第34話 修行の合間の一休みの話聞く?

 「ん…んん?」

 意識が浮上してきた感じがする。目を開けるとそこには…


 プルプルの唇を突き出すマスターのキス顔が迫っていた。

 「ぎ、ゃぁぁぁ!」

 「あらぁ♡起きちゃったの?」


 俺は思わず飛び起きた。見ると俺の頭はマスターの太ももに乗っていた。美女に膝枕されるとは夢にも思ってなかったが…

 「ふいい…最高の体験だったな…」

 「おかえりアシュリカ」


 隣で寝てたアシュリカも起きてきた。そんなアシュリカにリンが駆け寄る。

 しかし様子を見るにまだ時間に余裕があるのだろうか。


 「あの…あれから何日ぐらい経ちました?」

 「そうねぇ…二日ぐらいかな?そっちの世界の時間の速さに私の魔法を掛け合わせると結構時間取れたんじゃない?」

 「え!?たったの二日なんですか!?俺てっきり半年ぐらいかかったのかと…」

 「まぁ時間は少ないもの…私も寝る時間は少しはとったにはとったけど…結構頑張ったのよ?ふぅ…」


 見るとマスターの額には汗が伝っている。余程疲れたのだろう。此処まで頑張ってくれてるのなら俺も頑張らないと目標はアシュリカから一本取る事だ。


 「少し休憩したら?お風呂とか沸いてるし服も取り替えておいで?ハァハァ♡そ…ソーマきゅんの体と下着はお姉ちゃんがゴシゴシ洗ってあげますからねぇ♡ハァハァ♡」

 「いやぁぁぁぁあああ!」

 

 美人なのに…なんでこんななんだよぉ…。

 アシュリカがマスターの頭に軽くチョップを入れた。

 「フゥ確かに少し気持ち悪いな…。ソーマよ少し休憩しよう」

 「あ…はい」



 ◇



 そして

 「風呂最高♡」

 俺は現在お風呂に入っている。マスター愛用の泡が凄い猫足バスタブ。まるで金持ち気分である。


 「しっかし…スピカはああ言ってたけど…俺の強さは一体どこまで行ったんだ?そもそもまだアシュリカさん以外の剣士と出会ってないもんな」

 と物思いに耽っているといきなりガラッと風呂の扉が開いた。


 そこには

 「ソーマきゅん♡お姉ちゃんとお風呂は・い・ろ♡」

 と体にバスタオルを巻きつけたマスターが入ってきた。


 「ぶほ!」

 その刺激は強かった。何しろこちとら思春期真っ只中の14歳の童貞である。いくら変態とはいえムチムチ美女のそんな姿はあまりにも暴力的である。

 あ…鼻から赤いのが出てる…。


 「やぁん♡鼻血出てるうん♡かーわーいい♡」

 「ほぎゃ!?」

 すると今度はマスターが無理やりバスタブに入ってきて俺の顔を自身の胸の谷間に埋め込んだ。


 …すんげぇフカフカのプルプル…。あれ…もしかしてこれが楽園への入り口?

 すると今度は


 「なにやってんですか!?」

 とアシュリカが風呂場のドアを開けて突入した。一応言っておくがアシュリカは先に風呂に入ってて服を着ている。

 期待してはいけない。


 「あらアシュリカ♡ふふふ見て分かるでしょ?ソーマきゅんとお風呂に入って大人の関係に…ごは!」

 「自重して下さいお願いだから」

 アシュリカはマスターの脳天にゲンコツを放った。マスターの頭にたんこぶができて伸びてしまった。


 「そ…ソーマ…きゅ…」

 「マスターは連れて行く。お前はゆっくり休め」

 そう言ってアシュリカはマスターをタオルでぐるぐる巻きにしたまま部屋に担いでいった。


 …なんか安心した様な…残念な様な…。



 ◇



 「さて…気を取り直してリン?魔空間まくうかんの用意OK?」

 「Yes mum」

 

