第19話 勝利したのに相手がしつこい話聞く?
「く…しょ…勝者…アシュリカ・セレス」
グラセルは悔しそうにアシュリカの勝利を宣言した。アシュリカはフゥと息を吐いて剣を鞘に納めた。
「アシュリカ!よくやったわ♡あの変態野郎も殺してくれたら完璧だけど…」
「嫌です」
マスターのとんでもない発言をバッサリ切り捨てた。そしてアシュリカはグラセルに顔を向けて
「約束通り。今後リンとソーマにしつこく言いよるな。もし破ったら今度は公式な場に置いて貴殿を切り捨てる」
「フ…約束出しな…仕方ない…か…」
そう言ってグラセルの目からツーっと涙が流れている。
条件がしょうもなかった分見てても特に何とも思わないけど…それより…
「あ…アシュリカさん!さっきのバトル凄かったです!武器を粉々にしたり自分よりでかい奴をあんな短時間で倒すなんて!」
俺はつい歓喜回ってアシュリカに駆け寄り、思った賛辞の言葉を沢山並べた。するとアシュリカはクスリと穏やかに微笑み、
「仲間を守る為だから手を抜く訳にはいかんだろ?リンは勿論。そして君を守ることができて本当によかった」
と…やだぁ…かっこいい♡女子高にいたら確実にモテる女の子じゃん!
「アシュリカ…お疲れ様」
「嗚呼。ありがとうな」
労いの言葉をかけるリンにも笑顔で答えて頭をポンポンしている。
俺と性別交換してくれないかな…。
すると
「ふ…ふふふ…」
と何か粘っこい納豆みたいな笑い声が聞こえた。笑い声を発する方向を見るとグラセルがいる。何故か余裕の笑みを浮かべている。そんなグラセルにアシュリカは胡散臭そうな顔で…
「何がおかしいんだ」
「ふふふ…いや失礼。これで勝った気でいるのが面白くてね」
「何!?」
不敵な笑みを浮かべるグラセル。彼は立ち上がりそして…
「これからはしつこくは言い寄らない!だがな…街中で偶然会う事は仕方ないよな?」
「な…」
「そしてソーマたんの方から私に惚れ込むのもフェルナンド嬢の方が我ギルドに入りたいと言ったら仕方ないよな?」
前者は絶対ありませんのでご安心を!
「私は諦めないぞ!フェルナンド嬢という優秀な
それまでを楽しみにしておけ!あーはっはっはっ!」
まるでゲームの魔王みたいなセリフを吐きながらドタバタと走り去るグラセル。あ…転んだ。
「ねぇ?今失礼な事考えた?」
「何も」
「ふーん」
リンさん?目が怖いよ。ごめんよ。
「さーてでは皆んなでギルドに帰りましょ?ソーマきゅんの歓迎会もしたいしね!」
マスターはニコニコと手を合わせて声をかけてきた。
「え?か…歓迎会ですか?」
「当たり前よ!だって人手の少ないうちのギルドに入ってきてくれたんだもん♡
ただねぇ…今日はメンバーの四人ほど泊まりがけの依頼でいないから小規模なパーティになるけど…」
とそう言えば今日会ったメンバーはマスター入れて六人だけ。今日会ってないメンバーはまた後日ってわけか…。
「ふふふ…パーティ楽しみだね」
「そうだな。ソーマうちのギルドは確かに皆んな癖はあるが気の良い奴らばかりだ。仲良くしような?」
リンとアシュリカもノリノリだ。
俺たちは
「ふ…ふふふソーマたん♡ハァハァ♡」
と双眼鏡で除く変態がいるのは誰も気づかなかった話だったとか。
◇
空は暗くなり夜になっていた。今日は色々ありすぎて疲れた一日。
「どの世界も空は変わらないんだな…」
空を見ると自分のいた日本と同じような景色。夜の暗い色合いや輝く星や月。
そんな慣れ親しんだ光景が安心感をくれる。
「ソーマ?どうしたの?」
「ん?何でも無いよ」
そんな物思いに耽る俺にリンが心配そうに覗き込んでくる。すると
「ソーマきゅん!一人になって誘拐されたらどうするの?んもお心配だからお姉ちゃんと手繋ぎましょうね♡」
「ふえ?」
「はぁあん♡グローブ越しでも分かるわ♡冷たいけど柔らかい…それでいてこれから大人になり切ろうとゴツッとし始めた感じのこの感触♡ハァハァやばい興奮してきた」
マスターがすっ飛んできて俺の手を握る。マスターの爪には綺麗な黒ネイル。手は綺麗で細いし暖かい。
「マスター…ソーマにセクハラしないで下さい」
「セクハラじゃ無いわ!これは重要なコミュニケーションの一つよ♡」
「何をいってるんだか…後ギルドすごく距離近いんですよ?誘拐も何も起こりませんよ」
「わからないじゃない!だって現に変態野郎を魅了してるんだから!」
「……すみませんでした」
マスターの言い分にアシュリカは項垂れた。これには誰も反論できない。しかしあの人に気をつければ後は誰も俺なんか欲しがらないだろうし大丈夫だろう。
そんな話をしているといつの間にやらギルドに到着していた。
「さてさて!準備は整ってるはずよ♡」
「準備ですか?」
「ええ♡ココアと双子ちゃんに頼んでおいたもの♡ほらほら入って入って!」
そう言ってマスターは早速ギルドに入って行った。
「ハァ…ソーマ?皆んな君を歓迎しているぞ。さ!主役がいなければパーティは始まらんぞ」
それに続いてアシュリカも入って行った。そして
「ソーマ行こう」
リンが控えめに笑い俺の手を引っ張る。何かこういうの嬉しい…元の世界ならば俺はタライ回しされる厄介者だったから誰にも必要となんてされてないって肌で感じていたっけ…
なのに…この異世界は…
「ソーマ泣いてる?」
「泣いてない。大丈夫」
「そっか。でも泣きたい時は泣いて良いよ。お姉さんが胸を貸してあげる」
そう言ってリンが俺の手を握り
「それじゃあ行こう。改めまして…ようこそ。
リンは俺の手を引っ張りギルドの中に導いてくれた。
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