第30話 果し状貰った話聞く?
俺は着替えと顔の手入れ…そして清潔な包帯を巻いて(滅茶苦茶練習した)身支度を済ませルークのいるであろうリビングにやってきた。しっかし若いくせしていい家に住んでるな…。
「なんかすんげぇデジャブ…」
「あ…ほはほ…もぐもぐ…」
リビングに行くとそこにはリンがいた。昨日もなんか見たことある気がする。唯一違うのは食ってるのがベーコンエッグとクロワッサンであることぐらいである。
「俺の家は食堂じゃねぇつってんだろ」
「うまい…」
「いやうまいじゃなくて…何なのそのお前の図太さ…そんだけ図太ければコミュ障治りそうなんだけど…」
そんなリンをルークは額に手を当てて呆れている。
「リン今日はどうしたんだ?」
俺も取り敢えずリンの向かいに座ることにした。するとルークが俺の目の前にリンと同じようなクロワッサンとベーコンエッグ。そして
「うお!うんまそ!」
何とアップルパイまで出してくれた。
「ルークってお菓子も作れんのか!?」
「いんや?彼女の作った奴」
「は?」
彼女?お?イケメンなだけで重罪なのに彼女もいるだと?なんて酷い裏切りだ。
「誰?レベッカちゃん?それともリリアンちゃん?」
「んー?今日はメルル」
「ほおほお。なら当たりだね」
「は?」
リンがなんか女の子の名前をたくさん出した。そしてルークも特に何も思ってないのかポロっと別の女の子の名前を出した。
「ルークには彼女が…えっと…五人だっけ?」
「惜しい。今八人」
「いつのまにか増えたね」
「…あのぉ」
「ん?」
「ルークって八股してんの?」
「うん。ルークには彼女いっぱいいる。メルルちゃんは確か1番料理が美味い子」
「ちげーよ。1番はカレン。メルルは二番目だ」
は…?
「何で受け入れてんのぉ!?」
「「へ?」」
「普通に考えてあかん奴!倫理的にアウト!それを普通に受け入れるリンもやばいけどそれ自体をやってるルーク!見損なったぞ!」
何てこったい。此奴節操なさすぎんだろ!何だよ八股って!せめて二股だろうが!
しかし二人はキョトンとしている。
「いんや?俺の彼女はそれを受け入れてるし…」
「私は彼女達のお菓子のお溢れ貰えるから寧ろありがたい」
「く…お…俺がおかしいのか…」
もうわからない…何が…何がおかしいのかすらわからない…。
「そんなことよりソーマ」
「そんなこと!?八股がそんなこと!?」
「血管切れるよ。マスターが大事な話があるんだって」
「へ…」
マスター?マスターって15歳以下の男が好きなあのマスター?俺にハァハァしてるあのマスター…?
「安心して欲しい私も一緒についていく」
「あ…うんその方がありがたい…」
主に俺の貞操的に…。
「俺はメルルとデートなんだよねぇ。ま!気をつけろよソーマ」
「…ルークも夜道とか気をつけろよ?そのうち刺されてもしらねぇからな?」
取り敢えずルークには釘を刺した。恋愛ごとのゴタゴタで刺されたとかなったらなんか嫌だし一応ギルドの仲間なので…決して奴に彼女がたくさんいて少しぐらい俺にモテパワーをくれないかなぁとか思ってる訳でも嫉妬してる訳でもない。
…ないったらない!
◇
…そして
「ハァハァ♡ソーマきゅうううん♡おはよぉ♡はいおはようのチューしましょ?♡」
「マスター。ソーマ嫌がってるし一般冒険者へのセクハラ行為は禁止。マスターが捕まるのは嫌だ」
「そんなぁ…でも最後の本音は可愛いから許す♡」
俺たちは早速マスターに会いに行った。マスターは早速興奮した様子でこちらに向かってくるがリンが守ってくれた為ことなきを得た。
「あの…マスター?それで用事というのは…」
「嗚呼!そうだった!これ見て!」
マスターが何やらゴソゴソと一枚の手紙を取り出した。何か大きな文字が書いてあるけど読めない。するとリンが
「果し状だ」
と呟いた。俺はつい呆気に取られた。
「その通り!ちなみに差出人は
マスターの言葉に俺は青ざめた。リンの方は
「まだ諦めてなかった。今度こそ殺す」
と目の光を消して呟く。いや怖いって…。
「それでね…少し問題があって…」
「問題ですか?」
「この変態が指定した挑戦相手は…ソーマきゅんなのよね…」
え…?
「はぁぁぁぁぁぁ!?ちょ…ちょっと待ってくださいよ!俺まだ依頼でさえ一回も行ってないのに!?そんないきなり!
