第4話 原作知識があれば優秀なスカウトに見える
あなたはスカウトとしてパーティを先導する。
外套に身を包み、知覚を最大限に発揮しながら、あなたは森の小径を進んだ。
今回の授業の目的はダンジョンの仕組みや、魔物との戦闘についての指南である。
パーティは決められた地点まで移動し、その道中で座学で学んだモンスターの生態の振り返りを行ったり、トラップの対処を指導される。
いわばチュートリアルのようなもの。
お助けキャラがいるため、パーティの全滅はなく、安心して初めてのダンジョン攻略を学べるという寸法だ。
そして、このチュートリアル限定で発揮される特殊な状態を、あなたは原作知識として知っていた。
――先輩、またありました。
「……いいね、じゃあ少し待とうか」
あなたは収納袋からシャベルを取り出し、地面を掘り始めた。
あなたが掘ってからしばらくすると隠された宝箱が現れる。
今回も鍵開けは不要。
宝箱の中身をあなたは素早くチェックした。
柔らかい嘆きの外套……アンコモン、打撃耐性25%増、死霊耐性25%増
稲光る樫の杖……コモン、雷属性ダメージ追加25%
回復のアミュレット……アンコモン、回復効果追加25%
兎の盗賊の手袋……レア、スカウト能力プラス1、器用さプラス1、感覚プラス1
んほぉおおお!
あまりの幸運にあなたは卒倒しそうになる。お目当ての装備を新たに見つけ、あなたは内心でガッツポーズを連打した。これだからトレハンはやめられねえぜ。
「どうだった? ……えぇ!? それって、かなりいいんじゃない!?」
「まあ、素晴らしいですわ♪」
「ん」
肩越しに覗き込んだミカエラが驚く。
あなたは鑑定結果を素直に伝え、各々に一品づつ配った。もちろん、手袋はあなたが確保した。
「ちょっといい? ――『鑑定』。……なるほど、さっきと同じで、言ったとおりの内容だね」
マリン先輩があなたが仲間に配ったものを魔法を使って再鑑する。
あなたが生まれ持った固有スキル『ステータスチェック』は、どんなものにも適用できる。そのため、未鑑定のものを鑑定家に依頼・調査してもらう手順を省くことができた。
ゲームではステータス画面でほとんど確認可能なため、何のために存在するのかわからぬスキルであった。だがいざ現実に近い状態であれば、これほど助かるスキルも他にないと、あなたは感じていた。
無論、十八禁ゲーム御用達のエロステータスもあなたは視認可能である。
ルールルーの総自慰回数を見て、あなたは卒倒しかけた。
「それにしても……。運がいいというか、恵まれてるね」
――それほどでもあります。
「あるんだ」
兎の盗賊の手袋を装備しながらあなたは言った。
今日のダンジョンアタックのためにあなたは寝る間を惜しんで学校内を徘徊した。
知識を総動員し、あなたは現時点で入手可能な隠し宝箱を全て開けてきた。
朝方には校内にある教会で寄付をすることで、その日一日の運ステータスをあなたは向上させた。
隠し宝箱から得た幸運のリングの装備効果含め、あなたの今日の運ステータスは物語後半のスカウト職と近い数値を示していた。
加えて、マリン先輩の保有するスキル『宝箱・ドロップ強化(微)』に、本日限定の要素もチャージされ、通常時よりもレア度の高い装備品・アイテムが手に入る状況が作り上げられていた。
これはゲームメタの話であるが、原作ではチュートリアル中に得る宝箱の中身やモンスタードロップ品は通常よりも性能がよくなるように設定されていた。
いわば、ユーザーがよりゲームにのめり込みやすくなるような導線である。
いい思いをしたユーザは、ゲームをそのまま継続する確率が高い。
目当ての装備四つのうち二つまで手に入れたあなたは気をよくした。
高めに割り振った感覚ステータスを駆使しながら、あなたたちは目的地に向かった。
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