第23話

彼は信じられないというような顔だった。

だが先程よりは冷静だった。


「本当に僕を愛してくれてるの?」


私の愛が本当だったから、また消えそうになったって事?


「待って消えないで!」


私は必死だった。

どうこうできるわけでもないのに懇願するように気がつけば叫んでいた。


「君を思って消えられるなら一生無意味に地獄に居るよりよっぽど幸せだよ」


彼は妙に冷静だったけど、表情がこわばっている。


「でも大丈夫、消えないよ。

こんな程度じゃ消えられない…はずだよ。

ただ困ったな。どうやらプライバシーがあるとはいえ、上の偉い方々にはどうやら見つかっちゃったみたいだね。

僕は消えないけど、僕のミスは見つかっちゃったみたい。

きっと減給されちゃうなぁ」


え?見つかった?

それってひょっとして現世に戻されるってことだよね…。


「そ、それって。貴方ともうお別れってこと?私たちどうなっちゃうの?貴方は本当に減給だけ?また強がってる?

だって!だってあなたいったじゃない見つかったら引き裂かれて焼かれてとか…」


慌てる私に彼は落ち着いて声をかけてくれる。


「安心しなよ。もう堂々と正面から門を通って現世に戻れるだけだよ。送っていくね。弟くん起こそうか」


彼が立ち上がって弟の方へ向かおうとした。

気がつけば私は彼の袖を引いて止めていた。


その行動に彼は出会ってから一番驚いたような表情を見せた。

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