第37話 試合直前の話聞く?

 そして

 「ソーマたん?私の元に来る決心はついたかな?」

 「俺はあんたに勝つから関係ない」

 「うん。ソーマは強くなった。絶対に勝つ。仮にソーマが倒れたら私と殺し合いをしよう」

 「フェルナンド嬢!?しないからね!?」


 途中変態グラセルが煽るが無視する。何せこちとらクソガキの煽りに耐えているしな。リンはリンで何かこの人と会うたびにダークモードに入るので怖いけど

 『おい!誰がクソガキじゃ!』

 「(スピカ!最近何も喋んないから心配してたぞ!?)」

 『あの鬼ババアのスパルタがしんどくて休んでたのじゃ!?ワシの心をここまで疲弊させたのだ!必ず勝たんと承知せんぞ!』

 「(はいはい)」

 『ま!負けそうだったらワシがちゃーんとちーととやらをしてやるから安心せい。お主とあの変態がいちゃつく所など見たくないからな』

 「(う…大丈夫だから…しゅ…修行したし…)」

 『お主一瞬迷ったであろう?本当に危なかったら心の中で教えてくれ。いつでもちーとをしてやろう』


 なんて心の中で会話してる間にもリンは瞳の奥を暗くして変態グラセルに迫っている。変態グラセルは泣きそうになってるが無視である。


 そしてとうとう

 「それでは此処から先は会場です。フェルナンド様はフィールドの線外…非戦闘エリアにて待機して下さい。お二方は戦闘エリアの方に白ラインがありますのでそれぞれ向かい合わせで立っていただく様よろしくお願いします」

 「分かりました」

 「りょ…了解でしゅ…」

 「ふん!まぁ私が勝利するがな!」


 スーツを来た担当の女性が会場の扉を開いた。その奥は屋根が無く、真ん中にサッカーのフィールドの様な地面。(芝なくて土剥き出しだけど)それぞれ端に女神の愛子アテナ・ファミーユ屍の館ネクロ・エデンのマークが描かれた旗がある。

 そして周りにはぐるりと階段の様に段々になった壁が囲んでいて、一段一段に長いベンチがある。


 「こちらです」

 そう言って担当者が案内していくので俺たちはその後をついて入場する。すると小さいながらも歓声が聞こえる。

 キョロキョロしていると、女神の愛子アテナ・ファミーユの旗がある方のベンチにはアシュリカとマスターが並んで座っていて手を振っている。そしてその上の段には先ほどあった副会長がいた。


 屍の館ネクロ・エデンの方を見ると恐らくそのギルドのメンバーと思わき人々やゾンビがいた。少しホラーである。

 後は気にしない様にしてたけどニヤニヤと馬鹿にする様に見ている連中がいた。見るとそれは最初にギルドに来た時に絡んでたおっさんや俺やリンに冷たい目を向けてきた奴らである。


 俺やリンの方を向いてニヤニヤとそしてヒソヒソと喋っている。多分あまりいい話はしていない。

 「うわぁ…マジであいつ参加してるよ」

 「血色誤魔化してるけどさあ?ゾンビの癖に人間の真似すんなよって思うわ」

 「つーかマスタークラスに戦い挑むとか無謀すぎない?」


 …どうせくだらない話だろうな。さすがに俺の聴力でも離れてるので聞こえない。

 「ふふふソーマたん♡もう少しで結婚できるよ♡」

 「何言ってるんですか?勝つのは俺です」

 「ソーマは負けない。ソーマを嫁に行かせるなら私がソーマを嫁にする」

 「うん…リンさん?何を言っているのかな?」

 「お三方準備をお願いします」


 担当者の人に指示を出されて俺たちはそれぞれの位置に立つ。

 俺は女神の愛子アテナ・ファミーユの旗がある方に変態グラセル屍の館ネクロ・エデンの旗がある方に…、リンは俺の後ろに立っている。


 そして全員が位置につくとそこにスーツと蝶ネクタイをしている男がやってきた。見ると金髪をリーゼントにしていて顎に髭が生えている筋肉隆々の男だ。そして青ブチの星形サングラス…何かアメコミに出そうな外見である。


