第34話
そしてそのまま転がるように体を建物の外へ放り出した。
落ちて行く。
耳が風を切る音に耳を澄ましてその時を待った。
目を瞑って。
ただ待った。
すると、ふと氷のような感覚に体が包まれた。
目を開けて顔を上げたらそこに彼がいた困ったような表情にすこし潤んだ瞳で私を見ている。
「君は…。悪い子だ…」
耳元で優しい声が囁いた。
その瞬間風の音が消えた。
「…ただいま」
悪びれず私は彼に向けて声をかけた。
もう落ちていないけど、彼は私をまだ抱きしめていてくれた。
両手足に感覚が戻り体が元通りになっていることに気がついた。
「はぁ。おかえりっていうと思うかい?
お馬鹿さんだな。
弟君の件は天国がまだ猶予してくれたかもしれないのに…。
だって自分の身を守るとっさの判断に罪はないからね。
…でも自殺は大罪だ」
言葉とは裏腹に優しく頭を撫でてくれる。
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