第8話

「じゃあ名前は何よ教なさいよ…。

で!アンタのミスを誰かにバラしてやるんだから。

そうすればアンタ、まずい事になるんでしょ?!」


男の反応は予想外だった、軽くため息を吐くとゆっくり私を見た。


「教えない…」


「え?」


「僕の名前。知っても君に縁のない名だから。君はこれから天国に行くんだよ?

地獄の住民の名など君が知る必要はないんだよ」

不思議と悲しそうな雰囲気がした。


「じゃ、じゃあ何て呼べばいい?悪魔?」

探るように呟いた。


「いいよ、それで。

あとね、君が言ってた事だけどね、困った事になるのは確かにそうなんだけど、君が思ってるような事じゃないんだよね」

彼の笑顔は妙に優しさに満ちていて奇妙だった。


「君たちが生者だとバレないようにしなければいけない理由は、君たちを守るためなんだよ。

正直、君たちって美味しそうなんだよね。

俺たち悪魔は欲を貪る生き物な訳。

だから…ね、わかるよね?すごく美味しそうなの。

でもミスはミス。責任を持って現世に返すのが僕のすべき事。

でもそれまでの間に、他の悪魔に見つかってしまえば、君たち兄弟は…。

他の悪魔に…食べられちゃう…ってこと。

だから、守るの。

僕が…ね?」


仮にもし彼が本当のことを話しているとしたら、悪魔って意外と人っぽいと言うか何と言うか。

理性があるような何と言うか。

律儀だ。

でも…何だろう、怖い。


「ねぇじゃあ、悪魔さんはその、私達を守ってちゃんと死ねるようにするってこと?」

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