第13話

「私、地獄に残る」


「ほらねやっぱり僕に気がある」


悪魔は手近な椅子に座ると額を抑えながら上の空でつぶやいた。


その言葉に私は語気を強く言い返す。


「だから!そうじゃなくて。

私が犠牲になるから、その間に弟を連れて逃げて、私が騒ぎを起こせばその隙に貴方なら何とかなるでしょ?」


悪魔の眉がピクリと動いたがあまり表情は読めない。


「で?それで君はどうなってもいいって?

その後どうするの?僕に愛されるとでも思ってるの?

タイプの男とずっと一緒にいられるとでも?」


冷やかすような声だ。


「違うわよ。弟はまだ10歳になったところだよ」


「君だってまだ16だ」

被せるように悪魔が嘲笑した。


「もう16よ!」


「僕は2000歳を超えてるんだけどそれでも16歳を誇れる?」


「おじいちゃんなんだね…。

まぁいいや。じゃあどうやって私達二人を現世に戻せるっていうの?無理があるんじゃない?」


私の言葉が聞こえていないのか悪魔が意地悪い表情で私を見つめニヤリと笑う。


「へぇ…本当に?

フッ。君さ…僕と悦楽に浸ってみる?

16でしょ?もし失敗したら何の快楽も知らずに死ぬよりまだ心残りも少ないんじゃない?

たとえどんな方法が失敗しても…。ねぇ?」


いきなり何?


「そう言うことが言いたいんじゃなくて!」

急に怖くなった。


「照れなくてもいいんじゃない?

ここで起こった事は黙っておけばいい。

現世での時間も止まってるんだから、天国に入る時君はまだ処女で入られるよ。

そして沢山神に愛される事だろうよ」


彼が椅子から立ち上がり私にゆっくり近づいてきた。


「そう言えば私が怯んで大人しくいうこと聞くと思った?

私は怖くない貴方はそんな事しない。

私の強行を止めたいから脅してるだけでしょ?」


私は怯みたくなかった。

瞬きせずにまっすぐ目を見返した。


「わかったような口聞くね…。

ミスをカバーしたい僕。

それが絶対に君に何もしない保証になる?」


その瞬間頬を思いっきり掴まれ彼が舌なめずりした。

牙が見える。

牙があるなんて思ってもみなかった。

これも私の理想なの?

明るい瞳なのに暗い赤みがかった陰が見える。

お、襲われる!

どうしよう!

私どうなるの?

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