そもそも確かマスターと一般冒険者の私闘は禁止のはずでは!?」
「普通はね?けどこうやって正式な書類で申請しかつお互いの了承があればOK。
すると公式の場で戦うことになるわ」
んな滅茶苦茶な…。ていうかこの言い回し。どうやらグラセルは本当に俺に挑戦しようとしている様だ。
「ち…あの変態野郎が…。どうせまだ冒険者になったばかりのソーマきゅんならば余裕で勝てると判断した様ね」
「ずっる…」
「それに敗北条件でも当日棄権したら棄権した方が敗北っていうルール。ソーマが不利」
「負けた場合はソーマきゅんを屍の館に移籍プラスソーマきゅんの使役者を変態に変更ですって」
そこまですんのか…。きもっちわる…。
「使役者って変えれるんすか?」
「前にあそこのマスターがソーマに送ろうとした指輪。あれを嵌めると嵌めた人に従ってしまう様になる。
実際には使役者は変わらないけど忠誠心とか命令を聞く相手が変更される感じ。ソーマはそもそも自我がはっきりしてるからどうなるか分からないけど…危ないと思う」
「なんて…何てけしからん指輪なの!?ソーマきゅんにあんなことやこんなことをし放題だなんて…羨ましすぎるわよ!♡ハァハァ♡」
マスターは鼻血を噴出している。美人なのに勿体無い…。
「棄権がダメってことは…確実にこの人と戦わないといけないじゃないですか…経験が絶対違うじゃないですか!」
「でもソーマは試し切りで凄い記録を出してた…。大丈夫だよ」
「…無理だよ…だってあれは俺の実力じゃないもん。何度も言ってるだろ。あれは剣のせいなんだよ…」
項垂れる俺の背中を摩るリン。するとマスターが首を傾げている。
「…剣のせい?どう言うこと?」
「…こいつです」
俺は
「信じられないかもしれないんですけど…この
「鍛冶屋で試し切りした時…ソーマはたった一振りでカカシを10体全部薙ぎ倒した。アシュリカと同レベルかそれ以上の力だと思う。
けど剣に変な人が宿ってるなんて聞いたことがないし、剣が人を強くするのも聞いたことがない」
正直スピカについて何て説明すればいいのか分からなかった。リンも半信半疑である。
「…これってもしかして
マスターはじっと剣を見つめ呟く。その言葉に俺とリンは頷く。
「成程…知ってる?ソウルイーターの食べた魂が結晶化したものが
「へ?」
「都市伝説としては聞いたことあるけど…魂の結晶化何て可能なのかな?」
「分からないわ。けどソーマ君が言ってる変な人がその犠牲者かもしれない」
とマスターは自身の見解を述べる。だとすればあの空間に浮かぶ星々もその犠牲者になるかもしれない。
だがそうなると何故スピカのみ人の形を保っているのだろうか…。
「それに都市伝説と言えるかすら分からないの。奇石の武器は原体よりは魂を吸うスピードが遅いけど使用者は若くして死を遂げると言われているわ。
そんな噂もあって近代では人々は武器を手にせずにただの装飾品として飾るの。
奇石の武器を使った人々の記録も未だ見つかってないし、他の人は死を恐れて誰も触れない。何ならタブー視する地域もある。
だから正体は分からないままだし、ソーマ君の言う人もいるのかいないのか分からない。
真意を知るのは使用者だけって訳」
とマスターは真剣な顔で語る。
「…」
「あら?どうしたのソーマきゅん?大丈夫?結婚する?」
「しないです。いやマスター凄い物知りだし…こんなバカみたいな話を信じてくれてるから…凄いなぁと思って」
素直な感想を述べるとマスターはニヤけ始めた。
「だってぇ♡ソーマきゅんは私に嘘つかないでしょ♡まぁついたらついたで…ふ…ふふふふ♡お…お仕置きしないと♡」
「頭大丈夫ですか?」
「がは♡有難うございまぁぁす♡」
マスターの不気味な様子にポロリとつい出てしまった言葉。しかしマスターを興奮させるだけである。
「ソーマ。確かにマスターは変態だけど元々は賢者だった。賢者は上級職。その試験レベルはこの世界でもトップレベルの難しさを誇る。
そんな中マスターは試験で満点をとって賢者になったんだよ」
とリンが説明する。
「け…賢者!?魔法使いとか僧侶のハイブリッドかつ上位互換みたいな!?」
「まぁ冒険者としては大まかあってる。…何で知ってるの?」
「俺の世界のゲームに出てくる賢者と大体同じなんだな…」
RPGでも上級職として出てくる賢者が思い浮かぶ。
「んもぉ♡褒めないでよぉ♡私本当は賢者になって学校教諭になりたかったのよ♡
だってそうすれば可愛いショタと触れ合えるから」
「事案じゃねーか!」
「でも何故か教育委員会から猛反対されたのよ!失礼しちゃうわ!」
「それはナイス判断」
こんな変態を野に放てばこの世界は終わる。
「でもそのおかげでソーマきゅんという永遠の14歳と出会えたもの♡ハァハァ♡神に感謝!」
「そこは教育委員会じゃないんすね…」
荒れ狂うマスターに呆れた目を向けつつも俺は次にどうすべきか考える事にした。
剣の修行…。スピカに教えてもらうだけでいけるのか?それも本人自体はど素人みたいだし…。
今回に関しては文字と違って俺の大事なもん。命の次…いや命はもうないから1番大切なもの…そう貞操がかかっているのだ。
何とかあの変態に勝てる実力を身につけねば…。
「はぁ…どうすれば…」
そんな時…
「失礼しますマスター。ジーニアスから書類を…」
マスターの部屋にアシュリカがやってきた。…待てよ?
「アシュリカさん!」
「うお!ソーマ?あ…良かったぁリンも一緒なら心強い」
「ムフフ…ソーマを守るためだもん」
「むぅ…何で皆んな私とソーマきゅんを二人きりにしてくれないのかしら」
俺の声にびっくりするアシュリカ。文字の勉強ではプレッシャーだ何だと言っていたが俺に猶予がない。大事なもんを守るためなのだ。
俺は日本伝統の"スライディング土下座"をかましそして
「俺の剣の師匠になって下さい!」
と叫んだのだった。
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