第21話
その言葉に頭がグルグルした。
彼今、消えそうになったって言ったの?
それって今…彼、幸せだったの?
私を愛しているの?
かける言葉が出てこない。
「…あ。あの。大丈夫…?」
それが精一杯だった。
「あ?え?大丈夫!大丈夫!
笑っちゃうかもしれないけど、どうやら僕本当に君が好きみたい。
…どうせ信じないんだろうけど」
最後の言葉だけ落乱が滲んでいる。
でも何故だろう、今なら信じられる気がする。
「どうして…。だって貴方言ったじゃない。
私は貴方の長い時間の中の一瞬の瞬きでしかないって」
彼の言葉を思い出しながら私が言葉を紡いだ。
「そうだな、そしてこうとも言った、その一瞬の瞬きが僕にとっては、とても眩しくて美しいと感じることも事実なんだよってね。君ははぐらかしたけどね」
本当に彼はさっき異常だった。
消えそうになったことは嘘ではないのだろう。
信じるに値する。
でも、信じれば信じたでさらに締め付けられる心の苦しみが私を襲った。
「…あ、あのね…。一緒に消えられるなら幸せかもしれないよ?」
必死に絞り出した言葉は少し安っぽかった。
「消えるのは僕だけだから心配いらないよ。そんなことは心配しないでね。
でももし君も僕を愛してくれていたら悲劇だね、僕が消えたら君を一人にしてしまうから」
そんな…。
「私も愛していると言えば私も消えちゃう?」
「消えないよ。安心して、君はまだ若い。
不思議な体験してしまった今、君が僕を愛しているような気になっているのは勘違いだからさ」
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