しおりんと謎の空気
ある平和な日曜日の午後、栞と扇華は栞の部屋でくつろいでいました。
扇華が雑誌を読んでいると、ふと「空気を読まないとね」というフレーズが目に入りました。
「あるよね~、空気を読まないといけないとき」と扇華がつぶやくと、栞が顔を上げました。
「空気を読む?」
栞は首をかしげます。
「その空気ってなに?」
扇華は少し驚いた様子で答えました。
「え? 普通に、場の雰囲気とかそういうことだよ」
しかし、栞の表情はますます真剣になっていきます。
「雰囲気? でも、雰囲気って目に見えないよね。どうやって読むの?」
扇華は困惑しながらも、説明を試みます。
「うーん、その場の状況を察知して、適切に行動することかな」
栞は眉をひそめて考え込みます。
「状況を察知……でも、それって物理的な現象なの? 化学的な反応?」
扇華は苦笑いしながら答えます。
「そういう意味じゃないんだよ、考えすぎだよ、しおりん」
しかし、栞の探究心に火がついてしまいました。
「待って、これは面白い研究テーマかもしれない!」
栞は興奮気味に言います。
「空気を読むための装置を開発できるかもしれないよ」
栞はノートを取り出し、熱心にアイデアを書き始めました。
「まず、人間の表情と声のトーンを分析するAIシステムが必要だね。それから、部屋の温度、湿度、二酸化炭素濃度も測定しないと……」
扇華はため息をつきながらも、栞の真剣な様子に微笑みました。
「しおりん、それはちょっと違うと思うよ」
しかし、栞は止まりません。
「でも、考えてみて扇華。もし本当に『空気』を科学的に分析できたら、コミュニケーションが苦手な人たちの助けになるんじゃない?(※私含む)」
扇華は少し考え込みます。
「確かに、そういう意味では面白いかも...」
栞はますます熱心になります。
「そうでしょ? 例えば、会議室に置いておけば、場の雰囲気が悪くなったときに警告を出せるかもしれない。あ、待って、もしかしたら外交問題の解決にも使えるかも!」
扇華は栞の発想の飛躍に驚きながらも、優しく諭そうとします。
「しおりん、それはちょっと……」
しかし、栞の目は既に遠くを見ていました。
「よし、まずは予備実験からだ。扇華、協力してくれる?」
扇華はため息をつきながらも、笑顔で答えます。
「もちろん。でも、本当の空気を読むことも忘れないでね」
栞は少し困惑した表情を見せましたが、すぐに笑顔になりました。
「うん、わかった……かも。でも、この研究は続けるよ!」
こうして、栞の「空気を読む装置」開発プロジェクトが始まりました。それが成功するかどうかは別として、栞と扇華の日常に、また新たな話題が加わったのでした。
モウモウは二人のやり取りを見守りながら、「人間って本当に不思議な生き物だにゃ」とでも思っていたのかもしれません。
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