第29話

たったの1秒で私は罪を犯した。

衝突の瞬間弟の体を引っ張って自分を庇うように盾にした。


スローモーションのような感覚がする。


弟の頭部が目の前で潰れるのが見える。


手のひらがその潰れゆく頭蓋骨のバキバキ鳴る感覚を伝ってくる。

私の腕が弟の脳を突き抜ける感覚。


それを支える自分の両腕が視界の中でぐちゃぐちゃにつぶれていく。

ボキボキと嫌な感覚が全身に伝わってくる。

不思議と痛みは感じない。



これが罪になりますように!



私は人を殺した!

私は弟を殺した!

殺した!

罪人!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る