ……


「はっ!!」


と目を覚ました時

天井の木目を見て少し心が落ち着いた


「家か…

てか、全然記憶ねェや、シュアンはどこだ?」


思わず寝起きの体は夜中3時の外へ出て行った


「いねェ…シュアアアアン!!!!

どこだああああ!!」


夜中ということを忘れた俺は無闇に

少女の名を叫び続けた


でも、目には映らなかった

玄関の前に咲いている

1輪のマリーゴールドが笑顔で出迎えてくれた

突然消えたシュアンのことを

頭の片隅に動かせて

諦めと疲れで俺は寝た


「…く…やく…早く起きてー!!

あーくん遅刻するよー!!」


「…んん…ん、この声は…まさか!!」


シュアンがいると心の中で大騒ぎした

寝起きなのに全身に力が込み上げて

俺は嬉しさのあまり

シュアンに抱きついてしまった

勿論、体に触れることは出来ないが

少なくとも温もりを感じ取った


「わわわ、急に!?

もう…甘えん坊さんのあーくん…

世話が焼けるんだから」


「どっちのセリフだ、まったく…

無事で良かった、本当に…」


これ以上無いほど安堵した

人に抱きつくなどいつぶりだろうか


─俺の母は俺を産んですぐに亡くなったそうだ

母がいない俺にとって、

人を抱いて安心感を得ることなど

そうそう無い経験だった─


「おーいシュアンちゃーん、青空

朝飯用意出来たぞー」


お父さんの声だ

そしていつの間にシュアンと仲良くなってたんだ


「いただきまーす」


鯖の塩焼き、爺ちゃんの米を炊いた白飯

上等な味噌汁、んで…福神漬け?


「なんだこれ、なんでこんな朝食が

華やかなんだ?お父さんの腕が上がったのか?」


ノンノンノンと

シュアンは煽るように俺に人差し指を立てて


「全部うちが作った!!

物体に触れることはできるからねっ!」


その日はムシャムシャムシャムシャと

何杯ものおかわりをしシュアンを困らせた


「ぐへェ、もうくえねェ…

美味かったぜ、シュアン」


「えへへ、そう言ってくれると嬉しいな…」


─その日の夜も


「一緒にお風呂入ろ?」


「だめだ」


「なぁんでぇ?うちのこと、嫌いなの?」


「高校生になると1人で入らなけれ…」


ヌギヌギ…


「ってなに服脱いでんだァシュアアアン!!」



バッシャァァアンン


「コラッ、湯船であんまり遊ぶな

お湯がもったいねェだろ」


バッシャァァアンンンンン


「あーくんこそ、お湯出てますよ〜」


「俺は体がでけェからしゃあないんだよ

大体なんでちびっ子と2人で入ってんだ俺は…」


「プスン!!ちびっ子って言った!!

良くないんだ〜!!良くないんだ〜!!」


「ハイハイ分かったから」


まァ…


又、その次の日も─


「花火大会やるってよ

見に行くかァ?シュアン」


「あったりまえでしょ、えーっと

線香花火に…それ用のマッチと…えーっと…」


ヒューーン


ドカーーーーーーンンン

パラパラパラ


「花形の綺麗な花火だな」


「あー、屋台やってるよ!」


射的、輪投げ、ビンゴゲームに金魚すくいまで

全てやり尽くした…


「はぁ…もういいだろ、十分じゃねぇか?」


「うん!!大満足!!あとは線香花火でしょ?」


まだあるのか…

でも…


パラパラパラパラ


「綺麗だねぇ〜」


「あァ、中々癒しになってくれるじゃねェか」


「うちとどっちが癒し?」


「線香」


「プッスーーン!!」


こういうのもありだな─────


───ある日夏休み中にシュアンとみんなで

遊びたいと誘いがクラスのメッセージで来た


「ねぇねぇみんなの誘いに乗ろぉよ」


「俺は別に構わんが、シュアンは

どこか行きてェとことかあるのか?」


「んーっとね」


─そうしてクラス全員で

大型ショッピングモールへやって来た


「よぉーっしシュアンちゃん

好きな物買っていいぜ!!」


「シュアンちゃんの好み、気になるなぁ」


みんな、なんか楽しそうでホッコリするな

こんな気持ち、生まれて初めてかもしれない

俺は小学も中学も不良校だったから

17歳以前は過酷な人生の積み重ねだった

しかし、買い物だけでこんなに楽しいとは

殴り合いに勝つ喜びと

女の子と買い物に行ってお互いが喜ぶ様子、

本当に今日ここに来て良かった

最高の夏やす…


きゃぁあああああああ!!!!!!!


