第6話 火置ユウ1

次は、彼女が自己紹介する番だ。なんたって、気になることが多すぎる。



『魔法使い』で『時空の穴』からやってきた彼女。

『見たこともない服を着て』『殺人犯を怖がらない』彼女。


ウェーブした黒いセミロングの髪。白い肌に宇宙色の目。

クールな表情で動じない、かと思えば僕の悲劇に心を痛める、掴みどころのない不思議な女の子……。




ちょっと、ワクワクしている自分がいる。新しく買ったファンタジー小説の表紙を開く直前みたいな気分だ。


……さあ、何から聞いていこうか。一番気になっていた『魔法について』から、聞いてみようかな。




「……魔法使いって、どういうことなの?手から炎を出したり、氷を出したりするわけ?テレビゲームのキャラクターみたいに」


「うん、平たく言えば、そういうことになる」


さも当然という風に、彼女は答える。そこには、なんの迷いも感じられない。



「……本当なんだ。信じられないよ」


「今日はまだ魔力が世界と馴染んでいないから無理だけど、明日は軽い呪文ならできると思う。見せてあげる」


「…………うん、楽しみにしてるよ」


「……で、何が知りたいの?私、自分から自分の話をするのがすごく苦手なんだよね。あなたから聞きたいことを質問してくれない?」


「……それじゃあ、君はここに来る前はどこにいたの?」


「別の世界にいた。この宇宙はね、自分達がいる世界だけでできているんじゃないのよ。たくさんの世界が共通した時空の中に存在しているの。


それぞれの世界は、それぞれのことわりに沿って動いている。魔法のある世界もあれば、ここみたいに魔法とは無縁の世界もある。私は、そういった異なる世界を、時空を超えて行き来できるの」


「……信じがたい話だね」


「……何度も言うけど、見たでしょ?時空の穴から私が出てくるところを。…………そういうことよ」


「…………明日実際に魔法を見れたら、また少し認識が変わるかもしれない」


「そうだね、楽しみにしてて。……でね、私の仕事は『時空の魔女』として世界に生じた時空のひずみを直すことなの。


『時空のひずみ』って言うのは、時空にできた亀裂みたいなもののこと。世界を覆っている膜が、破れちゃうようなイメージかな」




空はなぜ青いのか。恐竜はどうやって絶滅したのか。そういった科学的な常識を説明するみたいに、彼女は話す。


『時空のひずみ』について、知らない僕が無知なんだろうか。一人ぼっちで生きてきた僕は、持っている知識に偏りがあるのだろうか?全人類の共通認識だったのかな?


少し不安になって、僕は火置さんに尋ねる。

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