 その男は真っ白の歯をにっと出してそして宣言した。

 「yeah!会場の皆!お・ま・た・せしました!今宵のバトルのジャッジ!を任せられた私!"Mr.ジャッジマン"が実況兼審判として楽しませてやるぜ!foo!」

 「「「yeah!」」」


 「…て…テンションたっか…誰あれ…」

 「あの人はMr.ジャッジマン。公式戦でなくても他のバトルとかでも審判とか実況とかしてる。…陽の気が眩しいし暑いし私は苦手…」


 とリンは陰の気を纏い呟く。かくいう俺もどちらかというと陰の方なのであのテンションは疲れそうだ。しかし会場にいる陽の者達はノリよく反応している。

 マスターも反応していて、その隣でアシュリカはハァとつまらなそうにため息を吐いている。


 何これ陰と陽をジャッジしてどうすんだよ。


 「さてさて今宵の対戦カードをご紹介致しましょう!

 "ゾンビを愛して早30年!今宵真実の愛を手に入れる愛の狩人! 

 天才死霊操術師!グラセルゥゥ!ファアントムゥ!」

  

 ジャッジマンが変態グラセルのいる方の手を挙げて声高く上げると会場でワー!と声が上がった。

 う…嘘だろ?あんな紹介のされ方するの!?

 「ぁぁあトラウマがぁ!」

 リンは後ろで頭を抱えて死にそうになっている。多分経験あんだろうな…。


 「そしてそして!対戦相手は!一応公式文書では術者の名前が書かれていますが…今回は術者ではなく使役ゾンビが戦うので!そちらのご紹介を!

 "冒険者としてはまだまだヒヨッコ!それでも僕は前へ進むのだ!

 自我を持つレアゾンビ!ソォォォマァァア!シラヌイィィィィ!"」


 そう叫ぶと変態グラセルの時と比べてかなり小さい声でワーっと聞こえたりクスクス笑う声やらうわぁとドン引きする声が聞こえる。そんな中

 「ソーマキュゥゥウン♡ハァハァ♡愛してるぅ♡結婚してえぇぇ♡」

 「ちょ!?やめて下さい!恥ずかしい!」

 とすっごくメロメロな顔で叫ぶマスター。そしてそれを抑えるアシュリカ。


 んでもって

 「ハァハァ♡ソーマたぁあん♡可愛いヨォ♡私だ!結婚してくれ!」

 「…殺していい?」

 と変態グラセルも便乗するが、リンが殺気を放出している。めっちゃ嫌いになってるじゃん…。


 『ぶっほww!ぼ…僕は前に…進むのだ!w何処へ向かうのじゃ!やばい…腹痛い!』

 「(辞めろ!恥ずかしいし俺が考えた訳じゃない!)」

 スピカは煽ってくる。マジ最悪の気分だわ!俺あの審判嫌い!


 「おおっと!ソーマ選手の方はすでに熱烈なファンがいる様だ!これは今後の成長が期待できそうだねぇ!?

 さぁあて!こっからがメインイベントだ!両者構えて!

 私がReady Go!と言ったらバトルスタートだ!」


 やっと茶番が終わった。

 

 ジャッジマンの合図により会場が静まった。

 俺は夜明デイブレイクを…そして変態…いやグラセルは髑髏のついた不気味な杖を構えた。


 「…大丈夫いける」

 『ふん…まぁお主は一人ではないからな』

 「そうだな…行くぞ…スピカ…」


 あちらはニヤニヤしている。そして周りの観衆もだ。

 俺が負けると疑ってすらいない。だけどな?


 「両者準備はできたね!では…いくze!

Ready………Go!」


 


 勝つのは俺だ!

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