第8話 美容師のお姉さんの話聞く?
フレイアに二階に連行されました。上に行くと一階と違って涼しい。内装と柔らかい色合いに植物がプラスされてお洒落で落ち着く空間だ。
それに何かいい匂いがする。
「ようこそ。"サロン・クリムゾン"へ。
まずいきなり連れ出してごめんなさい。ソーマさんの顔の色見てちょっと気になってしまって」
とフレイアは少し気まずい顔をして俺に謝罪する。そしてすぐに此処に座って下さいと俺を椅子に誘導する。
よく見る美容室の椅子。目の前に鏡がある。
しかしよく見ると
「うわぁ…顔やべぇ…」
まじまじと自分の顔を見る。顔の色は青くて夜に見たらビビる自信しかない。目は何か濁ってる気がするし、後首には大きな傷がある。
確かにこの見た目の人が歩いてたら、避けるかも…ゾンビでなくても何かキメてそうである。
「私は余り気にしませんが…ほら世間的にゾンビって余りいい印象持たれないでしょ?なのでゾンビってことを誤魔化せるようにメイクしようかと…」
「え!?そんな事できるんですか?」
「はい。ファンデーションや下地の色で調整すれば肌色は誤魔化せると思いますよ」
とニコリと微笑むフレイア。なんか少し安心だな。これならこの世界でも生きていけそう。
「じゃあその…お願いできますか?あ…でも俺手持ちが…」
「お気になさらないで下さい。私が勝手に連れてきたんですし。それと敬語もいりませんよ?」
「ん…それじゃあフレイア頼むよ。フレイアも俺に敬語使わなくていいよ?見た感じ俺よりお姉さんみたいだし」
「うん。了解!お姉さんに任せてね?ソーマ君」
と先程よりもニコニコと微笑むフレイア。なんか和む笑顔だなぁ…。フレイアは俺の前髪を固定して、メイク道具を取り出した。
「取り敢えず簡単に、まず下地から塗るね」
「ああ…でも赤くね?」
「いいのいいの。ファンデーション後で塗ればわかるから」
メイクなんかした事ないからわかんねぇけど…この下地は妙に赤い気がする。本当に大丈夫なのだろうか。フレイアは手袋をつけて俺の顔面にペタペタと赤い下地を塗る。俺の顔面は真っ赤である。
「そしてお次はファンデーション!」
今度はファンデーションを取り出してスポンジみたいなのにポフポフつけてそれを俺の顔面にポフポフする。すると
「お…おお!」
俺の肌が徐々に変化していく。さっきまで赤いその顔は生きてる人間と遜色ない顔色になってきた。
生前の俺の肌と恐らく近い色合いである。
「ソーマ君?包帯外してもいい?」
「え…んー…でも結構ショッキングな光景見ることになるから…」
「そう?なら包帯の下部分だけ外して、そこだけメイクしようか?そしたらまた包帯巻き直すから」
その言葉に了承するとフレイアは早速包帯を少し緩めて外側だけメイクし始めた。流石に人様に眼球のない目を見せるのは忍びない。
粗方終えるとフレイアは俺の包帯を元に戻してそして
「完成!」
「おお!すげえ!生き返ったみてぇ!」
フレイアのメイクが完成した。見てみると俺の顔面は生きてた頃のような血色のいい顔面になってる。首や手の色と比べると一目瞭然だ。
「良かった喜んでもらえて。首と手もする?」
「うん!頼むよ!」
フレイアは今度はボディクリームを取り出してきた。
「これね?ゾンビを使役するネクロマンサーの人が愛用してるの。街中でもゾンビを連れてける様に」
そう言って塗り塗りと俺の掌にクリームを塗り込む。手の方は顔面より劇的までいかないが少し明るい色になっていく。
「顔もこれでいけるの?」
「うーん顔だとこのクリームだけだと暗いかな?人って大体顔に注目するじゃない?手とか首は誤魔化しきくけど顔に塗るには不向きかな」
そう言いながら俺の首や手をさするフレイア。そして
「んで更に誤魔化し効かせるなら…」
俺の首に何やらアクセサリーをつけてきた。何だっけ?チョーカーだっけか?
黒いチョーカーを俺の首の傷が隠れる様に巻き付ける。
「後はグローブとかどうかな?お兄ちゃんがまだ小さい頃つけてた奴あるかも…」
そう言って一度部屋から出たフレイアだがすぐに戻ってきて、指部分が露出する黒いグローブを渡してきた。早速つけるとフィットする。
「お…おお…スゲェ」
俺は改めて自身の全身をみる。かなり仕上がっている。本当に生き返ったようだ。
「どう?」
「凄いよフレイア!さすがプロ!」
「ふふふ良かったぁ!これから困ったことがあったらいつでも言ってね?そうだ。簡単なメイク方法教えてあげるよ?このボディクリームとメイク道具もあげる」
そう言ってフレイアは俺にメイク道具とクリームを入れた黒いポーチをくれた。
「え!?いいの?こんなにもらって」
「いいのいいの。何せゾンビのお客様ってそもそもあんまり来ないもん。使ってくれた方がありがたいよ」
な…何てこった。兄妹そろって聖人じゃねーか!
「ありがとうフレイア」
「ふふ!では早速簡単なメイク方法教えてあげるね?」
「うっす!お願いします!先生!」
「よし!いい返事」
そう言ってフレイアからメイクの方法を教えてもらった。
◇
フレイア一通りメイクを教わり、俺とフレイアは一階に戻った。
「あ…おかえりソーマ。わぁ…」
リンはもちもちと頬を膨らませて何か食べてる。どうやらザックにお茶をご馳走になっていた様だ。
リンは俺の顔を見て目を見開いた。
「フレイアにメイクしてもらったんだ!どうだ?」
「凄い…まるで生きてる人間みたい。本当によく見ないとゾンビって分からないかも」
リンは俺の顔を見回して感心している。
「ふふ。これから街を安心して歩けるね」
「うん!フレイアありがとうな!」
フレイア頬に片手を添えてニコニコしている。マジで感謝しかない。後は町の人達の反応が気になるところである。
「しっかし…フレイア?お前許可貰ってから連れてけよな?お前の悪い癖だぞ?」
「む!成功したんだからいいじゃない」
「いやいや…」
とザックは少し複雑そうな顔をしている。
「悪い癖?」
「コイツさ?メイクが崩れてる奴とか髪の毛ぐちゃぐちゃになってる奴とか見ると無理やり連れてきてメイクやらヘアセットやらを施すやべぇ癖があんだよ。
この前なんてかなり怖がられて、警備隊呼ばれたじゃねーか」
え?こんな優しそうなお姉さんなのに?俺とそしてリンも同じことを思ってたのかフレイアをみる。フレイアは口は笑ってるが目は泳いでいて冷や汗をかいている。え?図星なの?
「や…やだなぁ…あはは…そんな事もあったね…」
「お前マジで治せよ?そんなんじゃ嫁に行けねぇぞ?」
「大きなお世話です!でも…治す様に頑張りますぅ…」
フレイアは肩を落としてトボトボと自身の美容室に戻って行った。するとリンが俺の服をくいくいと引っ張り。
「そろそろギルド行こ?」
と声をかけてきた。するとザックにも聞こえたのか
「お?そろそろ行くのか?あ!ソーマにもやるよ。ほらカエル饅頭。」
と俺の手に紙で包まれた何かを持たせてきた。
開くと紫色の生地をしたやたらファンシーなカエルの顔の形をした饅頭のようなもの。ゾンビって物食っていいのかな?リンは何も言わないけど…
少し気になり齧ると
「あま…」
中からはカスタードクリームみたいなのが出てきた。生地もふわふわしっとりしている。結構美味いかも。
「リンなんか五個ぐらい食ってたぞ?」
「お腹いっぱい」
リンはお腹をポンポン叩いて満足そうである。意外と食べるんだな。
取り敢えず俺は饅頭をすぐに平らげ包み紙をゴミ箱に捨てる。
「さて…そろそろ行きますか!」
「うん行こう」
「OK。ザックまたな!」
「おお!また明日ここにこいよ?」
俺とリンはザックに別れを告げてリンのギルドへと向かって歩き始めた。
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