報告案件　金輪部隊変異体

報告者　雪村瞳（スパイ・リヨン）

　災害誘引聖域境界で単独ゲリラ戦を行っていた報告者が、ビル内から金輪部隊三名をライフルで狙撃。一名が聖域内に転げ込んだ。そのまま腐敗を始めたが、数秒後に活動再開。ヘルメットから肉色の蛸の触腕のようなものが複数露出した。

　聖域内は汚染集合体（神像）やエツランシャ、空中電波塔そのものの災害誘引力が作用している。その効果の発現形態のひとつと思われる。変異した金輪部隊は腐敗した肉体を触腕で引きずり移動、報告者がさらに五弾撃ち込んだが倒れず、聖域の奥に逃げ去った。

　報告者が双眼鏡で聖域内を目視調査したところ、他にも数体の触腕移動物を確認。いずれももと金輪部隊であった。ただし聖域内で死亡した生物がすべて変異するわけではなく、変異することなく完全に腐敗停止した死体の方が圧倒的に多く観測された。

　変異体はあくまで聖域内で活動する習性があり、聖域の外に出ようとはしない。報告者が奪取した金輪部隊のバトルライフルを用い、至近で全弾撃ち込み一体を駆除したが、死体を回収できず詳しい検査は叶わなかった。しかし、そもそもが生きた人間は聖域に立ち入ることができないので、この変異体が人間を襲うことはないと思われる。現在金輪部隊以外から変異した個体は確認されていない。