第15話 ゾンビフェチが現れた話聞く?

 ギルドから出て外に出た俺たち三人。


 「まずこのエンブレム。女神の愛子アテナ・ファミーユのシンボルであるこのマークが我がギルドの特徴だ。他のギルドと間違えるなよ?でないと面倒くさいことになるぞ」

 「めんどくさい事?」

 「基本ギルド同士は協力関係ではあるもののライバル関係でもあるからな。仲がいいかと言われれば微妙な感じなのだ。それに加えてお前はゾンビだしな」


 女神の愛子アテナ・ファミーユメンバーはゾンビに好意的だけど世間的には嫌われてる。特に注意すべきかもしれない。すると


 「おや?セレス嬢とフェルナンド嬢ではないか」

 と声が聞こえた。するとアシュリカがバッと俺を自分の背中に隠した。

 「え?あ…アシュリカさん?」

 「…静かに…いいか?絶対声を出すな。全く危険人物はマスターだけで充分なのに…」

 「え?はい」


 何故か小声で忠告された。リンの方を見るとリンはコミュ障を発症してアシュリカの腕にしがみついている。

 「これはこれは…"屍の館ネクロ・エデン"マスターであらせられる"グラセル・ファントム"殿ではないか」

 「ごきげんよう。セレス嬢…所でフェルナンド嬢はいつになれば我がギルドに入ってくださるですか?」

 「生憎だが、リンは我がギルドの大切な仲間だ。其方のギルドに渡す訳にはいかない」


 引き抜きの話か?俺はチラリと話している男の方を向いた。


 そこにいたのは白いローブの様なものを着用した男性である。見た所20代後半から30代に見える。


 髪の毛は紫のメッシュが入った白髪で長めの髪型だ。そしてその後ろには

 「(あれって…ゾンビなのか?)」

 その男の後ろには虚な赤い目をした人間が数人いる。男女それぞれ存在していて、女性の方のゾンビはメイド服。男性は執事服を着用している。


 そして恐らく傷があるだろう部分には包帯が巻かれていたり縫われたりしている。

 「ハハハ!フェルナンド嬢?私は君の能力を気に入ってるんだ。どうだい?君のお金の取り分を多くしてもいいんだよ?」

 「…ご…ごめんなさい…わ…私は今のギルドがす…好きなんです…」

 と震えながらアシュリカにしがみ付くリン。


 「本人もこう言っている。諦めてお帰り願おうか」

 「いーや!そうはいかな…むむ?」


 すると突然クンクンと匂いを嗅ぎ出したグラセル。すると途端に恍惚の表情になり 

 「ふ…ふふ…フェルナンド嬢?君新たなゾンビを生み出したんだね?この腐臭と鉄の匂い…ゾンビ特有の死の香り!ああ…何て堪らないんだ!是非拝見させてはくれないか!」


 と息を荒げるグラセル。え?俺姿見せてないけど…俺って匂うのかな…。そう思って自分の匂いを嗅ぐがサッパリわからない。

 「だ…誰もいない!ゾンビは生み出してない!」

 「そ…そうだぞ!早くお引き取り願おうか!…ていうか…え?気持ち悪…」


 二人は何故か俺の存在を否定している。アシュリカは顔を歪めて気持ち悪いと吐き捨てている。 バレるとやばいのだろうか…だが、グラセルは


 「ふ…ふふセレス嬢?後ろに何を隠してるのかな?」

 何かやたら粘っこい声で喋んなコイツ。何かゾワゾワする…。

 「何もいない!」

 「何もいないなら見せられるだろう?ほら!見せるのだ!」


 側から聞くと嫌がる女の子にセクハラする変質者みてーな会話だな。


 そんな風に呑気に考えてるとグラセルは無理やりアシュリカを押し除けた。は…?

 「みーつけたぁ♡ハァハァ♡君可愛いねぇ♡」

 と俺の顔を見てハァハァする変態。しかも俺より恐らく10以上の年上の男。マスターの時は怖かったけど我慢できたが…これは…


 「へ…え…」

 「ハァハァ♡…フェルナンド嬢!この子の名前は何て言うんだい!」

 「…教えたくないです…」

 

 いやこっわ…マスターの数百倍怖い。何コイツ。

 「え…えと…こんにちは…」

 俺は引き攣りながらも挨拶した。だって他のギルドとはいえマスターらしいし…失礼かなって…だが


 「バカ!」

 とアシュリカが俺の口を押さえて守るように抱きしめる。鎧硬いし何がバカなのだろうか…

 リンもあ…って顔で口を手で押さえて青い顔をしている。すると目の前のグラセルはプルプル震えた。そして


 「主の命令なしで喋っただと…な…なんて事だ!ハァハァ♡や…やっと見つけた!私の花嫁を!」

 「ひ…」


 は…花…嫁?

 「…このお方は冒険者ギルドの一つである"屍の館ネクロ・エデン"のマスターをしているグラセル・ファントム様だ。しかしこの人は…その…死体に興奮してしまうという性癖の持ち主なんだ…」

 は?死体…え…待って?


 俺=ゾンビ=死体。…やな予感が

 「ふふふ…ゾンビは素晴らしい。なんと言っても動く死体!そして従順かつ健気!これ程まで素晴らしい存在はあるのか!?それも歳を取らずに永遠に美しくいられるのだ!


 その反面…生きてる人間はダメだ。体があったかいのも気持ち悪いし、歳をとり醜くなる。

 そして脆い。一体何がいいのかまっ…たく分からん!


 ゾンビisビューティホー!ゾンビisマイラバァ!」


 と演説した。そして何故か俺の前に跪き

 「そして今日…この日…私は君と出会えた。まずゾンビであるだけでも素晴らしいのに自分の意思で動きそして喋る。

 そして大人にも子供にもなりきれない危ういバランスを永遠に保つ事ができる君…。


 君こそ我が運命の花嫁。ハァハァ♡是非私の花嫁となりイチャイチャしようではないか」


 キモいキモいキモいキモいキモい×100


 俺の頭の中がその言葉で埋め尽くされた。

 「え…あの…いやです…」

 「そこを何とか!」

 「お…俺アンタと会ったばかりですし…それに俺男だし…」

 「関係ない!寧ろそこがいい!」

 「いやぁぁぁぁあ!変態だぁぁぁあ!」


 グラセルは土下座している。その最中も鼻血を流して息を荒げている。いやいやいや……。

 はっきり断ってんのにすげぇしつこい…。まさか異世界で自分に対してハァハァ興奮する変態が二人もいるとは誰が想像できるんだ。


 「ほら!指輪も用意してきた!」

 「…その指輪はダメ…。つけると相手の洗脳下に置かれる。強制的に結婚させられる」

 「の…呪いのアイテム…」


 受け取る気はないがリンの言葉に更に冷や汗が出るし、何が怖いかっていうとそんなのを常に持ち歩いてる目の前の男の精神が1番怖い。


 「く…な…ならば!1時間だけでもいい!私のお膝に座ってくれ!そして

 "グラセル様♡大好き♡"と言って頬ズリしてくれ!」

 「いやだぁぁぁあ!アシュリカ姐さん!助けて!」

 「き…貴様!さっきから聞いてればうちの仲間に変な事を言うな!逃げるぞ二人とも!」


 アシュリカは両手に俺とリンを抱き込みダッシュした。早い…まるで風の様である。


 「わ…私のエンジェルちゃんが!く…お前達!私のエンジェルちゃんを探してきてくれ!」

 「御意…」

 因みにその頃グラセルが大量のゾンビの使用人に命令を下してるとは知る由もなかった。

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