第14話 仲が悪い双子の話聞く?

 アシュリカの後をついていくと掲示板の前で止まった。

 「此処に依頼が貼られている、基本的には大体8時ごろに更新されるぞ」

 と見てみると掲示板にはアイテム集めや、魔物討伐に賞金首の確保や、それらとはまた違う感じの依頼が並んでいる。


 「これ達成できない依頼があるとどうなるんですか?」

 「そうなるとその依頼は他のギルドに回るか町の掲示板に掲載されてフリーの冒険者が依頼を引き受ける形だな」

 確かにこのギルドはそもそも人が少ないし、全員が仕事で出払うとどうしようもないもんな…。


 すると

 「失礼…」

 とスーツ姿の男性が現れてペタペタと掲示板に依頼を張っていく。

 「丁度いいところに…おい"ジーニアス"新メンバーが加入したのだ。紹介させてくれ」

 「え?そうなんですか?」


 アシュリカがその男性に声をかける。その男性は大体20代くらいに見える。黒いビジネススーツとスラックスにワイシャツとネクタイ。そして黒い革靴を履いている。


 髪の毛はキラキラした金髪をピッシリと七三分けにセットされていてメガネを掛けている。

 その瞳の色は青空を閉じ込めた様に青い。体格の方は背はモデル並みに高く、そして細いインテリ風のイケメンである。


 「あ…えっとこの度新しく入りました。"ソーマ・シラヌイ"です。宜しくお願いします」

 「これはこれはご丁寧に。初めまして僕は"ジーニアス・グレイブ"。このギルドで事務をさせていただいてます。…所でソーマさん?」

 「はい?」


 ジーニアスは何故かガシリと俺の手を握り目を輝かせていた。

 「この度はこのギルドに加入していただき誠にありがとうございます!あなたがいればマスターの調子も鰻登り!仕事が更に楽になる予感しかしません!」

 「は…はぁ…」

 「そしてそして!我がギルドは女性が多いため、どうしても男性の意見が弱くなりがち。ですがあなたがいれば少なからず強化されるしマスターはきっとあなたの意見を採用する事でしょう!そして…」


 と鼻息荒く語るジーニアス。手痛いんですけど?

 「待て待て待て!ジーニアス!いきなり仕事の話を語るな。ソーマが困っているしついでにリンも頭を抑えているぞ」

 とアシュリカが注意する。みるとリンは頭から湯気を出して白目をむいている。


 「おっとこれは失礼いたしました。僕としたことが…これから入団されるにあたり事務手続きがあります。何かとお困りな事がございましたら遠慮せずお申しつけください」

 「はい。ありがとうございます」

 「いえいえ。仕事ですので、では僕は仕事があるので失礼いたします」


 そう言ってジーニアスさんは去っていった。

 「すまんな。アイツは仕事人間でな…。」

 「あはは…分かる気がしますよ。でも意外ですね…。俺ジーニアスさんみたいなタイプはゾンビ嫌いかなぁって思ってましたけど…」

 見た感じすごく清潔そうな見た目だ。ゾンビなんてあり得ないとか言いそうな見た目。けれど


 「ソーマ。その理論だと私もジーニアスに嫌われる」

 「え?あ…」

 「私が死霊操術しりょうそうじゅつ使えるのは皆んな知ってる。けど皆んな私の能力を受け入れてくれている。

 つまり私が使役するゾンビに対して嫌な事はしないし言わないから安心してほしい」


 そうだ。確かにゾンビが嫌いならばゾンビを生み出すリンがこのギルドにいるのはおかしい…すると


 「ひょわ!」

 俺の首の後ろに冷たい何かが押し付けられた。するとクスクスと笑う声が聞こえた。振り返ると


 「あれ?ジーニアスさん?」

 そこにいたのは先程去っていったジーニアスに見える。しかし体格は少し良くなっていて髪の毛は癖がありなんかチャラそう。

 服装もスーツではなく深い青緑を基調とした軽装と銀の胸当てを装着していて腰に短剣を携えている。そしてその手には恐らく俺の首に押しつけたのだろう。飲み物のビンが持たれていた。


 ジーニアスの名を出すと少し不機嫌そうな顔になる。

 「おいおい。俺をあんな堅物メガネと間違えんなよ。新人君。

 俺の名前は"ルーク・グレイブ"だ。盗賊してる。しっかし可愛い女の子来てくれたかなと思ってたらゾンビの男とはなぁ」


 とルークと名乗るその男は笑いながら俺に持ってきたビンを渡して、俺の両頬を軽くつまむ。何だこいつはいきなり人の頬を掴むな。

 「ひゃへへふははい!」

 「あはは!聞こえねえよ!」

 とゲラゲラ笑うルーク。すると


 「なにしてるんだ」

 とジーニアスがルークの頭を分厚い本で叩いた。するとルークは頭を抑えながらジーニアスを睨みつける。

 「いってーな!なにしやがる!」

 「いきなり新人をいじめるな。折角入ってくれたのに!」

 「いじめてませんけどぉ?可愛がってただけですぅ。まぁお前みたいなクソ眼鏡にはわっかんねぇかな?」


 とルークは舌を出して煽る煽る。ジーニアスの米神に青筋が浮かび始めている。しっかし二人は雰囲気が全然違うが見た目がほぼ瓜二つだ。え?もしかして…

 「お二人は双子なんですか?」

 と口を出すと喧嘩してる二人が一斉に俺に振り向いた。


 「そうだよ。すんげぇ不本意だけど俺とコイツは双子」

 「それは此方の台詞です。全く…。ソーマさん?良いですか。コイツといると碌な事がありませんので気を付けてください。貴重な同性の友人としてお互い協力しましょう」

 「はあ?おい新人。この腐れメガネは喋っても面白くねーぞ。まぁ俺は優しいからな…仕方ねーから俺がこのギルドのイロハを教えてやるし…何より貴重な同性のオトモダチだからな?

 お互い…二人で頑張ろうな?なぁ?」


 そう言ってまた二人はバチバチとお互い火花を散らして見つめあっている。仲悪いみたいだ。俺に対しては二人とも好意的ではあるけど…。

 「行くぞ」

 とアシュリカ。


 「え?放っておいていいんですか?」

 「いつもの事だし家族の問題だ。私達が干渉すべき問題ではなかろう」

 それもそうか…。

 「二人は仲悪い兄弟。けど根底はとても良く似ている。何かきっかけがあれば化けると思う」

 「うーんまぁ確かに…けどアシュリカさんの言う通り家族の問題に口出しするのは良くないしな…」


 リンは後ろをチラチラと心配そうに見ている。二人のいがみ合いをどうにかしたいのだろうが…俺もアシュリカ寄りの考え方。

 親戚たちも家族同士で仲悪いハズレ家族もあり、その時も干渉は良くないと学んだのだ。

 余計に抉られるかもだし、俺はあくまで他人なのでね。冷たいかもしれないけど。


 「そう言う事だ。今度は町の外を案内してやろう。ついてこい」

 俺とリンはアシュリカの後をついて行きギルドから脱出した。因みにルークが渡してきたビンは机の上に置いておいた。


 あと会ってないのは…四人くらいか?

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