伝説を求めて、そう西へ向かえ

第6話 伝説は西に

「西に行くと伝説の国? があって、願いが何でも叶うらしいよ」

 お嬢さんからの情報。


「へーそりゃ。詳細は分かるのか?」

「今は失われた魔法大国とか? なんだか、ちょっとした失敗があって。世界中から人が消えたとか言う伝説があるのよね」

「なんだ? その物騒な。ちょっとした失敗って一体?」

「さあっ?」


 そう言って彼女は、俺の胸に顎を乗せて嬉しそうに笑う。


 それと、横でふてくされている、あや。



 まだ、戦場の情報が届いていないうちに、彼女と会いに来た。

 逃げるにしたって俺達は何も持っていない。

 馬具と、路銀。

 そして、情報が欲しい。


 そのために、そう…… 仕方なくエレオノーラを頼ったのだが。

「来ると思っていたわ」

 そう言って、俺の工具や服など。

 そして、あやの分まで、荷造りがされていた。


 家紋のない、一見地味そうな馬車。

 武器や、宿泊道具、そして食料まで。


「さあ、シュッパーツ」

 手引きして貰い、夜中に、こそこそと門を出たとたんに、叫びやがった。

「バカだろお前」

 外を眺めるが、手引きをした者しか姿が見えない。


 手引きをしたのは、彼女のじいさん。

 公爵様。

「この国は、もうだめじゃ」

 そう言って、彼は彼女を逃がした。

 と言う事は、近いうちに政変でも起こすという事だろう。


 残った奴らは、大丈夫だろうか?

 まさか、のこのこと王都に戻ったりは……


 それはさておき、王城の馬でも、馬は馬。

 夜に馬車は目立つし、色々な面で危ない。


 馬は目がよく、夜目も利くらしいが……

 いや、馬の夜目よめと言っても、前後足の関節付近にある角質のような部分。

 えーと、親指が退化したものではないかと言われているところ、学名としては附蝉ふぜんと言われている……

 そんなマニアックな話じゃなく、本当に暗いところで、見えるか見えないかという話し。

 馬単体なら夜でも目が見えるらしいが、四頭引きの馬車。夜中に走り回るのは危なすぎる。


 野犬とか、狼とか熊とか野良ゴブリンとか色々いるんだよ。

 そのため、ある程度離れたところで、休憩をさせる。

 馬車の中はある程度広いが、荷物もあるし、三人が悠々というわけにはいかない。

 そして、お姫様はなぜか俺の上に乗ってきたのだ。


 いや、そんな色気のある行為はしていない。


 ただまあ、色々と情報をくれながら俺の胸をすりすりしたり、指をくわえてきたり、軽くキスをしてきたり。

「だめえ。おとなしく寝なさいよ」

 横で、我慢が出来なくなったのか、あやが叫ぶ。


「えー。城を出ると決まったときに覚悟をしたのに。王家としての純潔は絶対。もう一緒に来からには、失う覚悟はできているわ。しなくとも事実は残る。好きにせよって」


「ああ、男と城を出たら、事実はどうあれ、純潔は失ったものとみられるんだな」

「そう。だから、思われるなら、事実があっても同じでしょ。黒髪と黒目、とっても綺麗。子どもを作りましょ」

「それは、生活が安定してからの話だろう」

 色々考える。

 横で睨んでいる、目が無ければ……


「えー」

 そう言ってむくれる姫様。

 断らずに、ごまかした俺にむくれるあや。


「寝るぞ」

 そうは言ったが、周囲に五人。いや、離れて別働隊も五人くらい居るな。


 つい、馬車を揺らすとどんな反応を返すのか気になったが、今はおとなしくした。


 夜が明けてから、なんとか無事に出発。数週間掛けて隣国との国境付近。

 こっち側とあっち側。両側の関所で金を取られる。


 俺とあやで夫婦。

 姫様は娘という設定。

 この世界、色々と常識が無いから、黒髪黒目の夫婦で金髪の娘でも問題ない様だ。

 いや。養子と思われたか、それとも、あやの浮気と思われたのか??


 とにかく、問題なくソドムート王国を出て、インダストリアパトリア王国へと入れた。

 ここは工業が進んだ国らしい。


 この国境の周囲は、ソドムート王国がうろうろするので、街道を外れると罠が仕掛けられているようだ。くれぐれも道から外れるなと言われた。


 その時に兵が指さした先には、元人間だった物が、尻から串刺しになっていくつか地面から生えていた。

 見ただけできゅっとなる。


「うわあ。あれは嫌ね」

 皆同意見のようだ。


 俺のは粗品だから、貫いても安全だぞ。

 言葉には出してないのに、あやに頭をなでられた。

 なぜだ。


 そうして、初めての国外??

 いや密入国があった。

 俺達にとって三カ国目に突入した。



 そうは言っても、田舎では麦畑などが広がる。

 地球と違って、工業だけ、食料は海外からなどと言うことは出来ない。

 何かがあれば、すぐに兵糧攻めを喰らってしまう。


 基本物騒なんだよ。

 ほら…… 兵がいるところから、ちょっと離れたらすぐ盗賊。


 向こうじゃ、結構な人数が先に盗賊退治をしてくれたが、他国だから見張りくらいしか付いてきていないな。


 やだやだ。


 一応今は俺が、御者をしている。


 ざっと二〇人くらい。

 道の両側で、武器を片手に、にまにましている。

 スピードを落とすわけにはいかないから、そのまま行くが、この先、大体道路に倒木があるんだよ。


 盗賊さんに見守られながら、突っ込み、一〇メートル先で寝転がっている木が爆散をする。


 よせるのが面倒だし、魔法の方が楽。

 盗賊さん達あわてているが、くるんかい……

 ああ、気分が滅入る……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る