第13話 復帰した女
あなたは朝から滝行に励んでいた。
学校敷地内の裏山の奥地に足を運び、あなたは冷たい水に揉まれながら猿叫をあげる。
禁欲生活プラン① 滝行
自身にストレスを与えることで、あなたは性欲が減衰しないか模索する。
あなたは自身に『ステータスチェック』をかける。
現在のバフ効果、デバフ効果をあなたは確認した。
バフ:精神耐性50%増 1:00:00
デバフ:取得経験値5%減、性欲上昇量抑制30%、性欲減衰1% 1:00:00
うーん。なんとも。
奥歯を震わせ、両腕で体を抱きながらあなたは分析する。一応5分ごとに性欲値が減少していったのをあなたは確認した。
取得経験値減は痛い。効果時間中の授業やダンジョン攻略、イベント進行等の経験値効率が悪くなってしまう。
ひとまずの緊急利用用として活用しようと、あなたは思った。
禁欲生活プラン② 性欲減衰のポーション
自室に戻ったあなたは朝食後に昨日大人買いした『性欲減衰のポーション』を服用した。
こちらも取得経験値に四時間ほどマイナス補正がつくものの、固定値で性欲を3減らすことができた。
デバフ効果が累積するため、正直使い勝手は悪い。
もう少し一回の効能があがるか、副作用がなくなるかしないかぎり、こちらも緊急用として使う運用となる。
あなたは今後の動きとして、ポーションの研究開発を視野に入れていた。
錬金術師の道を歩むか。はたまたパトロンとなって誰かに代わりに研究してもらうか。
原作でも、投資イベントはあり、特定団体に出資することで様々な恩恵を得ることができたことから、あなたはよくよく考えることにした。
⬜︎
チュートリアル後、原作の進行は基本的には平日の授業選択、放課後行動、週末行動の三要素で構成される。
春、夏、秋、冬の各シーズンごとに十二回行動選択し、一年間で四十八回、三年間で百四十四回選択するようになっていた。
授業で選択可能な各種訓練は、基本的には技能の習熟度上げやヒロインの好感度上げに利用する。
技能を極めることでスキルを習得できることと、授業を一定回数選択することで効率のよい上位訓練の開放や特定スキルを取得できることから、本ゲームの熟練者は序盤によく訓練を選択する。
また、各キャラクターと同じ訓練を行うことで、好感度を上げてイベント発生を狙うことができる。こちらは、物語の中盤以降に行うことが多かった。
禁欲生活プラン③ ヒロイン懐柔・撃退用スキルの確保
あなたはレベルがあがるにつれてヒロインに襲われる確率が高まることを知っている。
原作では、レベルが同数値以上で好感度補正が働いた。好感度が高いと異性らは発情しやすくなり、私生活やダンジョン攻略にすら影響を与える。
また、ダンジョンアタックをしすぎるとパーティメンバーの不満度が上昇し、最悪刺される事態まで陥る。
そのため、ヒロイン懐柔・撃退用スキルの習得はあなたにとって急務であった。
⬜︎
「さあ。それでは、訓練を始めましょうか」
――よろしくお願いします。
あなたは、春シーズン第二週の選択授業に、保健の授業を選択した。
こちらの授業では狩人関連のスキル『応急手当』を学ぶことができる。原作では1〜2週間保健の授業に通うことで習得できた。
アクティブスキル『応急手当』自体は、状態異常:出血、火傷、凍結、伏せ、毒、骨折、脆弱を治療しつつ、ヒットポイントも小回復する便利なスキルである。
何より、職業問わずに習得できる点が大きい。
回復手段がアイテム依存になりがちな前衛職からは人気のスキルである。
あなたの本当の狙いは別にあったが、ひとまずは『応急手当』習得を目当てにあなたは授業を受けにきた
「「「「よろしくお願いします」」」」
――……。
あなたと同じく保健の授業を選択した面々が講師に挨拶を返した。
お馴染みのミカエラの他、大剣豪の子孫であるカーラ・ソードマン、同じクラスの男子二人もいる。
『応急手当』自体は素晴らしいスキルであるが、回復スキルであるため地味である。その有用性がわかるまではいくらかのダンジョン攻略経験が必要となり、一般生徒には戦場の華である武術関連の授業のほうが人気である。
なので、最初の授業選択としては、他のクラスメートから「意図はなんなの?」と詰められかねないリスクのある選択であった。
あなたが疑問に思って左のカーラと男子たちを眺めていると、ふとカーラと目が合う。
赤毛の剣士カーラははにかんで、あなたを見つめ返した。
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