 あの後風呂から上がり着替えを済ませて部屋に戻るとマスターはたんこぶをつけてアシュリカに正座させられ叱られていた。

 リンはというと買ってきたのか十個入りのカエル饅頭を食べながらその様子を観察している。

 しかも全部食い切ってお腹をかるくポンポンと叩いてご満悦である。


 マスターの確認の為の呼びかけにリンはビシッと敬礼している。因みにマスター。仁王立ちで真剣な顔だが頭にたんこぶができているため何かしまらない。


 「よし…ソーマ準備はいいか?」

 「はい!大丈夫です」

 「それじゃあ行くよ。ほいっと」


 リンが何か気の抜ける様な掛け声を出して杖を振り上げた。すると杖に嵌め込まれた水晶の周りの空気が陽炎のように揺らめき始めた。

 「おえ…」

 気持ち悪くなり目を閉じる。そして



 ◇



 目を開けると周りが霧で覆われた小島の上だった。その上には大きな小屋がある。

 「ソーマと初めてお話ししたのもあの小屋の中だよ」

 いつの間にやら隣に立つリンが解説する。あの時は小屋の外には出てなかったから景色は分からなかったがこうなっていたのか…。


 後ろにはマスターとアシュリカもいる。アシュリカは口を押さえて俯いていてその背中をマスターが摩っている。

 「えっ…どうしたんですか?アシュリカさん」

 「アシュリカねぇ?ちょっと酔いやすい体質なのよ。乗り物もだけどリンの魔空間移動もダメで…」


 見ると顔も青い。

 「魔空間まくうかんへの移動は負荷がかかる。苦手な人は苦手。この前はルークが彼女の一人に包丁持って追いかけられてるのを助けた時も使ったら吐いてた」

 「…だから言わんこっちゃない…」

 自業自得だな…これは…。


 「わ…私は大丈夫だ…。この通り」

 「アシュリカさん?無理しない方がいいですよ?」

 「いや大丈…う…」


 アシュリカが口をまた抑えた。リンはすかさず杖を振る。するとドンと扉が現れた。

 「この先トイレ。いっといれ…あ。」

 リンが何かその…個性的なギャグを披露しようとしたが当然アシュリカは聞いておらずすかさずトイレに向かった。

 「折角面白いギャグ閃いたのに…」

 リンは不服そうである。


 「しっかし凄いですよね…すぐトイレに繋がる扉を作り出すなんて…」

 「魔空間まくうかんの中は使用者の支配空間。何でも好きにレイアウトできるわ。けれど生物を作ったり他人の体や魔法に干渉できないっていう欠点があるのよ」

 「へぇ…」


 「そうつまり!私とソーマきゅんの愛の巣も作れるのよ♡」

 「リン。あれなんだ?」

 「無視!?あ♡でも興奮する♡」


 そんなこんなしてるとスッキリしたアシュリカが現れた。

 「済まんがリン…洗面台に繋げてくれないか?あと歯ブラシとコップと歯磨き粉」

 「はいよ」


 アシュリカのお願いにリンはヨイショとまた扉を作り出した。アシュリカは今度は丁寧にドアを開けて入っていった。

 「ていうかこんな事できるなら金とか作れるくない?」

 「できるけどそれは無理。出てきても唯の偽札だってバレる。作れるのはあくまでもコピー」

 「え?コピー?」


 「現存するものを作ってもどこかにアラがあったりするもの。お金なんてそれこそ細かい模様とかあるからバレやすい。ソーマのコートも見たことある服を真似て作ったやつ。

 お金として利用できないし、例え利用できても犯罪になる」

 「要は本人の記憶次第って訳よ。空間を捻ったり空間自体を弄るくらいなら別に制限はないわ。けど、一から何が作る場合は本人の覚えてる範囲の偽物を作ることになるの。

 記憶が全くないものや全く存在しないオリジナルのものは作成負荷よ」

 最強クラスの魔法でも何処かに穴が空いてるものなのだな…。


 「その理屈だとマスターと俺の愛の巣はできませんね」

 「あん♡もうツレないんだからぁ♡それはこれから作ればいいじゃない♡」


 そんな会話をしているとドアが開いた。

 「お待たせしました。よし!ソーマ修行を始めるぞ!」

 「はい!」


 晴れやかかつ爽やかな顔をしたアシュリカが戻ってきた所で修行を開始することにした。

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