第19話
「さっきのキスで僕に懸想した結果、完全に僕の虜になっちゃったわけだ?」
悪魔は私の項垂れた顔を覗き込みながら問うた。
「ファーストキスが貴方でよかった。
でももうほとんど死んでるからノーカウントかな?
ならもういいや。私どうなってもいいから弟だけでも天国に行かせてあげたい」
少し自分でも驚いたけど、正直すぎる自分に驚いた。
初恋が悪魔か、変な人生だったな。
でもそんな人いないだろうし面白かった…。
「ちょっとちょっと。どうしちゃったの?さっきまでの威勢はどこ言ったのさ、僕に突っかかってきたりするのやめちゃうの?
がっかりだなぁ。そう素直だとからかい概がないなぁ」
私を茶化す悪魔の声。
でもわかる。
本当は優しいことも。
「貴方本当はとても優しいよね」
「どうかな?君がそう思いたいなら自由だけど、忘れないでね、僕は悪魔だよ」
ほらそうやって、強がってる。
人間に憧れて、愛する事も、幸せになる事も許されない。
この人はもっと幸せになるべきだ。
「貴方はもっと幸せになるべきだと思う。神に愛されなくても、誰かを愛したり、愛される事ぐらい許されてもいいと思う」
下を向いて私はつぶやいた。
「優しいのは君じゃないか。悪魔にそんな慈悲を与えるなんて地獄に堕ちちゃうよ」
彼がまた私へ近寄ってきた。
でも今度はゆっくりと、私が怯えないようにしているように感じた。
そしてゆっくり抱き締めてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます