しおりんと扇華のトレジャーボックス

 ある週末の午後、栞はめずらしく扇華の家を訪れていました。

 二人は扇華の部屋でくつろいでいましたが、栞の目に珍しいものが映ります。


「扇華、そのブレスレット、今日初めて見たけど素敵だね」


 扇華は嬉しそうに微笑みます。


「あら、気づいてくれたの? これね、実は私の宝物の一つなんだ」


 栞は少し驚いた表情を浮かべます。


「へえ、扇華にそんなこだわりがあったなんて知らなかった」


 扇華は立ち上がり、小さな木箱を取り出します。


「実はね、私にはちょっとした'トレジャーボックス'があるの。見てみる?」


 扇華が箱を開けると、そこにはいくつかのアクセサリーやアイテムが丁寧に収められていました。


「これは、おばあちゃんからもらったブローチ。昔のアンティークなの」


 扇華は一つ一つのアイテムについて、丁寧に説明していきます。


「このハンカチは、小学校の卒業式の日に両親からもらったの。刺繍がとても素敵でしょう?」


 栞は興味深そうに聞いています。


「それから、これは初めて自分で買ったネックレス。デザインも気に入ってるけど、自分で選んで買ったっていう思い出が特別なの」


 扇華の目は輝き、声には温かみがありました。


 栞は扇華の話に聞き入りながら、彼女の新たな一面を発見したような気がしていました。


「扇華、こんなに思い出がつまったものを大切にしているなんて、素敵だね」


 扇華は少し照れくさそうに笑います。


「ありがとう。でもね、私にとってはこれらのアイテム一つ一つに、大切な思い出や気持ちが詰まっているの。だから、身につけるたびに、その時の気持ちを思い出せるんだ」


 栞はじっと扇華を見つめます。


「そうか、だからいつも扇華は周りのことをよく気にかけているんだね。こういう小さな思い出を大切にする心があるから」


 扇華は優しく微笑みます。


「そうかもしれないね。でも、しおりんだって大切なものがあるでしょ? 例えば、実験ノートとか」


 栞は少し考え込みます。


「そうだね。私も自分なりの'トレジャー'があるのかもしれない」


 二人は顔を見合わせて微笑みました。

 この日、栞は扇華の新たな一面を知り、人それぞれの「大切なもの」の存在を実感したのでした。

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