始まりの夜明け-デイブレイク-
第1話 初対面の女の子に逃げられた話する?
-side蒼馬(蒼馬視点)
…なんか寒い…。もしかして此処があの世なのか?
「うーん…?何処だここ…」
目を開けるとそこは見た事のない部屋だった。はげかかった黒い壁には何かの頭蓋骨のオブジェや蝋燭が飾られている。部屋の中は薄暗い。どうやら窓を黒いボロボロのカーテンで閉めているようだ。
床には何かの儀式でもしたのか疑いたくなる様な魔法陣みたいな図形が書かれていて、これも周辺に蝋燭が灯されている。
そしてインテリアの殆ども髑髏などの骨モチーフだったり、なんかキモい紫色の蛙のぬいぐるみが置かれていたりと、この部屋の持ち主のセンスを疑いたくなるデザインである。
しかも俺が寝てた所はベットでも敷布団でもなくよく見たら蓋のない棺桶である。
「死後の世界って…こんなセンスのやばい奴らがいんのか…。俺やってけるかな…」
なんてぼやきながら棺桶から出ようと立ち上がりそして歩こうとすると
「うわ!」
俺は見事に棺桶の縁に足をかけてしまいすっ転んだ。
…言っとくけど俺は別にドジじゃないし…。
ただ…何となくこう…目が見えにくいというか方向感覚や距離感が掴みにくい。何だろこの感じ。…だから言い訳じゃないってば!
そんな転んだ音に反応したのか部屋のドアが少し開いた。え…人いんの?
「誰かいるんですか?あのぉ…俺もしかして死んじゃったんでしょうか?」
俺はドアの向こうに声をかける。すると
「ひ!」
という引き攣る声が聞こえた。声の感じは女性の様である。俺がドアに向かおうとするとドアの向こうでドタバタと走る音が聞こえた。
あれ?もしかして逃げられてる?
「待ってくれ!」
俺はすぐにドアを開いてその女性を追っかける。しかし
「…えぇ…走るのおっそ…」
女性は走るスピードが極端に遅い。恐らく俺が今まで見てきた中で1番遅い。
方向感覚も距離感もズレている俺でも難なく捕まえる事ができた。
「待って!頼むからこの状況を教えてくれ!」
腕を掴むと女性は振り返った。
その女性…いや少女は俺と同じか年下ぐらいに見えるあどけない顔をしていた。髪型はツンツンとした猫毛のショートヘア。頭の左右から髪の毛が猫耳みたいにツンと立っている。
前髪を止めるヘアピンには紫のカエルのマスコットが付いている。
その顔は小さく肌も雪みたいに白い。眠たそうな目をしていて瞼が半分降りている。
瞳は月のような金色であり不思議な色合い。
体型は小柄でありスレンダーだ。
服装は頭には蛙の顔がデカデカと描かれた魔女が被るようなとんがり帽子をかぶっていて、
黒いコートを着用している。中には紫と黒のインナーと黒いショートパンツをあわせている。
足は黒地に紫の靴紐のついたブーツと、紫と黒の縞々柄をしたニーハイを履いている。
そんな少女は何やら目を怯えてるかの様に揺らしている。流石に怖がらせたかなと思い手を緩める。
「ごめんって!でも俺よく今の状況分からないんだ!頼む!変なことしないから此処が何処なのか教えてくれ!」
「…ふ…服着てない人に言われても…」
「え…」
少女の言葉に自分の体を見る。…え…
「俺の服は?」
何故か俺はパンツ一丁になっていた。これではまるで俺がか弱い女の子を襲おうとしている変態に見える。…まぁそれも心配だけど
「(なんか…今俺の体おかしくね?)」
なんかやけに青白いし…あと体にすげぇ縫い目みたいなの見えた。特に腹とか…
呆然とする俺を少女はじっと見つめてくる。
それに我に帰った。考えたらこの状況を第三者に見られたら確実にやばいのは俺の方だ。
「これは違うんだ!俺もよく分からん状況だし!服も自分で脱いだ訳じゃないんだ!だから俺は決して変態じゃないのでお願いですから警察だけは呼ばないで下さい!お願いします!」
と少女の腕を離して日本の伝統"土下座"を繰り出した。
「ご…ご…ごめんなさい…。そ…そんな事させるつもりなかった…ごめんなさい!」
と何故か少女は土下座する俺の目の前で土下座し始めた。土下座してる男女の向かい合わせとか中々見ない光景であろう。
俺たちの間で謝罪リレーが開始された。
「ごめんなさい!」
「すみませんでした!」
「変態じゃないんです!」
「失礼な事言ってすみません!」
と無限に続く。埒が空かない。
「あー…えっとこれじゃあいつまでも終わんないからここでお互い謝るのやめ!」
「あ…うん…」
「まず君の名前は?」
「…り…リン・フェルナンド…と申します…」
リン・フェルナンド?なんか外国の名前みたいだ。の割に日本語が通じてるけど…。
「リンか…俺はし…いや…ソーマ・シラヌイ。よろしくな」
「はい…」
「……」
「……」
挨拶したはいいがその後すぐにシーンと静かになる。さっきからリンと目が合わない。というか彼女は俯いていてなんかオドオドしている。
「なぁリン。此処はなんて言う場所だ?」
「あ!はい…えと此処は私の作り出したその…
と
「
「ひ!ごめんなさい!ごめんなさい!不快な思いをさせてごめんなさい!」
「いや…違うからただ
やばい…なんか話が上手く続かない…というかこの子めっちゃビクビクしてるし…俺がこんな格好してるからというのもあるだろうけど…もしかして
「…君もしかしてコミュ障だったりする?」
「ぐは!」
俺の言葉を受けたリンは血反吐を吐いて倒れた。
「な…何故それを…」
「いや…見てれば分かる」
「うう…確かに私は初対面の人が怖いし、知ってる人でも1週間以上会わないと関係リセットさせちゃうし…。何なら話したら相手に嫌われるって言う前提で生きてるけど…」
リンはシクシクと四つん這いになり涙を流している。
「顔上げろよ。俺はお前と話してて嫌いになってないから」
少し…うざいっちゃうざかったけども…。
「本当?」
「本当。ていうか寧ろ俺は今の状況に混乱してるからさ。リンが俺と話してくれると凄い安心するよ?」
俺は精一杯のスマイルをリンに向ける。するとリンはぱーっと晴れやかな顔になった。
「私と話すと安心する?」
「ああ…今俺の周り知り合いいないしお前がいてくれた方がいいな」
「そっか…そっか!ムフフ」
リンは猫耳みたいな髪の毛を…どうやってんだろ?なんかぴこぴこ揺らしている。そして何やら控え目ながらニヨニヨと上機嫌である。
どうやら少し慣れてくれたようだ。俺は早速リンに事情を聞く事にした。
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