第19話

「さっきのキスで僕に懸想した結果、完全に僕の虜になっちゃったわけだ?」


悪魔は私の項垂れた顔を覗き込みながら問うた。


「ファーストキスが貴方でよかった。

でももうほとんど死んでるからノーカウントかな?

ならもういいや。私どうなってもいいから弟だけでも天国に行かせてあげたい」


少し自分でも驚いたけど、正直すぎる自分に驚いた。

初恋が悪魔か、変な人生だったな。

でもそんな人いないだろうし面白かった…。


「ちょっとちょっと。どうしちゃったの?さっきまでの威勢はどこ言ったのさ、僕に突っかかってきたりするのやめちゃうの?

がっかりだなぁ。そう素直だとからかい概がないなぁ」


私を茶化す悪魔の声。

でもわかる。

本当は優しいことも。


「貴方本当はとても優しいよね」


「どうかな?君がそう思いたいなら自由だけど、忘れないでね、僕は悪魔だよ」


ほらそうやって、強がってる。

人間に憧れて、愛する事も、幸せになる事も許されない。

この人はもっと幸せになるべきだ。


「貴方はもっと幸せになるべきだと思う。神に愛されなくても、誰かを愛したり、愛される事ぐらい許されてもいいと思う」


下を向いて私はつぶやいた。


「優しいのは君じゃないか。悪魔にそんな慈悲を与えるなんて地獄に堕ちちゃうよ」


彼がまた私へ近寄ってきた。

でも今度はゆっくりと、私が怯えないようにしているように感じた。

そしてゆっくり抱き締めてくれた。

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