第24話 不憫な人面樹の話する?
リンは俺を連れてレイングラスの町を抜ける。
「え?町の外に行くのか?」
「うん。ソーマには是非来て欲しい」
リンは黙々と俺の手を引っ張ったまま歩いていく。何なんだ?
◇
町を抜けると昨日見た草原が広がっている。
「うーん…風が気持ちいい…」
「ね。」
草原を駆け抜ける風がフワリと頬を撫でる。
その感触も気持ちいいし空気も綺麗だ。
「ソーマ。こっち」
リンは俺に来い来いと手招きする。俺は大人しく着いていく。
「そういえばこの草原の名前教えてなかった。この草原は"ウララ草原"。比較的平和な場所」
RPGで最初に巡るフィールドみたいなものか。
「多分今後ソーマが依頼を受ける時…まだ新人さんだから此処らの魔物の討伐とか素材採取とか任されると思う」
「うーん…でも俺ちゃんとできるかな…」
「大丈夫。使役ゾンビは基本的に主である人のお供って扱い。だから私が着いていく。安心して欲しい」
リンは自分の胸を拳で軽く叩いてドヤ顔だ。頼りになりそうである。こんなだだっ広い場所で〇〇倒せって言われても何がどれなのか分からない。アイテムだって同じだ。何せ此処は現実。攻略本がない。
それならばリンがいてくれた方が遥かに良い。リンのサポートとしては間に入って依頼主と会話とか代わりにすれば良いだけかと思うしね。
と長々と考えながらリンと駄弁り歩いていくと…
「ん?」
「どうしたの?」
「また視線が…」
またしてもなんか誰かに見られてる気がした。それも粘つく様な視線。
「もしかして朝感じた視線?」
「多分。…けどこの視線なんか…覚えが…」
何かこの視線前にも体験した気がする。
けど平凡な俺をそんな見てこないと思うし…
「もしかしてこの視線はリンを狙ってるのか?」
「へ!?わ…私?」
「うん。だって俺みたいな平凡なゾンビ誰がストーカーすんだよ。リンはほら…可愛いから」
と意見を述べるとリンがボンっと顔を赤くした。
「わ…私は…可愛く無い…」
「え…あ!ごめん…キモいこと言って…」
「う…ううん。そんな…えと…あ…ありがと…」
釣られて俺も真っ赤になってしまう。リンはリンでモジモジと見つめてくる。やばい…何か可愛い…。
…変なこと言ったせいで変な空気になっちゃった。何か甘酸っぱい気がする。そんな俺たちを見ている視線はというと
「ソ…ソーマたん。私と言うものがありながら他の女といちゃついて何てイケナイ子なんだ!」
と騒いでいたとか…いなかったとか…。
◇
「ここだよ」
「…なぁ?リン…」
「ん?」
「此処って入って大丈夫なところなのか?」
リンに連れられた先。目の前に広がるのは穏やかな草原に似つかわしくないおどろおどろしい森が広がっている。
見た感じで何か不気味な木が生えていたり、人が通るであろう道の先は暗い。
「うん。此処はね?"ドクヌマの森"」
「名前からしてアウトじゃないかな?!」
「アウトじゃない。確かに毒沼とかあるけど決して危険では無い」
「リン?毒がどう言うものなのか分かっていってるのか?」
俺の真っ当な意見にリンは釈然としない様子で首を傾げる。こっちが首を傾げたいんですけど?
「大丈夫。此処は知る人ぞ知る癒しスポットでもある」
「い…癒し…スポット?」
俺が思い浮かぶ癒しスポットとどう考えても対を成しているぞ?この場所…。
「中は素敵な空間が広がる。見た事の無い赤いキノコや緑のキノコに虹色のキノコはまるで御伽話に出てくる見たいなキノコ」
「毒キノコだね…」
「紫に染まる沼はポップな色合いで森の中を彩ってくれるし、ツンとした匂いはクセになる」
「毒沼だね…」
どうしよう何一つとして癒される様なポイントが全く無いぞ…。
「そしてそして!何と言っても世界で1番可愛い動物がいる!」
「何!?」
せ…世界で1番可愛い動物!?これまで聞いてて1番癒されそうなワードだ。リンは俺が食いついた事にムフフとご満悦である。
「ムフフ…興味を持ったみたいだね」
「ぐ…悔しいが…見てみたい…」
「ムフフ…百聞は一見にしかずだよ。早速森に入ろう」
やべぇワクワクしてきやがった。そういえば親戚でもペット飼っている家族がいたな…
タロウにハナコにポチにタマ。そしてミケランジェロ3世略してミケ。皆んな何してるのかな…。
かくして俺はリンと共にドクヌマの森に入っていった。
「…あれはドクヌマの森?人気のいない森の中に私のソーマたんを連れていくとは…フェルナンド嬢…見かけによらずなんて恐ろしい子!」
◇
「…入ってみると本当に不気味だな…」
森に入ると予想通り周りは暗くて不気味。木の模様は顔に見えるし、上空をカラスみたいな奴がカーカー鳴いてるし、こんなとこで幽霊が出てもおかしく無い気がする。
「そう?絵本の世界みたいで可愛いのに」
「こんな世界線の絵本あったら子供ギャン泣きするわ!ってうわ!」
歩いてると何やら人の顔を貼り付けた様な気味の悪い木が生えていた。いやそれだけなら怖いけど問題はなかったと思う。
ただの貼り付けた顔が動いている。何ならくしゃみしている。
「…な…何あれ…」
「あれは"
「あれも魔物なの?」
「一応分類されるけど襲ってこない。それに
「…可愛いっていうか…可哀想…」
自分の花粉でくしゃみしてたんだ…確かに葉っぱの方に白い花が咲いている。そして周囲に黄色い霧のような…多分あれが花粉なのだろう…。
「
「へ…へぇ…」
これが沢山集まって大会開かれたりするのか…それも人工で育てるって自分の家の近くにこいつがいるって事だよな…。
俺には無理だな。うん。
「とまあこの様にウララ草原やその近くには害のない魔物ばかり。唯一気をつけるのはソウルイーターぐらいだけど、暫くはソウルイーターレベルのやつとは戦わないと思う」
それを聞いて少しホッとした。あんな鎌振り回す死神なんてもう会いたくないし…。
「まぁでもソーマの実力ならソウルイーターも大丈夫だよ。それに死なないし」
「んー…どうだろ…個人的にはあれと会いたくない。何か夢に出そう」
視覚的なダメージが大きいし。みてるだけであ…殺されるって思っちまうもん…。
「それで?リンが見せたかったのはこいつなの?」
「違う。私が会わせたい子に比べたら
おい…ただでさえ自分の花粉で自滅してんだぞ?やめて差し上げろ。
聞いていたのか
「着いてきて。もっと奥にいるからそれに今日は多分良いもの見れる」
「わ!ちょ…良いものってなに!?」
興奮した様子のリンが俺の手を引っ張る。く…見かけによらず馬鹿力め…。
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