第35話 再会

「やめて下さいっ!」


俺が家に帰ろうとしていた時、そんな声が聞こえてきた。


「あれ、あの女の子…」

茶髪セミロングを見て思い出した。俺が森本和樹になってすぐにナンパされていた女の子じゃねぇか!…っていうかまたナンパされてるのか。

男は二人組だがまぁ見たからには助けに行くとするか。


「おい、その辺にしとけよ。女の子嫌がってるだろうが」

「あぁ、なんだてめぇ……」

男二人組は俺の顔を見た途端、無言になった。

(うんうん!分かるよ~!森本和樹の見た目ってマジ怖いからね~!)


咲や桜、正人や心愛先輩が普通に話しかけてくれるから時々忘れるがこの見た目はかなり目を引く。…色々な意味で。


「さっさとあっち行けよ」

俺は怖そうな雰囲気で睨んでみた。

「……行くぞっ!」

男二人組は走り去って行った。


「…やれやれ」

「…あ、あのっ!」

「ん?おぉ、大丈夫だった?」

「はい。本当に助かりました!ありがとうございますっ!」

「怪我とかもしてない?」

「はいっ!あ、あの以前も助けてくれましたよね?」

「そんな大した事はしてないけどね。」

「またお会い出来て嬉しいですっ!ずっと、またお会いしたかったんです!」

「そ、そうなんだ…」


「あの…またお会い出来た時の約束覚えてますか?」

…約束?全く覚えがないんだが。


「あ~…すまん。ちょっと記憶にないんだが何を約束したっけ?」

「名前を教えてくれる約束です。今度お会い出来た時に教えてくれると言ってましたよね?」

「あぁ~…そうだったな。じゃあ改めまして俺の名前は森本和樹。よろしく…なのかな」

「私の名前は田口春香ですっ!よろしくお願いしますっ!」


そう言うと田口さんは手を差し出してきた。

ん?握手って事なのかな?

俺も片手を差し出すと田口さんは両手で俺の手を握ってきた。

「わ~!森本さんの手すごく逞しいです♪」

「そ、そうか?」

「はいっ!あっ…!すいませんっ!私ったら森本さんの手に夢中になっちゃってました…」

「お、おう。別に構わないが…」

田口さんは顔を真っ赤にしながら、名残惜しそうに俺の手を離した。


「あ、あの…森本さんっ!!」

「ど、どうした?」

「良かったら連絡先を教えて頂けませんか?」

「連絡先?」

「前回と今回のお礼をさせて頂きたいんですっ!」

「前も言ったかもしれないけど全然大した事してないからさ。お礼なんていらないぞ?」

「じ、じゃあ森本さんにまたお会いしたいので連絡先を教えて下さいっ!」

「おう。全然構わないぞ」

俺達は互いにスマホを取り出し連絡先を交換した。


「ありがとうございます!またすぐにご連絡しますね♪助けてくれて本当にありがとうございました!では今日はこれで失礼しますね!」

田口さんはそう言って頭をペコリと下げた後、小走りでどこかに向かって行った。

「…さすがに疲れたな」

今度こそ無事に家に帰って来る事ができた。

母さんは今日も仕事で帰りが遅くなるらしい。

スマホを見ると数件のメッセージが届いていた。


俺はベッドに転がってメッセージの返信をしていくのだった。

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