「青空!!コイツは貰ってくぜ!!」


「お前は…マリオ!!」


咄嗟のことに俺は追いつけなかった

気の緩みが招いた出来事だった

─幼なじみである鞠山 黄花ことマリオは

いつも卑劣なやつだが

アイツにも辛い過去がある────

幼い頃、俺とマリオ、そしてマリオの姉ちゃんで

一緒に公園へ走って向かいに行った

その時に思い出したくない悲劇がやって来る


「あぶなぁああいい!!!」


交差点でトラックと鉢合わせた俺たちを

身を呈して…


ドゴゴォォォンン


衝撃音とトラックにかすった俺の左手の傷は

今でも残り続けている

─だがマリオの姉の顔は浮かんでこない

轢かれた死体は未だ目に焼き付いている

被っていた帽子も服も

よく覚えている、なのに─


─恐らくアイツはこのことと共に

マリオが幼くして親父が亡くなったことも

トラウマになって、トラックの運転手を始め、

人に対する疑心暗鬼な心が強まったんだろう

そもそもマリオ自身は強い。

ガタイもアメフト部に近いから

1人で戦える力もあるのに

自分を信じてくれる仲間を集めに集め

俺に対し解き放つ

俺があの夏、公園に行こうと口にしなければ──


「なんだと!!くそっ!!マリオのやつ

シュアンちゃんをさらいやがった!!

絶対に許さねぇ、死んでも許さねぇ!!」

「俺たちで協力してヤツをぶちのめしてやるか」

「所詮俺たちの敵じゃねぇしな」


「そもそもなんでシュアンを連れ去ることが

出来たんだァ?シュアンは幽霊で

物体にしか触れることしか出来ないんだぞ?」


「一瞬だけ見えたんだが、マリオは軍手を

していた、多分素手で触れることが出来ないだけで手に何かを装着すればシュアンちゃんの身に

触れることができるんだよ」


「長いことシュアンと一緒に居たが盲点だった…

とにかくアイツを追うぞ!!オマエら!!」


男女問わず一心同体で、マリオを追った

行きそうなところ、通ったかどうかの聴取

出来ることを尽くし…そして…

やっと、辿り着いた───


「あーーくうんんん!!」


「シュアアアアンン!!」


─以前より部下が倍増している

いや、最早3倍程だ

呆れるぜ、俺の本望は戦いたくないことだ…

でもここでやられたら…

シュアンが…


俺の血みどろになった握り拳は

騒ぎ立てていたマリオの部下達を黙らせた

ヒシヒシと漂う威圧感に、数人逃げる者もいた


「さァ、マリオ

俺の顔面を、どこまで赤く染めてくれるかなァ」


「青空ゥ

お前にはここでこの女と共に死んでもらう!!

下っぱ共ォ!!ヤツを殺せェエエエ!!!!」


始まった

俺たち男子20人と

マリオの部下およそ1500人が

桶狭間の戦いのように

狂った人数差での戦いが…


「おるぅあ!!誰が殺られるか!!」

「お前らなんかに殺られてたまるか!!」

「俺たちのシュアンちゃんを返せぇ!!」


これが正解なのか、それは定かでは無い

争いなど醜く、でも間違えでもない

人生は争いから始まるものなのだ

争いから人々は共存し

村、町、都道府県、大きく見れば国ができた

醜いものは叩けば光り輝く

時に青い血が大いに流れ落ちる

そんな中

俺たちみたいな人々は

殴り合いを続ける

ことも知らず


「めて…」


おるぅあ!!


─シュアンが人間だった頃─


ごらぁあ!!


─それは幸せだった青い夏の下─


しねぇえ!!


─怒号など、殴り合いなど、意味を成さぬ─


「や…めて…」


かえせぇ!!


