第13話 癒し系受付嬢の話聞く?

 -sideソーマ(ソーマ視点に戻ります)

 俺が小っ恥ずかしい言葉を呟くとマスターは片腕を上げて親指を上げた。そして


 「最高」


 と呟き倒れた。その顔はとてつもなく幸せそうに微笑んでいて鼻血をドクドクと流している。え?…

 「マスター!」

 「大丈夫ですか?」

 呆然とする俺を他所にリンとアシュリカがマスターの元へ駆け寄った。

 俺も駆け寄ろうするがリンが俺に手をビシッと出して止めてきた。


 「ソーマはダメ。悪化する」

 「え…でも…」

 流石に放って置けない。だって今後頭部をガンって音がする勢いで打ってたし…て言うか頭から血出てるし…。だがそんな事でへこたれるマスターではない様で


 「ふ…ふふふ♡ソーマきゅんは優しいのね?天使さんかな?」

 「違います。ゾンビです…。あの頭大丈夫で…いやぁぁあ!」

 俺が言い終える前にマスターは真顔でまた鼻血を流した。


 「…ショタからの罵倒ありがとうございます」

 「え?あ…あの頭大丈夫ですかっていうのはあれですよ?頭から倒れてたからって意味で…」

 「あらそうなの?でも私にとってはご褒美でしかないわね。けどそうねぇ…頭は痛いしクラクラするわね…」

 と頭を押さえている。そりゃああんな派手に転べば誰だって痛い…でも何かあるとヤバいな…。


 「えと大丈夫ですか?」

 「大丈夫じゃないからソーマきゅん?責任持ってお姉ちゃんに添い寝してくれるかしら。ハァハァ♡そ…そうすれば治ると思うのよ♡

 そ….そして…これからは冒険者としてもありだけど…私と結婚もしくは専属の愛人でも…」

 

 その瞬間

 マスターはがくりと倒れた。その後ろにはアシュリカが立っていて倒れたマスターをゴミを見る目で見ていた。

 「自重して下さい」

 

 そう言ってすぐにマスターを担ぎ部屋の中にあるでかい天蓋てんがいのついた白いベッドに寝かせた。そして


 「それはそうとマスターの許可は降りた。ギルド内を案内してやろう」

 「あ…はい」

 「私もお供する」


 放っておいていいのだろうか…しかし他の二人は慣れた様子である。取り敢えずアシュリカに従う事にした。


 「そ…ソーマきゅん萌え♡」



 ◇



 「さっきも見たと思うが、ここがギルドだ。ただこのギルドは創設されたばかりで人は少ない。 マスターや私、リンを入れてもまだ十人ほどしか居ないんだ」

 

 アシュリカと俺、リンはギルドの二階から一階を見下ろしている。

 実はこのギルドとマスターの家は繋がっていて、ギルドの2階にマスターの家に続く廊下の扉があるんだ。


 そしてギルドは二階建てだけどほとんど吹き抜けであり一階が主な活動拠点の様である。

 「まずついてこい。下に降りるぞ」

 アシュリカの案内に従って階段を降りていく。そして降りた先には先程騒ぎのあった酒場があった。今はがらんとしていて静かである。


 「此処にはほぼ毎日の様に入団希望者がやってくる。恐らく人数が少ないから簡単に入れると見くびられているやもしれん」

 「後はマスター目当てかな。若くて美人なやり手のマスターを手に入れたい男の人もいる」

 マスターな…見た目はかなり美しいお姉様なんだけどざんねんなんだよなぁ…。


 とそんなリンとアシュリカの説明を聞いていると突然

 「あ…あの!さっきは有難うございました!」

 と女の子が駆け寄ってきた。さっき変なオッサンに絡まれてた女の子である。


 その娘は栗色の肩までの長さの髪をツインでハーフアップにしている可愛らしい少女だった。

 見た目も顔は小さくて目はクリクリと大きい。瞳はチョコレートみたいな色をしている。

 なんか小動物みたいな雰囲気がある。体も華奢でリン程ではないが小柄。そして…その…胸が…立派だ…。

 仕方ないじゃんだって健全な男の子だもん。


 そしてその服装は深い緑のロングワンピースに白いエプロンをしていて頭にはピンクのハート型の飾りをつけた茶色の三角巾を被っている。足には茶色のブーツと白い靴下という素朴な格好。


