第3話 ゾンビになったら片目が無かった話聞く?
「お…俺の目が!」
俺の右目がなくなった。いや正確には眼球がくり抜かれた様にぽっかりと穴が空いている。
試しに目に指を持っていくがなにも感じない。本当に何もないのだ。
「だからいった。私が発見した時にはもうなかった」
「マジかよ…内臓とか血どころか、目玉まで吹っ飛んだのかよ…」
何気にショックがでかい。ていうか折角の異世界転移なのにこれじゃあ何もできないじゃん。絶対他の人に怖がられるじゃん。
「ちょっとまってて」
「ん?わ!」
突然リンがゴソゴソとポケットを探り、中から白い包帯を取り出した。そして俺の後ろに回り込むとヨイショヨイショと声を出しながら俺の頭やら何やらをグルグルと巻き始めた。
そして
「これでよし。鏡見て?」
「おお…さっきより全然良い」
俺の右目がリンの巻いた包帯で隠された。…というかちょっとかっこいいかも…。しょうがないじゃん。だって中学2年生の14歳なのだもの。
因みに俺の気分が高揚してる理由はもう一つ。
「なぁ俺の左目何で赤いの?」
実は現在左目の黒目部分が赤くなっているのである。これもかっこいい!なんか力に目覚めた感じ?邪眼みたいな?
「それね…一応ソーマは私の使役するゾンビ。関係は主従」
「主従?もしかしてリンが主で俺が従ってこと?」
「うん。話が早くて助かる。魔法使いとかに使役されたゾンビや動物、魔物は目が赤く変色する。まぁ…生者でも生まれつき目が赤い人もいるけどね?
理由としては第三者の魔力を送り込まれるから遺伝子異常を起こすとか起こさないとか」
「最後わやわやしてるぅ…」
でも取り敢えず俺は自分がどういう状況なのか理解した。まだ色々わけわかんねぇけど…。
「それで?緊急事態ってなんだよ。お前さっき炎見せてくれたじゃん。それで何とかできないの?」
「無理。私が直接いくと死ぬ」
と言い出した。死ぬ?え?そんなやばい状況だったの?の割には…
「どこも危なそうに見えねぇけど…」
「それは今私達が安全な魔空間内にいるからだよ。待ってね?解除すると分かるかも」
そういうとリンは自身の背中に背負ってた紫の球をはめ込んだ杖を取り出した。すると周りの景色がまるでその杖に吸い込まれる様に歪んでいく。う…なんか気持ち悪い。
「はい。解除した」
「ん?んん…うわぁ…」
◇
リンの合図とともに目を開けたその先には広大な草原が広がっていた。草原をそよそよと風が走っていく。空は晴天。ただ広い青い空が広がるばかり。草原の先には町の様なものが見える。
こんな景色見た事ない…いや。日本にもあるかもしれないが少なくとも俺は見た事ない。
草原を鹿のような生き物が群れで走っていたり、見たことのない果物の生えた木。全てが俺を異世界という非現実的な空間に歓迎してくれてる様だ。
だがそんな感動してる俺の肩をリンがトントンと小さく叩いた。
「…ソーマそっちじゃない。こっち」
「へ?うわぁ…」
リンが指差した方向をみると…そこは洞窟だった。真っ暗に見えるが壁には紫の不思議な宝石の様なものが埋め込まれていてキラキラ光っている。
こういうの少しワクワクするな…。冒険心がくすぐられる。
「…私ね?依頼を受けて此処の洞窟に用があるの」
「依頼?それが今回の緊急事態に関係あるのか?」
聞き返すとリンはコクリと頷いた。
「実はその依頼をこなすにはこの洞窟にいる魔物を何匹か倒さなきゃいけない。狙うのはその魔物の体にできる超レアな鉱物"
「ふむふむ…」
ゲームでいうレアドロップ品か…
「ただ相手の魔物が曲者。魔物の名前は"ソウルイーター"」
…名前からしてやばそ…
「相手の魂を喰らうというSクラスの危険な魔物。魔法攻撃が効かないから気づかれない様に遠距離攻撃するのは難しい。
物理しか効かない。何よりソウルイーターの放つ技を喰らうと…その人は即死する」
なるほどね…ザ◯系の魔法使うのね?なるほどなるほど…
「って!かなりやばいじゃん!何で受けたんだよ!そんなの!」
「報酬の"ドクハキガエルの限定カップ"が魅力的だから」
「カップ!?まさかの?!命懸けちゃうの?カップに!?」
いやいや命を軽く見積りすぎじゃねーか。
「今更断れない。なんか罪悪感で死にたくなるのを回避したい」
リンも後悔してるのか俯いている。
「ゾンビならもう死んでるからあいつの魔法は効かない。だからゾンビを欲していた」
「けど俺戦ったことねーよ?」
「…だよね…」
リンは更に落ち込み始めた。
「だってこんな危険な場所なら死体がゴロゴロ転がってると思ったんだもん…」
「何て物騒な思惑…」
俺はリンの計画性の無さに少し頭が痛くなり始めた。しかしリンは杖をギュッと握りそして少し震えていた。
「…どうしよ…失敗して追い出されたら…私の居場所がまたなくなる…やだ…そんなのやだ…」
「リン?」
「やだ…やだよぉ…一人になりたくない…」
リンは段々と力が抜けていきそしてポタポタと涙を流し始めた。何やら訳ありのようである。
出会ったばかりの少女だが…その背中が更に小さく見えて消えてしまいそうだ。
だからだろうか俺はつい
「大丈夫。リンは一人じゃない!俺がいる!」
「え?」
「俺が何とかしてやるから!な?」
と宣言してしまった。戦い素人のくせにね…。
しかし俺の言葉にリンの涙が止まった。
「…本当に私を一人にしない?」
「ああ」
「本当?」
「本当」
「約束してくれる?」
「するよ。ほら!」
そういって俺が右手の小指を出すとリンも小指をだして俺の小指に絡めた。どうやらこの世界にも指切りという概念があるようだ。
「約束」
「うん…約束」
リンは安心したようにそして確認する様に約束と呟いていた。
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