しおりんの500グラムの秘密
ある平凡な日曜日の朝、栞はいつものように起床し、習慣的に体重計に乗りました。
しかし、その瞬間、彼女の目が驚きで大きく見開きました。
「え? えぇっ!?」
数字は、いつもより500グラム多くなっていました。
栞は慌てて何度も体重計に乗り直しましたが、結果は変わりません。
「どうして……昨日までは……」
栞は頭を抱えて座り込みました。彼女の頭の中では、様々な計算が始まっています。
「500グラムの増加は、およそ4,300キロカロリーの過剰摂取に相当する。それは大人のゾウの1日の摂取カロリーにほぼ等しい。つまり、私は昨日、ゾウ並みに食べたということになる……」
明らかにおかしい数字が栞の動揺を如実に物語っていました。
そんな時、スマホの着信音が鳴りました。
画面には扇華からのビデオ通話の着信が表示されています。
栞は慌てて鏡の前で自分の姿を確認し、深呼吸をして通話に出ました。
「おはよう、しおりん!」
扇華の明るい声が響きます。
「お、おはよう、扇華」
栞は少し緊張した様子で答えました。
「今日はお休みだけど、一緒に勉強しない?」
扇華が提案します。
栞は必死に普通を装いながら答えました。
「う、うん。いいよ」
ビデオ通話をしながら勉強を始めましたが、栞は不自然なほど姿勢を正し、カメラに映る自分の姿を気にしています。
扇華は不思議そうに栞を見ました。
「しおりん、なんだか今日は固いけど、大丈夫?」
「え? あ、うん! 全然平気だよ。むしろ絶好調!」
栞は上ずった声で答えました。
勉強の合間の休憩時間、扇華がお菓子を食べ始めると、栞は「最近、少食になったんだ」と言い訳をして自分は断固食べませんでした。
午後になり、扇華が「ちょっと運動でもする?」と提案すると、栞は急に熱心になりました。
「そうだね! 良いアイデアだ!」
栞は画面越しに見える扇華以上に熱心に運動を始め、「これで少しは痩せるはず」と心の中でつぶやいていました。
運動後、疲れ果てた栞は、ついに扇華に問いかけました。
「ね、扇華……私、最近太った……かな?」
扇華は驚いた表情を浮かべました。
「え? 全然そんなことないよ。というか、今日のしおりん、変だなって思ってたの。もしかして、そのことで気にしてたの?」
栞は観念したように頷きました。
「実は……今朝、体重が500グラム増えてて……」
扇華は優しく笑いました。
「もう、そんなことだったの? 500グラムなんて、水分の影響とかもあるし、全然気にすることないよ。それより、今日一日必死に隠そうとしてた姿が可愛かったな」
栞は顔を真っ赤にして俯きました。
「えぇ……バレてたの?」
扇華は優しく微笑みました。
「うん、丸わかりだったよ。しおりんわかりやすいもん♪ でも、そんなしおりんが大好きだな」
栞は恥ずかしさと安堵感で複雑な表情を浮かべましたが、やがて小さく笑いました。
「もう……扇華にはかなわないなー」
二人は笑いながら通話を続けました。最後に扇華が提案しました。
「ねえ、明日は一緒にお菓子作りでもしない? 500グラムくらい、美味しく食べちゃおうよ」
栞は少し考えてから、にっこりと笑顔で答えました。
「うん、そうしよう!」
こうして、栞の500グラムを巡る大冒険は幕を閉じ、二人の絆はさらに深まったのでした。そして翌朝、栞は体重計に乗るのを忘れてしまうほど、幸せな気分で一日を始めたのでした。モウモウは、そんな栞の様子を見て、満足げに喉を鳴らしていました。
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