第25話 可愛いカエルの話聞く?
どんどん奥に進む俺とリン。すると何かきこえてきた。
「?何だこの声…」
「ムフフ…やっぱり今日はラッキーデイ」
その謎の声…いやよく聞くと何かの鳴き声だろうか?なんかめっちゃ可愛い声が聞こえる。
これは期待できそうだ。
暫くその鳴き声目掛けて歩いていくとリンが立ち止まりそして
「あれみて。可愛いよ!」
と茂みに隠れながら指を刺している。俺もそれに従う様に茂みに隠れて指差す方を見た。
「な…何じゃありゃ…」
そこにいたのは沢山のカエルだった。カエルの色は俺がよく知る緑ではなく濃い紫色である。それらが喉を鳴らしているのだ。
そして特に驚いたのがそのカエル達の真ん中にどのカエルよりもデカいカエルがいるのだ。
そのカエルは人間よりも遥かにデカい。ぷよぷよのお腹を出して中心で堂々と鳴いている。
鳴き声は俺が知るカエルと異なりかなりその…可愛い…。
何か応援したくなるというか保護者気分を味わってしまう。途中でトチるのでは?という絶妙な下手さ加減もある。
「ね?可愛いよね」
「んぐ…く…悔しい…可愛いかもしれない…。あのカエルは一体何なんですかね?リンさん」
俺はドヤ顔のリンにカエルの正体を聞く。するとリンはムフフと笑みを浮かべて自身の帽子に付いてるカエルの飾りを見せた。
「あの子達はね?ドクハキガエルっていうんだよ♡」
「あれ?それってリンがザックにもらった限定カップの?」
「うん!ドクハキガエルはあの可愛い声とか、ポヨポヨのお腹とか丸いフォルムとか…そして毒々しいポップな色から今大人気の魔物なの!
私はその前から目はつけてた。けれど人気が出て認知されてグッズが出てきた。こんな嬉しいことはない」
よくよく考えるとリンと初めて会った
「そしてそして。あの真ん中にいる大きい子が"ドクハキダイオウガマ"。ドクハキガエル達の親分だよ。あの子のぽよぽよのお腹に大きい体は抱きつきたくなるんだ♡
私いっぱいお金貯めてあの子の等身大ぬいぐるみを買うの」
「等身大ぬいぐるみ…あれ部屋に入るのか?」
いや入るとしてもまず大前提にドアを通れるのだろうか…。
「結構お値段が高い。大体14000G位」
「あ…此処ゴールドなんだ。金の単位。俺の世界は円とかドルとか何か色々だったな…」
ゴールドって円換算するとどの位なのかな…。比べようがないしめんどくさいから考えるのはやめよう。うん。
と金の話をしているとカエル達は合唱を終えた。
「ブラボー!」
リンは無表情だがキラキラした目で拍手してる。俺もつられて拍手した。
するとカエルが振り向き、ケロケロと可愛く鳴いている。顔も何かニコッとしている。
え…やだかわい…スマホのロック画面に設定したい位…。
「あいつら全然逃げないんだな」
「うん。けど怒らせると危険。特に小さい子達は濃縮された毒を吐くから」
「…え?」
「あの子達の出す毒液は皮膚から吸収して即死させる効果がある。あの合唱もたまにしてるけど実際は毒を練りに練って毒を強化してる儀式でもある」
…可愛い見た目に騙された!チキショー!
「んじゃあデカいのはもっとやばいんじゃないの?」
「毒は吐く。けど小さい子に比べたら毒は薄い。飲むと死ぬけど皮膚吸収はしない。
でも力も強いし重いから危険」
「どちらにしても危険じゃねーか!」
「うん。はぁ…あの子達と暮らしたいのに暮らせない…神様はなんて残酷なのかな。一度でいいから抱っこしたいのに…」
リンはハァと項垂れている。ん?待てよ
「俺は毒浴びても死なないし触れるのでは!?」
「ずるい!抜け駆けはダメ!」
「えぇ…」
俺もあのドクハキガエル抱っこして癒されたいのに…。
「そうだ!抜け駆けはいけないぞ!フェルナンド嬢!私のソーマたんとデートとはけしからん!」
「で…デートなんかしてないもん!ソーマを癒したかっただけだもん」
「そうだよ!リンは俺のために…ん?」
え?一人多くない?しかもすげぇ嫌な予感がする。
それはリンも感じた様で顔を青くしている。俺たちは少し見つめ合い意を決してもう一人の方を見る。そこには
「ふ…やぁ昨日ぶりだね?マイスイートハニーエンジェルソーマたん♡」
で…
「デタァァァァァア!」
「変態だぁぁぁあぁ!」
「ふふふ…フェルナンド嬢?君の大声は初めて聞いたよ。というか私は変態ではない!ソーマたんを愛する恋の狩人なのさ!」
そこにいたのは先日会った二人目の変態である
グラセルは擬態でもしようとしてたのか頭に鉢巻をしてシカの角みたいに木の枝を固定している。
「な…何でアンタがここにいるんだよ!」
「ふ…偶然だ…そう…偶然なのだ!あーはっはっはっ!」
「う…嘘だ…私此処に何回も来たことあるけど…貴方と会った記憶がありません…」
リンもリンで俺の後ろに隠れている。
嘘みたいだが目の前のハンサムなオッサンは俺の後ろにいる美少女。リンではなく、俺を狙ってる。見た目だけだと美少女に言い寄る変態と美少女を守る少年の図なのに…。
いいかお前ら。目に見えるものだけが真実とは限らないんだぜ?
