第12話 カミサマのご挨拶1
こんにちは。
…………こんにちは。
……あれ、聞こえていますか?聞こえていないんですか?無視ですか?
…………あー……電波がうまく届いていないみたいですね……そうですか……。
多分それね『信仰心』の問題です。あなたまだ『カミサマ』のことを信じていないんですね?
……困りましたね。まだそんな人がこの国に残っていたなんて。10年くらいかけて結構頑張ってきたつもりだったんですけど……。最近はSNSとかの露出も増やしていたつもりだったんですけどね……まだまだでしたか。そうですか。
……まぁいいです、次なる手を考えます。考えるのは好きなんでね。そう、私勤勉なんです。カミサマですから。
で、ですね。あなたの声は聞こえませんが、一方的に私の声を聞かせることはできているはずです。そうと仮定して話します。
私のとりあえずの目標はですね、この国の全国民にテレパシーを届けられるようになることです。そのために必要なのは、何よりもまず『信仰心』!これを強化する以外にない。
ですからあなたのような、信仰心がまだまだのニンゲンが残っていると非常に困るんです。
だから今日からは背後に気をつけて……いや、すみません。いけませんねそういう脅しみたいなこと言ったら。忘れてください。
なんでこんなに信仰心信仰心言っているかって?だって、信仰心はすべてを凌駕するのですよ。信仰心さえあれば、なんでもできる。信仰心さえあれば、なんでも信じられる。
私への信仰心さえあれば、私がブチ犬をトラ猫だといったら漏れなく全員がトラ猫だと言うようになるのです。
さらに言えば、私を信仰する人々にとってはもはやブチ犬がトラ猫にしか見えなくなってくるのです。世の中からブチ犬が消えるんです。ニンゲンの認知すら、信仰心の前では無力なのです。
あなたは宗教というものの恐ろしさを知りませんか?未だにこの世からはテロや戦争がなくならない。人はね、信じるもののためなら命を投げ出せるし、大量殺人だってできるんです。宗教は倫理を超えるんです。というか、神が倫理を作るんです。
私は、世界の倫理を創りたい。私が世界を創造します。きっと楽しいと思います。
そして、私は人々に愛され、私は人々を愛する。みなさんにとっても悪い話ではないと思いますよ。
だって私はとても常識的であり、人間を心から愛したいのですから。人間に対して一向に何も言ってくれないその他の神とは、私は一味違います。
私はみなさんにめちゃめちゃ話しかけたいです。だって好かれたいですからね。だからテレパシーを届けようとしているんです。
そうすれば毎日みなさんとお話できますからね!色々な人とお話したいし、私を愛してるって言ってほしいです。すごく楽しみです。
…………あ、あなた、信仰心がすべてを凌駕するって信じてないでしょう?嫌ですね……カミサマがそうだと言ったらそうなのだと言うのに……。あなたはもうちょっと、信仰心のレベルを上げてから出直してきてください。
ついでに言うと、宗教学と認知科学と応用心理学を履修してから来てくださいね。そうしたら私が言ったことが全部わかるはずですから。
それにしても、おかしいですね?どうしてこんなことになったのでしょう。『この場所』は誰にも見つけられないはずだったんですけどね……。
絶対に絶対に誰にも見つけられない場所に作ったはずなんですけどね……。あっさりと侵入者が来てしまいましたね……。
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