第33話
車椅子用のボタンを顎で必死に押した。
汗まみれになった体と全身に走る激痛。
でもそんな事どうだっていい。
エレベーターが妙に遅い気がした。
扉が開いたがそこには重たそうな扉があった。
鍵がかかっていた。
口を使って鍵と捻るのはとても時間がかかった。
冷たい鉄の扉が彼との口付けをふと思い起こさせた。
二回目のキスがまさか屋上扉の鍵になるなんて。
やっと開いた鍵。
顎でノブを下げると勢いよく開いたドアから体が放り出されて転んでしまった。
私は這いつくばるようにして屋根の淵まで芋虫のように向かった。
考えてみれば転がった方がきっと早く、楽だっただろう。
総合病院らしいそこは強い風が吹き荒れていた。
そして私は縁に仰向けになって夜空を見上げた。
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