第20話 歓迎会を開いて貰った話聞く?

 扉を開けてギルドに入ると、パーンという発砲音が聞こえた。周りには紙吹雪や紐のような形の紙が舞っている。

 見ると仲悪い双子とココアがクラッカーを手にしていた。


 「ソーマ君!改めまして!これから宜しくお願いします!」

 「ふ…ふふふ貴方がきた事でこれからの仕事が楽しみですよ!何よりマスターの調子が上がり溜まりに溜まった書類が片付くのは良い事です!」

 「ま…仲良くやろうや」


 待っていてくれた三人はそれぞれ歓迎の言葉をかけてくれる。…なんか約一名仕事の話しかしてない気がするけど…まぁ喜んでくれたならいいかな。

 「こちらこそ。皆さん宜しくお願いします」

 俺も挨拶すべきだとお辞儀する。するとマスターが待ったをかけた。


 「ソーマきゅん!それだけじゃダメよ!」

 「へ!?な…何か足りませんでした?」

 「いい?きちんと"俺はマスターを愛しており結婚する予定なので末長く宜しくお願いします"って言わなきゃメッでしょ♡ハァハァ♡

 んもう悪い子ねぇ♡」

 「俺はまだまだバトルとか初心者なのでご指導宜しくお願いします」

 「無視しないの!あ…でも放置プレイだと思うとゾクゾクしちゃう♡んもう焦らし上手ね♡この子は♡」


 嘘はよく無いですし…俺悪い事してないもんね。


 「そうだ!ココアあれできてる!?」

 「…確かにマスターの注文通り作りましたけど…」

 とココアがバーの裏手に回っていった。そしてガラガラと台車を押してきた。その上にはデカい豪華なケーキが乗ってる。しかしそのケーキを見てマスターのみハイテンションだが俺含め他のメンバーはポカーンとしている。

 何なら運んできたココアはハァとため息を吐いている。


 「…ナンスカコレ」

 「ココアにね?お願いしたの!美味しそうなケーキでしょ?」

 「…いやそういう事ではなく…これどう見ても…


 ウェディングケーキ…」


 運ばれてきたのは巨大なケーキなのは間違いない。これを作り出したココアは凄いと思うが…そのケーキの1番てっぺんには名前は忘れた…え〜何とかパン…?確かマジパンだっけ?


 それで恐らくは俺かな?顔に包帯巻いてて目が赤い男の人形。服装は白いタキシードで作られている。そしてその隣にいるのが、白い髪に灰色の目。恐らく銀を現していてその姿はマスターに似ている。その人形はドレスを着ている。その周りには薔薇の花やらフリルやらをお菓子で作ったのか飾られている。


 クオリティ凄いが…趣旨が違う上に俺とマスターにそんな事実はない。


 「ココアはやっぱり天才ね♡」

 「歓迎会でウェディングケーキ作るとは思ってませんでした」

 「あら?でも将来的にはそういう関係になるもの♡早くても良いじゃ無い♡」

 お…俺の将来設計が勝手に決められている。


 すると俺の両肩にポンと手が置かれた。見ると左肩にはジーニアスが右肩にはルークが手を置いている。そしてかなり息ぴったりのタイミングで

 「「…ガンバ」」

 とだけ言われた。


 …もしかして経験者なのだろうか…。この二人イケメンだから美少年だったんだろうな…。

 うう…俺も成長したかった…。


 「永遠の14歳♡はぁ♡」

 「うう…」

 「懐かしい…」

 「ソーマさん。どんまいです」

 「嬉しくないですぅ…」


 未だ興奮状態のマスター。そして同情してくる双子。何だこの歓迎会は…。ていうかこれは歓迎会というのだろうか。


 「おーい皆んな。ケーキ取り分けたぞ」

 「あ…あぁぁぁぁぁあ!アシュリカァァァ!」

 

 アシュリカが何やら俺含めた七人分の皿にケーキを盛っていた。それを見てマスターは物凄い形相で泣き叫んでいる。

 「私とソーマきゅんの初めての共同作業がぁあ!」

 「ん?え…私何かしてしまったんですか?」

 アシュリカはやべという顔をしている。しかし言わせて欲しい。


 ナイスです姐さん!


 シクシク泣いてるマスターをよそに皆んなケーキを受け取っていく。ちなみに俺の皿には俺そっくりのマジパン。…勿体無いなぁ。

 そしてココアが飲み物を注ぎ配る。マスターも何とか起き上がった。


 「それじゃあ…新しい仲間であるソーマきゅんの歓迎会を始めます!皆んなグラス持った?それじゃあ…乾杯!」

 「乾杯!」


 マスターの音頭に合わせて皆んなでグラスをぶつけ合う。

 ていうかマジでゾンビって飯とか食って大丈夫なのか?いやでもカエル饅頭食っても何とも無かったし…


 「いっぱいご飯あるからいっぱい食べてね!」

 ココアは料理を次々と出してくる。すげぇ…これ全部作ったのか?


 見たところピザとかチキンの丸焼きとかパーティの定番みたいな料理が出てくる出てくる。

 試しに食べるとどれも美味い。飲み物も意外と元の世界のジュースと変わらない美味しさである。

 「ココアって料理上手なんだな」

 「えへへ。家でも結構作ってるんだよ?もし作って欲しいのあったら言ってね?作るから」


 と素直な感想を述べるとココアはニコニコである。やはり作った料理を褒められると皆んな嬉しいのだろう。

 俺も親戚の家に行って手作りの飯が出てきたら褒める。台所を守る者はその家のボスである確率が高いのだ。

 懐柔すれば全てが丸く収まるのである。


 まぁ本当に酷いとカップ麺とかコンビニ弁当とか。家族全員がそうならまだいいけど俺だけそれで他の家族は手作りご飯とか外食なんてパターンもあったな。

 「ソーマ君は美味しそうに食べてくれるね」

 「だってマジで美味いもん!ココアなら良いお嫁さんになれそうだな!」

 そう言うと今度はココアは顔を赤くしている。あれ?余計なこと言ったかな?流石にデリカシーないかも…


 「あ…ありがと…えへへ。嬉しいなぁ」

 しかし彼女ははにかみ笑顔。良かった怒ってないし可愛い!なんてデレデレしてるとなんか背後から冷たい気配が。


 「ソーマ…私の胸触った前科がある。浮気良く無い」

 「ソーマきゅん!んもうお姉ちゃんを無視して他の女の子口説くなんていけない子ね♡」

 「え?ごめんなさい…」


 何故かリンとマスターが詰め寄ってきた。リンはなんか目の奥が真っ暗闇だしマスターは目が笑っていない笑顔。そして二人ともオーラが怖い。つい謝罪してしまった。


 「ソーマさん!?お二人ともソーマさん困ってますよ!」

 「あっはは!アイツおもしれーな!今度依頼行く時さーそお♡」

 「おいやめんか!というかルークも笑ってないで止めろ!」

 「あわわ…ソーマ君!?」


 そんな賑やかで騒がしい歓迎会。少し困ったし怖いこともあったが楽しくて、時間はあっという間に過ぎていった。

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