しおりんと宇宙旅行


 満天の星空が広がる静かな夜、栞は自宅の屋上で望遠鏡を覗いていました。その瞳には、無限に広がる宇宙への憧れが満ちていました。


「はぁ……いつか、あの星々の間を旅してみたいな」


 栞のつぶやきに、隣で寝転んでいた扇華が反応します。


「え? しおりん、宇宙旅行に興味あるの?」


 栞は望遠鏡から顔を上げ、輝く目で扇華を見つめました。


「うん、ずっと憧れてたんだ。宇宙って、まだまだ謎だらけでしょ? その未知の世界を自分の目で見てみたいんだ」


 扇華は驚きつつも、興味深そうに聞いています。


「へぇ、そうなんだ。じゃあ、もし宇宙に行けるようになったら、どこに行きたい?」


 その質問に、栞の目がさらに輝きを増しました。


「まずは月かな。地球のすぐそばにある天体なのに、まだまだ謎が多いんだ。月の裏側を直接見てみたいし、"海"と呼ばれる平原の成り立ちも調べたい」


 栞は熱心に語り始めます。


「それから火星! 生命の痕跡が見つかる可能性があるんだ。火星の極冠や、巨大な火山オリンポス山も見てみたい。あ、それと火星の衛星フォボスとダイモスにも立ち寄りたいな」


 扇華は栞の熱意に圧倒されながらも、楽しそうに聞いています。


「すごいね、しおりん。他にはどんなところがあるの?」


 栞はさらに語り続けます。


「木星の衛星も面白いよ。特にエウロパは表面が氷で覆われていて、その下に液体の海があるかもしれないんだ。もしかしたら、そこに生命が存在するかも……」


 栞の目は遠くを見つめ、まるで既に宇宙を旅しているかのようでした。


 そして栞の宇宙旅行の夢は、太陽系の外縁部へと広がっていきます。


「そうだ! 土星の環も近くで見てみたいな。あの美しい環は、実は無数の氷の粒子でできているんだ。その中を飛行船で進んでいったら、きっと息をのむような光景が広がるはず」


 扇華は目を輝かせて聞いています。


「わぁ、それ素敵! まるでSF映画みたいだね」


 栞は嬉しそうに頷きます。


「うん、でもそれが現実になる日も近いかもしれないんだ。それから、海王星の衛星トリトンにも行ってみたい。そこには、氷の火山があるって言われているんだよ」


「氷の……火山?」


 扇華は首をかしげます。栞は熱心に説明を続けます。


「そう、クライオボルカニズムっていうんだ。水とアンモニアの混合物が、氷の表面から噴出する現象なんだよ。それを間近で見られたら、きっと素晴らしい発見があるはず」


 栞の目は、遠い宇宙を見つめているかのようでした。


「あ、それと冥王星! 今は準惑星に降格されちゃったけど、まだまだ謎が多い天体なんだ。その表面にある"心臓"のような模様の正体も、直接見てみたいな」


 扇華は感心したように栞を見つめています。


「しおりん、本当に宇宙のことをよく知ってるんだね。すごいよ」


 栞は少し照れくさそうに微笑みます。


「ありがとう、扇華。でも、知れば知るほど、まだ分からないことがたくさんあるって気づくんだ。だからこそ、自分の目で確かめたいんだよ」


 夜空を見上げる栞の瞳に、無限の宇宙への憧れが映り込んでいました。


 そして栞の宇宙旅行の夢は、さらに遠くへと広がっていきます。


「でもね、扇華。私の本当の夢は、太陽系の外にあるんだ」


 扇華は驚いた様子で栞を見つめます。


「え? そんな遠くまで行けるの?」


 栞は少し恥ずかしそうに、でも目を輝かせながら答えます。


「今はまだ難しいけど、いつかはきっと……。例えば、アルファ・ケンタウリに行ってみたいんだ」

「アルファ・ケンタウリ?」


 扇華が首をかしげると、栞は熱心に説明を始めます。


「うん、太陽系に最も近い恒星系なんだ。そこには、地球に似た惑星がある可能性があるんだよ。もし本当にあったら、そこに生命はいるのかな? どんな景色が広がっているんだろう?」


 栞の声には、好奇心と冒険心が溢れています。


「それから、オリオン座の方向にある巨大な分子雲も見てみたい。そこでは今も新しい星が生まれ続けているんだ。星の誕生の瞬間を、この目で見られたら……」


 扇華は栞の熱意に圧倒されながらも、優しく微笑みます。


「しおりんの夢、すごく壮大だね。でも、とってもロマンチックだと思う」


 栞は少し照れくさそうに頷きます。


「ありがとう、扇華。でも、これって科学的な探求心なんだよ。宇宙の謎を解き明かすことで、私たちの存在の意味も分かるかもしれない。それに、新しい技術や資源の発見にもつながるかも」


 扇華は感心したように栞を見つめます。


「そっか、宇宙旅行には色んな意味があるんだね」


 栞は熱心に頷きます。


「うん、だからこそ、いつか必ず宇宙に行きたいんだ。そのために、今からできることを一つずつ積み重ねていくんだ」


 夜空には、数えきれないほどの星々が輝いています。その一つ一つが、栞の夢と希望を映し出しているかのようでした。

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