右園死児報告甲 報告八号 聖域潜入可能性

報告案件 聖域潜入可能性

報告者 神谷修二


 神谷修二からの重大報告があった。彼は聖域出現後、その特性を独自調査していたが、このほど彼自身が聖域内への潜入に成功した。

 聖域内に立ち入った人間は腐敗か変異体化するというのが定説であったが、神谷は例外を発見。それは右園死児化した人間、あるいは聖域以外の災害誘引力の影響下にある人間だ。これらは聖域内においても腐敗せず、変異もしない。物体状の右園死児も同様であると思われる。

 神谷は、死児や右園宮との関わりで得た経験、さらには火麻谷の売春婦の証言などから、災害誘引力同士の中和性質に気づいた。即ちある災害誘引力を保有するものは、別種の災害誘引力に殺されにくくなるということだ。右園死児に殺されない存在は、右園死児か、それに近しい者。

 ただし、かつての羽田電次と封印用生体七号の事例のように、直接的な物理戦闘や攻撃に関してはこの限りではない。あくまで超自然的な変状や死をまぬがれるというだけだ。しかも右園死児の影響をさほど強く受けていない場合は、ゆるやかに腐敗や発狂が始まる。

 明確に右園死児化していない者の防御力には、個体差があるということだ。神谷修二が最大防御力の持ち主とするなら、たとえばかつて右園死児の歌をジュークボックスで一度だけ再生した者などが最小防御力の持ち主に分類される。後者は腐敗に対しては、おそらく常人とほとんど変わらぬ反応を示すだろう。

 いずれにせよ、これは朗報である。空中電波塔とエツランシャに接近できる人材可能性が発掘された。神谷修二は現在精密検査中。右園死児的属性を持つメンバーを厳選召集し、対エツランシャの攻略作戦を立てる。

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