─人の醜さ、美しさは─


うおらぁ!!


─たった1人の力で─


くたばれ!!


─奪うことが出来る─


「みんなやめてぇぇええ!!」


殴り合い、赤い流血が止まらない群衆は、

シュアンの声を耳にし、動きを止めた

争いに参加する者全てがシュアンに目を向けた


「聞いて!もう殴り合いはやめて!!

うちは、もうこんな惨い光景見たくないの!」


「あァ?んだとゴラァ!?」


マリオは右手をシュアンの頬に振りかざす

その時だった

その右手は何かに反応し、動きが止まったのだ

マリオは驚き、青い血を目の内に潜めた


「まさか……姉ちゃんか?

確かに、シュアンって言ってたよな…

俺の姉ちゃんに、そっくりだ…

嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ…!!

幽霊になってまで俺を呪いに来たのか…?」


俺も思わず目が赤く、そして青くなっちまった

そう、マリオの姉ちゃんは轢かれた日、

麦わら帽子に水色のワンピースを着て

そして明るみのある赤髪だった

あの日、その姿で

俺たちのことを、見守ってくれてたんだ


「いいや、呪おうなんてしてないよ」


「嘘だ…俺が、青空が、俺と青空が

姉ちゃんを殺したんだぞ!!」


シュアンは俯いて悲しげな表情へ変化した


「何かァ知ってる顔だな、シュア…いや…」


呼び方が咄嗟に思い浮かばない

何故か俺は、緊張している

今まで目にしていた幽霊少女は

マリオという幼なじみの亡くなった姉

だったという事実に…


「うちはあーくんと弟に殺されたんじゃないよ

うちが成仏出来ないのは、あーくんと弟が

大きくなっても仲良くして欲しいからなんだよ

いつまでも喧嘩して、こうやって弟は

うちを連れ去らうまでするようになって、

姉として、いやなの…」


思わず全身の力が抜けた

耳や身体が全てシュアンの元へ向かって行く


「姉ちゃん…」


「シュア…いや、マリオの姉ちゃん…」


「だから、争いなんかやめて

また昔みたいにさ、仲良く騒ぎあおうよ

こんなにいっぱいいるなら

きっと楽しいこともっとできるはずだよ!!」


シュアン…いや、マリオの姉ちゃんは

俺たち2人の長い争いに終止符を打つ為

現世へ身を現したのだ

俺とマリオさえ仲良くなれば───────


──こうして夏休みが明けた


「これで夏休みの日記もやっと終わりだな

よし、行くかシュ…マリオの姉ちゃん」


「うん」


俺とマリオが仲良くなれば

マリオの姉ちゃんは成仏する

人気者になったのなら…

せめてみんなの前で─


「オマエらァ、待たせたな」


「待ちくたびれたぜ

遂にこの時が来たんだな」


「あァ、仲直り、しに行くぞ

みんな、付いてこい…」


…授業はもうすぐ始まる

だがそんなことなど、どうでもいいだろう

行先は隣クラスなのだが

とても遠く感じる

まるで夢の国へ向かってる最中みたいだ


ガラガラガラ


「…マリオ、今まですまなかった

お互い悪い人間だってことに気づけなかった

俺が馬鹿だったんだ

これからは色んなとこで遊びに行きたい…」


「青空…あァ、俺も分からされた

姉ちゃんの存在のおかげで

俺たちは悪いんだよ、お互いにな

和解の握手だ、こちらこそすまなかった…」


厚く、熱く、篤く握手した

過去の友情は元に戻る

修復するものなのだ

大切な人をキッカケに…


「やーっと和解したね、

これでようやく成仏できるよ…」


あァ…マリオの姉ちゃんが

教室の窓の外を出て空へ浮かんで行く

そしてうっすらと…光に


「うちはいつでもあなたたちを見てるよ」


遥か空の彼方へ

俺たちを再び結んだ1つの希望が消え去った…


─それからのこと俺の高校は平和を取り戻し

毎日笑みが絶えない学校へ変貌を遂げ

いつまでも俺の家の玄関前にある

1輪のマリーゴールドは笑顔に見えた


でも。マリオの姉ちゃん、シュアンの最後を

見たあの日の

俺達の机上には今でも青いがついている───

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