 …可愛い見た目…。このギルドマジで顔採用じゃないのか?しかしさっきのマスターが色々と衝撃的すぎて印象が少し薄い。


 「その先程は助けてくれたのにお礼を言いそびれてしまって…本当に助かりました。あの人毎回お酒飲むと暴走して…

 今日は他のメンバーがみんな仕事でいなかったから助けを呼べなくて…」

 とシュンとしている。


 「いつもは他のメンバーがいると助けてるんだがな。まぁ私としてはある意味メンバー選定の基準にもなってるから少し役立ってはいるが」

 「もう…アシュリカちゃんったら!あ…お名前言いそびれてました!私は"ココア・ミルティーユ"と申します。このギルドでは冒険者ではなくて受付嬢をしてるんですよ」


 とゆっくりした口調で自己紹介するココア。

 「俺は"ソーマ・シラヌイ"と言います。いえ…そんな礼なんて…」

 「ココア…ソーマは今日からこのギルドに入る。仲良くして上げてほしい」

 「本当!わぁ!よろしくお願いしますね」


 リンの言葉にココアは両手を合わせてニコニコ笑顔になる。

 「嫌じゃないんですか?ゾンビですけど」

 「そんな!恩人を嫌うなんてあり得ませんよ!あ…そうだ敬語は要りませんよ?ソーマ君見た感じ私と同じくらいに見えるし」

 

 出た…年齢の話…。ココアは一体何歳なんだ?

 「ならココアも敬語使わなくていいよ。俺は14歳だけどココアは?」

 「偶然!私も14歳なんだよ!うわぁ♡ちょっと嬉しいな」


 14…俺はその数字を聞いて隣にいるリンを見る。…年齢逆じゃないのか?

 リンは俺の視線に気づいて首を傾げている。

 「そっかそっか。これから宜しくねソーマ君」

 「ん。こちらこそ」

 「あ…それと14歳だとマスターの好みドストライクだから気をつけてね?」

 「あ…うん。それは知ってる」 


 ココアは忠告してくれたが悪いな。もう体験してる。

 「仲良くなってくれて何より」

 とアシュリカはうんうんと笑顔で頷いている。


 俺たちはココアと離れてギルド内の散策を再開した。いやというか俺このギルド入ってから出会った正式メンバー…なんかその…


 「アシュリカさん。ギルドのメンバー十人って言ってましたよね?マスターやココアとアシュリカさん、それにリン以外だと後六人ですけど…」

 「ん?それがどうした?」

 「いやその…さっきから女の人ばかりだなぁって…」


 そう見事に女性しかいない。なんならこの世界来て俺に好意的にしてくれた男がザックしかいない現状。後はみーんな女の子。

 するとアシュリカがふむと呟き

 「まぁ確かに女が多いな。けど安心しろ。勿論男もいる。まぁソーマ以外の男は二人しかいないがな」

 「え?二人?」

 「嗚呼、一人は冒険者でもう一人は事務をしている。二人は双子なんだ」

 

 双子…うーん。それだと何かもう二人で仲良くしてそうだな…俺が入る隙あるのか?

 「因みに二人はまだ15歳の時にマスターと出会ったんだって。それからそのままギルド入りした」

 「もしかしてマスターって男は好みで選んでる?」

 「そうじゃないかな?それにソーマぐらいの子で入団希望者が来てもすぐに泣いたり怯えたりして帰ってくるから」

 

 リンの説明を聞き理解した。男性入団者はほぼマスターの好みで決められている上に例え好みに入っててもマスターのあの挙動にビビり逃げ出す奴らがいるってわけだ。

 その結果男が少なくなってしまったらしい。


 「まぁ安心しろ。ギルドで困った事があれば私は勿論リンやココアにも聞いてくれ。

 …マスターに会う時は…一人で行くなよ?必ず他のやつに声かけてから行く様に」

 「あ…うん。肝に銘じておく」


 特に最後の言葉は胸に刻んだ。

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