第21話 新しい武器貰った話聞く?

 …翌朝

 「ふわぁ…よく寝た…」

 俺はベッドから起き上がり外の景色を眺めていた。外は晴れていて太陽の光が燦々と降り注ぐ。それに…


 「夢オチでは無いわけね…」

 窓から覗いた景色も…俺が寝ていた場所も全て異世界のままである。もしかしたらこの世界は夢の世界で寝て起きたらまた日本の親戚の家にいるみたいなオチかと思っていた。


 昨夜は異世界転移してゾンビになって、ギルド入りして歓迎会してと盛り沢山の一日。

 よく寝れたと思う。何しろこちとらいろんな場所をタライ回しにされてきたのだ。環境へ馴染むのはかなり得意な方だと思う。


 んでもって昨夜の話。俺の家をどうするかになった。マスターは絶対私の家で暮らせ!としつこく言ってきたがアシュリカが守ってくれた。アシュリカ様々だ。


 結果、俺はルークの家に来ている。てっきりジーニアスと暮らしてると思ってたが別々に暮らしてるらしい。ジーニアスの方は事務室に泊まり込んでいるとか。


 そんな俺のいる部屋にトントンとノックの音が聞こえた。

 「はよ。寝れたか?」

 「あ!おはようルーク。うん。ありがとう泊まらせてくれて」

 そっかと言い俺の頭をガシガシと撫でてくるルーク。最初はナンパだし胡散臭いと思ったが意外と気が良い奴で、敬語もいらないと言われた為今はタメ口で話している。


 「朝飯できてっから下に降りてこい。お前に客も来てんぞ?」

 「客?」

 

 

 ◇



 包帯はルークが部屋を出る前に巻いてくれた。その後はフレイア直伝のメイク術を使い生前の姿を取り戻し、何とか下に降りる。下のリビングからはフワリと美味しそうな匂いが漂ってきて…


 「ふぁ…ほはほーほほは」

 と頬をリスみたいに膨らましてモグモグ口を動かすリンがいた。両手で具沢山のサンドイッチを持っている。口にはパンくずが付いている。

 「…こいつコミュ障のくせして慣れると遠慮がまっ…たく無くなるんだよなぁ…食ってから話せよ」

 「ごくり…うん。ルークのご飯美味い」

 「人ん家来る前に自分で飯食え」


 ルークはハァとため息を吐いている。しかしリンは気にせずにモギュモギュと食べている。

 「あれ?俺のお客ってリンのこと?」

 「嗚呼。何かお前に用があるからってデカい腹の虫鳴かせていってきやがるからよ。お前も飯食え」


 ルークは俺を椅子に座らせて目の前にリンが今食べてるサンドイッチと同じ物をドンと置いた。未だかつてこんな分厚いのは見たことがない。

 俺は大口を開けてかぶり付いた。ふわふわのパンもそうだが沢山挟まれた具材がうまくマッチしてる。


 「うま!」

 「飯は逃げねぇからゆっくり食えよ」

 ルークはそう言って自分用のサンドイッチを食べ始めた。面倒見いいし、モテそうだ。ていうか昨日も俺の家が決まるまで居ていいとまで言ってくれたのだ。

 いい人過ぎる…。


 「あ!そうだリン?用事ってなに?」

 リンは既にサンドイッチを食べ切ったらしい。夢見心地の様子である。…口元に未だパンくずついてますけど?指で教えると急いで取って食べてた。


 「んとね?ザックが昨日ソーマに来て欲しいって言ってたの覚えてるかなって」

 そう言えばそんな事言ってたっけ…。


 「もしかして態々わざわざ教えに来てくれたのか?」

 「うん。あ…あとジーニアスから伝言。もしルークが泊まり込みの仕事で帰れなくなったら僕の家に来てくださいって言ってた。

 ていうかルークみたいなナンパ野郎だと教育に悪いから今からでも遅く無いので考え直して僕の家に泊まりに来てもいいよだって」


 …スゲェ喧嘩腰だなおい。するとルークの米神に青筋が浮かびあがり、

 「リン。あのバカ眼鏡に会ったら言っとけ。"残念ながらそんな予定はねーし、ソーマはうちで面倒みます。テメェは引っ込んで黙って眼鏡拭きでもしてろや"ってな」

 「分かった」

 ルークの言葉にリンはキメ顔でサムズアップしている。良く無い。絶対良く無い。


 仲悪いけどいつもこんななのか?


 そんな光景を見ながら俺はサンドイッチを食べ終えた。そして流石に作ってもらってばかりで申し訳ないので皿は洗っておいた。

 何かめっちゃ頭撫でられた。…普通の事じゃね?


 「よし!じゃあ行こうか!」

 「うん。行こう」

 「気をつけろよ!」


 俺とリンは早速ザックの鍛治工房へと向かった。



 ◇



 ここまでの道のり。今んとこ全然他の人には変な目で見られない。良かった…メイク上手くいったっぽい。しかし…

 「なんか視線を感じる…」

 さっきから誰かに見られてる気がする。しかし見回しても誰もいない。

 「どうしたの?」

 「いや…何か誰かに見られてる気がする…」

 「マスターかな?」

 「マスターいたら目立ちそうだけど…」


 しかし気のせいかもしれないのでその場は無視して俺たちはそのまま歩き続けた。


 「ふ…ふふふソーマたん♡今日もかわゆいね♡ハァハァ♡」



 ◇



 「ザック!」

 「お!来たな?ソーマ!リンもはよ!」

 「お…おはよ…」

 朝から爽やかなザック。リンは俺の後ろに隠れてしまった。


 「所でザック?俺に渡したい物って結局何なんだ?」

 「ふふ!じゃーん!」


 ザックは俺に一振りの剣を渡してきた。昨日使った剣と違いピカピカの新品である。鞘の色は黒や赤が使われている。


 「これは…」

 「お前の武器だよ。試しに抜いてみ?」

 「う…うん!」


 ザックに言われるがまま。俺は剣を抜いてみた。

 「…」

 その刀身は美しく…この世の物とは思えなかった。


 刀身の色はまるで夜空のようだった。青や紫、黒…色々な色が混ざり合っている。その中ではキラキラと光る銀の粒。それはまるで星の様であり、そして一つ一つに命の輝きを感じた。


 「…ソーマ?」

 何か声が聞こえる…リンの声?でも俺はその剣から目が離せなかった。…次の瞬間。




 俺は…知らない空間にいた。

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