第4話 初めてのバトルの話聞く?

 「…此処はね?その恐ろしさから"黄泉の入り口"って呼ばれてるけど正式には"プシュケー洞窟"っていって昔は鉱山だったんだ」

 「へぇ…もしかして壁に埋め込まれてるのも?」

 「うん。鉱夫達が狙ってた宝石。けど鉱夫達はこの洞窟に住むソウルイーターに皆殺しされて、それから夜な夜な鉱夫のうめき声が…」

 「突然ホラー話するのやめろよ…」


 俺とリンは早速洞窟に入った。中は確かに暗いがそこまで真っ暗!ってほどではない。

 「灯りをつけるとあっちに先手を打たれる可能性がある…」

 「マジか…ん?」


 俺は地面に刺さった剣を見つけた。

 「これは?」

 「多分ソウルイーターに挑んで儚く散った戦士の遺物」

 「先客がいたのか。けど何かに使えるかもだし有難く貰ってこう…」


 取り敢えず何も武器がない状態は不安だ。誰のか分からんが有難くお借りしよう…


 「正直…ソーマには期待してる。私の死霊操術しりょうそうじゅつで初めての大成功例だから」

 「え?でも得意っていってなかった?」

 「そもそも死霊を操るのは魔力がたくさん必要になる。できる人も限られる。それに加えてプロのネクロマンサーでも、動かすのが限界。

 ソーマみたいに自分で考えて動いて喋るゾンビそうそういない」

 「つまりリンが凄いってことか」

 「むふふ…もっと褒めていいんだよ?」


 どうやらリンはお調子者の様だ。俺はそんなお調子者の頭を軽くチョップした。



 ◇



 歩みを進めるとリンが突然立ち止まり俺の前に手を伸ばした。そしてシーっと指を立てて静かにしろとジェスチャーを送ってきた。

 「…いる。あれがソウルイーター」

 と…


 恐る恐るみるとそこには黒い頭巾を被った骸骨がいた。下半身は幽霊のようにモヤになっている。そして手には巨大な鎌を携えている。

 「…死神じゃん…あんなの…」

 その化け物を見た瞬間俺の体がビリビリと痺れた様な感じがした。


 死…それを予感させるような見た目である。

 「…あいつの鎌も確かに危険。けどあいつの魔法は人を即死させる効果がある」

 「…」

 見れば見るほど恐怖が優ってくる。あんなのと戦えというのか?


 俺はつい震えた。そもそも俺の世界にはあんな化け物なんていなかった。

 こういう時思う。どうしてアニメや漫画のキャラはああいう化け物に挑めるのかと…


 だって現に俺はまだ戦った訳でもないのに震えが止まらないのだ。冷たい汗が背中を流れる。そんな俺の様子を見たリンが俺の背中を撫でた。


 「…ソーマ…無理しなくていいよ?」

 「え?」

 「ソーマは別の世界…きっと平和な世界から来んだよね?魔法の必要のない世界から…」

 確かにその通りだ。だって戦う必要なんてなかったもん…。


 「いきなりあんなのと戦えって言われても…怖いよね?ごめん…私の配慮が足りなかった…」

 リンは優しく…それでいて震える手で俺の背中を撫でる。

 …さっきまで依頼の失敗を過度に恐れていたリンが俺なんかに優しく声をかける。


 「…」

 正直怖い。けど…

 「…約束…」

 「?」

 「約束しただろ?お前を一人になんかさせないって。…なぁリン?俺にはあいつの魔法効かないんだよな?」

 「うん理論的には…」

 「上等…」


 正直めっちゃ怖いがこのまま燻っても仕方ない。今は前に突き進むのみである。

 

 

 ◇



 「かはぁぁあ…」

 化け物は口をぽっかり開けて息を吐く。化け物は1匹。その顔目掛けてリンが炎を放つ。

 「!?」

 それに驚く化け物。化け物はすぐに殺気を出して炎の出所を探る。そんな化け物の前に俺は躍り出た。


 「…こっちだ!骨野郎!」

 「ひゅあああ!」

 化け物は不気味な声を発して俺に向かって飛んできた。そしてそのでかい鎌を振り下ろしてきた。


 「やべ!」

 俺は間一髪で避けた。動きはそれなり早いが避けられない速さではなさそうだ。

 しかし奴の振り下ろした鎌により地面に大きな亀裂が入った。それだけで威力がわかる。


 すぐに剣を持ち直して此方かも奴に近づく。

 しかし奴は鎌を振り回し、近づかせまいと動く。

 「…どういけば…」

 隙を探そうとするが奴は動きを止めない。その上に俺は戦闘素人。例え隙があっても見逃してるかもしれない。


 すると岩陰にいたリンも出てきて地面に手をついた。すると地面の砂が盛り上がり奴の振り回す鎌をピンポイントで吹っ飛ばした。

 「すげぇ!」

 「ヒュオウハ!?」

 奴の鎌が空中でクルクルと回る。


 「今だよ!ソーマ!」

 「OK!」

 鎌を取ろうと動く化け物に向かって俺は剣の刃を向けて走る。


 そして

 「ぐごああ!」

 奴はうめき声をあげて消滅した。俺の剣が見事に奴の腹を刺したらしい。しかし

 

 「何も出てない?」

 「ハズレみたいだね」

 どうやらお目当てのドロップ品は出なかったようだ。しかしそれよりも俺はドキドキともう動かない心臓を高鳴らせていた。


 「おれ…初めて戦った…」

 「うん。かっこよかったよ?」

 「えへへ…リンもすごかったよ。あの土の魔法」

 「あれも死霊操術しりょうそうじゅつの応用。土にいる微生物の死骸を一時的にゾンビ化させて土を巻き込んで操作した」


 とお互いにニヘニヘしながら褒めあっている。しかし可愛い女の子に褒められるのは気分がいい。しかも同年代の女の子にかっこいいなんて初めて言われた。


 しかし…俺はリンの背後にいる影に気づいた。

 「リン!危ない!」

 「え?きゃ!」

 俺はすぐさまリンの体を押し倒した。リンがいたところに深々と赤黒い血がこびりついた巨大な鎌が刺さっていた。


 「…でか…」

 みるとそいつの正体はさっきの奴よりサイズがでかいソウルイーターである。その鎌も血で濡れていて何人もの犠牲者がいたのだとわかる。


 「…多分親玉かもしれない。あの体の大きさは相当量の魂を食べている」

 「てことはもしかしてあいつが例の鉱物持ってるんじゃないのか!?」

 「かもしれない」


 こういうボス級の魔物がレアなアイテムを落とすと俺はRPGで学んでいる。リンもそう考えたらしくすぐに真剣な顔で杖を構えた。


 どうやら戦いはまだ続きそうだ。

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