第22話
酷い。
私の言葉、そんなに信用できないなんて。
「貴方は自分が人を騙す癖がつきすぎて、人を信用する事ができなくなってしまったのね。私は嘘はついてないよ」
本当だった。
「そうじゃない。今僕が好きでも、君は天国に行くんだよ?忘れた?
そうすればここでの記憶は消えるんだから」
それは…。
「私が記憶を消してもらう事を拒んだら?」
試すように彼の目を見据えて言葉を紡いでみた。
「そんな事…しちゃいけない。地獄に行っちゃった記憶なんて、文字通り悪夢だ。消してもらえ」
命令するような口調だったが優しさが溢れていた。
「そんなの…私の自由じゃない。悪夢なんかじゃなかった。どうせ私の人生はもう終わるんだからこの思い出だけは忘れたくない」
涙が出そうだった。
「君は僕に消えて欲しいの?
ハハハ。これ以上君を愛してしまったら本当に僕は君を自分のものにしたくなるじゃないか。
そうなれば僕は確実に消えちゃう」
そうは言ったが、彼は私をどうこうしようとする気はないようだ。
むしろ私から距離をとっているように見える。
これ以上私に触れないように抑えているような。
「消えてほしくないよ。でも一緒に消えたいと伝えたら私も愛していること信じてもらえるかと思って…」
伝えてどうしようってわけではなかった。
ただ伝えたい。
それだけだった。
彼が人間に憧れたように。
幸せな気持ちを彼にも感じて欲しいと願っただけ…。
きっと彼の悲しい目がもうみたくないという私の我儘なのだろうか。
「嘘はよくないよ。優しい嘘は…もっと。
苦しいぐらいなら消えてしまった方がいいから」
彼は本当に私の言葉を信じていないようだ。
でも、その瞬間彼はまた身震いした。
「大丈夫?!」
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