例えおっさんに好かれなさそうなモブがおっさんに好かれていても。それが真実なのだ。
「そりゃあそうだ。僕は此処に来るのは10年以上ぶりだからね」
「いや絶対偶然じゃねーだろ!は…ま…まさか今日感じた視線は…アンタだったのか!」
「何!?ソーマたんストーカーされてるのか
!?く…僕のソーマたんになんてこった。安心してくれソーマたん!これからは僕が君にストーカーが襲ってこないように見張ってあげるよ!現に今日も君のガードマンとして活躍してたんだからね!」
「…」
会話にならない。相手するだけで疲れる。するとリンが何か決心した顔でそろりと俺の背中から出てきた。
「あ…アシュリカと約束しましたよね…。ソーマにしつこいアプローチはしないって…」
「ふふふ…確かにけど私は偶然!此処にきたに過ぎないのさ。偶然ならば仕方ない!」
「ソ…ソーマは渡しません!」
リンはグラセルを睨みつける。
「フゥ…君ね…それなら君がうちに入れば済む話だろ?」
「え…」
「君がウチに入り、そしてソーマたんの様な成功例を作り出せばいいのさ!そうすれば私はそのもしかしたらソーマたんを諦められるかもしれない!」
「いや…でも!」
「それとも君は…今のギルドにいるのかい?君の大切なソーマたん…。まぁ将来的にはソーマたんは私の花嫁にするつもりではあるが…。移籍するつもりはないのなら君は自身の使役ゾンビを自分の保身の為に売り渡す女性と言う事になるが?」
は?…何だよ…今の言い方…。
「わ…私はあ…貴方のギルドに入らないし…ソーマも渡さない…」
「君には最高の
君は確かに魔法使いの中でも中堅位…。しかしあのギルドには君以外の魔法使いはおらず才能を伸ばそうにもあのギルドで君の才能を伸ばせる者はまずいない。
だが考えてみてほしい。君のその
要約すると君の様な素晴らしい
今度はうちのギルドを落とす作戦にしたらしい。がリンは
「撤回してください。うちのギルドを悪く言うのはやめてください。貴方はどうせ魔法使いの私ではなく
どうせ私に貴方にソーマレベルの成功例であるゾンビを作れって言いたいんでしょ?いやです。仮に成功してそのゾンビが貴方を好きになりますか?一々見てて気持ち悪いんですよ。
ソーマへのアプローチ。女の私でも無理です。そんな気持ち悪い人がマスターのギルドとか…無理に決まってる」
とリンの目の奥は闇で染まってると思えるぐらいの闇を抱えている。
リンの暴言に呆然とするグラセル。そんなグラセルを無視してリンが俺の手を掴む。
「行こ」
「う…うん」
そう言ってリンが俺の手を引っ張り森を抜けようとグラセルの横を通るが
「へ?」
何かミキミキって変な音がする。何だこれ?すると
「ソーマ!危ない!」
「へ…わ!」
リンが俺を突き飛ばした。すると
「わわ…」
リンの片足が木の根っこの様な者で絡められて持ち上げられた。リンは逆さまにぷらんとぶら下がり、被っていた帽子が落ちてきた。
「リン!」
「私は大丈夫…この魔法…グラセルさん。マスタークラスが一般冒険者に手を出すのは禁止の筈ですよ?」
リンがグラセルを睨む。
これあの人の魔法なのか。それも最初俺を狙ってたみたいだ。
「ちっ…外したか…」
「…おい…アンタいい加減にしろよ!リンを離せ!」
「ほう?ならばソーマたん僕の物になれ!そうすればフェルナンド嬢は離してやろう」
「ソーマ!私の事はいいから早くアシュリカかマスター呼んできて!…い…」
リンが俺に声をかけるが木の根っこがリンの片足を更にキツく巻きつく。
「フェルナンド嬢の細くていい足だね…。その睨みつけてくる顔も子猫の様に愛らしい。見た目だけなら最高に好みなんだけどね…何しろ生きてるのが最大の欠点だ」
「は?」
「君が無理ならばフェルナンド嬢を花嫁にするのも…悪くはないかもね」
…つまりリンを殺してゾンビにする気なのか…。
「や…やめろ!リンを助けてくれ!俺が…俺が何でもするから!」
「ソーマ!」
「へぇ?何でもか…♡それは本当に何でもだね…」
本当は滅茶苦茶いやだ。だけど…
俺は上でぶら下がるリンを見る。その瞳は不安そうに揺れている。けれど
「ああ…だからリンを…離してくれ…」
「ハァハァ♡そうかそうか!本当はこんな非人道的なことはしたくなかったがね。
漸く素直になったか…」
そう言ってグラセルがニヤニヤしながら俺に近づくそして
「では永遠の愛を誓おうか…」
俺の頬に手を伸ばされた。
『小僧!わしが寝とる間になーにきしょく悪い展開になっとるのじゃ!』
瞬間…生意気な少女の声が頭に響いた。すると
「うわ!ま…眩しい!」
「え…」
俺はその瞬間にすぐにその場を離れてリンの元へ行く。
「でりゃあ!」
俺は
「わわ!」
リンが落ちてきた。しかし上手い事俺はリンの落下地点に間に合いキャッチできた。
「そ…ソーマありがとう…」
「礼はいい!逃げよう!」
俺はリンの落ちてた帽子を拾い被せ、リンの手を掴み森からの脱出を試みた。
「く…目が…あれ?ソーマたん…ソーマたぁぁぁん!」
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