第18話
「坊や。安心なさい。こちらにきて温かいベッドでゆっくりおやすみなさい?
何も心配することないわよ?」
悪魔が助け舟を出した。
その言葉に弟は私の顔を見てどうすべきかを促してきたので、私はコクンと頷いた。
その頷きに弟は安心したようにまたベッドの傍の悪魔の方へ向かった。
私は少し離れたところから悪魔が弟を寝かしつけるところをただ何もせず見ていただけだった。
弟はあっという間に眠った。
「悪魔は天使よりできることは少ないけど、このくらいならできるよ」
弟がすぐに寝たのはそういうことなのであろう。
「それにしても君も大概な嘘つきだね。
いい悪魔になれるかもしれないね」
彼は意地悪くそう言ってきたが、私の方を見てこない。
「だって…弟に怖い思いはさせたくないし、理解できない事もあるんだから仕方ないじゃない」
何故か必死に弁解する自分がいる。
「まぁまぁ落ち着いて。別に君を虐めたかったわけじゃないんだよ。
ただちょっと思ったから、人間は相手を思ってならば嘘も許されるんだなって思ってさっ」
い、嫌味?
なんでそんな事言われなきゃいけないのよ。
「人間かぁ。つくづく羨ましい生き物だね。僕がもし人間だったら…」
あれ?がっかりしてる?
「ねぇ。人間になれないの?悪魔って…」
「なれるなら悪魔なんて存在しないと思わない?」
彼はやっと私の目を見てにこりと笑った。
少し悲しげな目だ。
「私貴方のその悲しい顔好きじゃない…」
消えそうな小さい声だったけど私は絞り出すようにそう告げた。
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