第5話 初めてのボス戦の話聞く?

 目の前にいるのは巨大な死神のような魔物。黒いフードに下半身がモヤモヤした髑髏なのは同じだが…


 「あれは…」


 よく見ると化け物の胸の中心部…肋骨と肋骨の間に黒っぽい紫で怪しく光る石があった。

 「あれが私が依頼を受けた"魂喰の奇石ロスト・ソウル"だよ」

 「…だとすると…バトルは避けられねぇよ…な!」


 俺とリンが会話してるとそれを遮断する様に鎌を振り下ろしてきた。

 なんとかリンと俺はさけれたが…鎌がさっきの奴よりでかい。刃渡りも尋常でないため、さっきより避けるのが大変である。


 そんな中…

 「わわわ…」

 「ヒュハァアア!」

 リンが標的にされている。出会った時もそうだがリンは走るのが非常に遅い。一方の俺はまだ運動はできる方だ。


 「リン!」

 またもや化け物はリン目掛けて鎌を振る。俺は何とか化け物を追跡していたので、その瞬間にスピードを出してリンを抱えて避ける。


 …しっかし女子一人抱えるのも意外ときつい…。


 そんな中急に化け物が立ち止まった。

 「ん?どうしたんだ?」

 「やばい…」

 「え?」

 

 惚けている俺に対してリンの方は冷や汗を流している。化け物は鎌をぐるぐるとバトンの様に回している。するとその軌道を描く様に赤黒い如何にもヤバそうな魔法陣みたいなのが出てきた。


 次の瞬間リンを抱える俺の足元にその魔法陣が出現した。


 「ま…まさか…」

 「ソウルイーターの十八番…。即死の魔法!早く逃げ…わ!」

 咄嗟に俺はリンを投げ飛ばして魔法陣から離れさせた。


 次の瞬間

 「ぐわぁぁああ!」

 「ソーマ!」

 俺の体目掛けて地面の魔法陣から赤黒い光が襲いかかる。…死んでるはずなのにまるで心臓を握り潰されるような息苦しさと痛さ…。そんな俺の様子をリンは心配そうに見て手を伸ばす。


 そんな俺を嘲笑う様に化け物はじっと見ている。これから俺の魂を食べようとワクワクしているのだ。


 しかし一定時間すると光も魔法陣も消え失せた。そんな中魔法を食らっても立ってる俺。それを見てリンはほっとしていて、化け物はたじろいだ。



 「悪いな…



 俺もう死んでるから…」



 そう告げると化け物は声にならない叫びをあげて鎌を持って襲いかかる。…そうだよ…俺は何を怖がっていた。

 みんながこいつを恐れるのは…殺される可能性が高いから。だけど


 「それに怯えるのは生きてる奴の特権だもんな!」

 「ヒュギュアアア!」


 化け物の動きはさっきの個体より遅い。余裕で避けれる。地面に鎌が刺さった瞬間

 「リン!こいつの鎌を土で固めろ!」

 「うん!」


 リンはすぐさま地面に手をつき鎌を抜けない様に土で塞ぐ。化け物は鎌を取ろうとするが取れない。そして更にやけになり鎌に夢中になり出した。…俺でもわかる。今だ!


 「でりゃぁぁぁ!」

 「ヒュギュギァァァァ!」


 俺が振りかぶった剣が奴の体にクリーンヒットした。すると奴の体はシュンと音を立てて消え失せた。


 すると

 「わふ!」

 バサリと奴の着てたフードが俺の頭に降ってきた。そして更に

 「いて…」

 その上にコツンと何かが当たった。落ちたそれを拾うとそれは奴の胸にあったアイテムである。


 「…はぁ…」

 俺はヘナヘナと腰が抜けた。改めて思うとめっちゃ怖かった。そんな俺にリンがバタバタと駆け寄ってきた。

 「凄い…凄いよソーマ。依頼達成した!」

 「はは…そうだな。これでお前も狙いのカップゲットできんじゃん」

 「うん!」


 俺は取り敢えず得た石をリンに渡した。するとリンはすぐには受け取らずに何やら箱を取りだした。

 「それ直接触ると魂を吸われるから…」

 「あ…そうなのか。だけどゾンビである俺は死んでるから無効ってわけね」

 「そゆこと。察しがいい。あ…でもソウルイーターの布もとてもレア。思わぬ副産物。持って行こう」

 「嗚呼…所で次はどこに向かうんだ?」

 「この洞窟を入る前にソーマが見惚れてた草原。そこを抜けると依頼人がいるし、私の所属するギルドもある」


 そう言ってリンは俺に手を差し出した。


 「ソーマ…異世界から来たからこれから何すればいいか分からないと思う。だからギルドにいるマスターに相談してみよ?

 んとね何がいいたいかっていうと…


 これからよろしくね?ソーマ」


 とそう言って控えめな笑みを向けるリン。


 …そうだよ…確かに俺この世界で知り合いはリンしかいないし、家も何もない。それを考えるとリンの申し出は嬉しい。

 

 それに一人にしないって勢いとはいえ約束したもんな。

 

 「うん。こっちこそよろしくなリン」

 俺は一言そう言ってリンの手を握る。リンの手は冷たく抜けなって硬くなった俺の手と違い柔らかくて小さい。本当に普通の女の子の手だ。


 俺とリンはしばらく手を握り、微笑みあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る