第33話 修行(魂の終着点にて)の話聞く?

 そして

 「ソーマまずお前のやり方を見せてくれ」

 「はい!」

 早速アシュリカによる指導が始まった。俺はアシュリカの指示に従い剣を握りそして振る。

 すると


 「…なるほどな」

 「へ?」

 アシュリカは俺の元へ歩き目の前に立つ。そして俺の手を動かした。


 「まず剣の握り方。これではすっぽ抜けるぞ。かえって危ない」

 そう言いながら剣の握り方を変えてくれる。

 「そして振り方だ。本当ならば目標があればやりやすいのだが仕方あるまい。

 お前はただがむしゃに振ればいいと思ってるだろうが違う。

 前をみて狙いを定める。これは武器を使うものの基本だ。


 それと足の位置と腰の位置。今のままではいざ敵に先手を取られたとしても避けるのはほぼ不可能。逆に先手を取るのは難しい」


 そう言って俺の体を直すが

 「いだだだだだ!」

 「我慢しろ!貴様は剣を上達させたいのだ…ろ!」

 「いだだぁぁ!」

 

 力加減は滅茶苦茶である。すんごく痛い。最後明らかに力入れてなかった?俺なんか悪いことした?

 「うわぁ…痛そうじゃのぉ…」

 一方のスピカはそんな様子をビクビクしながら見つめている。なら助けろよ!


 「よそ見するな!私の話を聞かんか馬鹿たれ!」

 「うわぁあん!ごめんなさいぃ!」

 今…今!ボキッていった!剣の修行じゃない!絶対違う!絶対この人俺に何か恨みがある!そうとしか思えない!


 とまぁこんな感じで


 「ソーマ!その振り方は良くないと何回もいってるだろうが!」

 「だから剣の握り方はこう!何回いえばわかる!」

 「だから言わんこっちゃない!すっぽ抜けたぞ!危ないだろうが!」


 と超スパルタ指導である。ちなみにその間

 「そうじゃ!わ…ワシもそう言いたかったのじゃ!うんうん」

 とスピカはスピカでアシュリカの意見に同意するのみで特に何もしない。


 しかし

 「おい…スピカ?」

 「な…なんじゃ!?」

 「お前…碌に剣の知識がない癖に私の意見にうんうんとしか頷かないな?」

 「へ…?」

 「私はな?碌に知識がないのに半端な知識で人様を見下す者が気に入らんのだ…と言う訳で…、貴様にも剣の知識をつけてもらうぞ!」

 「ひぃぃい!いやなのじゃぁぁあ!」


 とスピカも捕まっていた。そして実技はないものの座学を学ばさせられていた。スピカは休憩中

 「あの鬼ババアめ」

 と陰口を言ったが、アシュリカの耳に届いていた様で怒られていた。


 一方の俺は自分より怒られてるスピカをみてやはり人間…人への礼儀とか態度は大事だなと思ったし、なんか怒られるスピカを見て自信がついた。

 だって人間だもの。自分より怒られてる人間がいるとなんかホッとするのである。…流石にクズみたいな考え方だが自分が下に思われるのはやはり嫌なのだ。人の短所と比べてしまうのは人間の悪いところであって俺が性格クソとかではないことを祈りたい所存だ。



 ◇



 そんなこんなで

 「俺たちあれからどの位この空間にいるのでしょうか?」

 「さあな。ほお?」


 初め来た時からかなり時間は経過してる体内的には半年以上いる気がするが大丈夫なのか?

 因みに現在俺はアシュリカと簡単に剣で打ち合っている。

 途中で嫌になる時もあるがアシュリカのスパルタのお陰で飽きずに此処までこれたし、剣の修行にばかり時間を割いてるので嫌でも上達する。

 この空間不思議なことに腹も減らないし眠くないし、トイレに行きたくもならないのだ。なので休憩以外はひたすら剣の修行。頭おかしくなりそうだが、アシュリカは飽きないのだろうか…


 剣はもう一本ないのでアシュリカの剣と鎧のパーツをアシュリカの髪の毛を結っていたゴムで固定して即席の棒を作った。

 それをアシュリカが持ちお互い打ち合っている。


 「お前中々上達しているな。最初はあんなにあたふたしていたのにな?」

 実はだんだんと形が様になってきたからとこの修行が定番化し始めていた。

 最初はついていけずオロオロしてたし、アシュリカの振る棒に当たって痛い思いをしている。


 しかし現在少しずつアシュリカの剣の癖や速さに慣れ始めた俺は彼女と長時間互角に撃ち合えるぐらいに上達。それも喋りながらでも可能になった。


 「先生がいいおかげですよ」

 「ほう?それはどう…も!」


 アシュリカが止めに俺の腹目掛けて棒の先を打ち込む。これ一点に圧が集中するから結構痛い。しかし

 「よっと!」

 俺はその棒を紙一重で避けれる様になった。

 そんな俺を見て一瞬驚きを見せるアシュリカだがすぐにニヤリと笑い


 「はは…最高の弟子だよ!お前は!」

 「はは…アザーっす」

 すぐに体制を整えるアシュリカの棒を俺は剣で受け止める。


 確実にそして少しずつ彼女の強さに近づいている事や何より最初は怒られてばかりだったのが今では褒められる事も多くなり喜ばせる領域に達せた事が嬉しくて…この時間が永遠に続いていいとさえ…おも…


 「ふざけるなぁァア!?永遠じゃと!さっさと元の世界に戻れ!」

 と俺が臭いセリフを心の中で吐いてるとスピカがキレた。

 スピカはアシュリカに怒りと恐れを抱いている。休憩時間の度に懲りずに陰口を叩いては制裁されるスピカ。


 見た感じスピカはプライドだけは高いが精神的に幼いしメンタルが弱い。そのせいかアシュリカとの相性は最悪。というかスピカが一方的にアシュリカを嫌ってる。


 「おい。今修行中だぞ。邪魔をするな」

 「邪魔!?むむむ…き…貴様…もう許せん!大体そこまで長く打ち合えるなら問題なかろうが!貴様の剣の速さも強さも今まで見てきた剣士の魂の誰よりも秀でている!

 もうその領域に太刀打ちできるならもう良いであろう!ほとんど最強であろう!?

 いいから…さっさと戻れ!」


 「え?うわ…」

 スピカがセリフを言い切ると俺とアシュリカの足元から泡が出てきた。そして泡に包まれた俺とアシュリカはだんだん体が浮上していく。

 スピカはというと

 「もう二度と来るな!こんの鬼ババア!」

 と最後までアシュリカに暴言を吐き舌を出した。


 これにはアシュリカキレてないかと恐る恐る見るが

 「ふふ…生意気なやつだな」

 と逆に和んでいた。取り敢えずホッとしながら俺たちは意識を浮上させた。

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