第22話 理解した

テストが全科目終了した。


「終わった~…」

「お疲れ様。手応えは?」

桜が俺の席にやってきた。


「ぼちぼちってとこかな…。委員長は?」

「私はバッチリよ」

「…そうか」

ちなみに二人きりの時以外は委員長呼びを続けている。みんなの前で名前を呼ばれるのは恥ずかしいらしい。


「二人とも!テストどうだった?」

正人が朝と変わらぬハイテンションで話しかけてきた。

「ぼちぼちってところだ」

「私はバッチリよ」

「僕もまぁまぁ自信があるよ!」


「和樹~♪」

咲が俺達のクラスに入ってきた。


ちなみに気にしないようにしているが俺達へのクラスメイトの視線がスゴい。

悪い評判がある森本和樹に、クラスの爽やかイケメン桜田正人、真面目な委員長、そして隣のクラスのギャルっぽい咲。

どうみてもタイプが違う四人が仲良く集まっているのが不思議なのは分かるけどな。

…だって俺も不思議だもん。


「おう。咲はテストどうだった?」

「結構出来たよ~!和樹は?」

「…ぼちぼちってところだ」


「よ~し!テストも終わった事だしこのメンバーでどこか遊びに行こうよ!」

正人、テンション高いなぁ。っていうかこいつ恋愛ゲームの主人公なのに彼女とかいないのか?…よし、聞いてみよう。


「遊びに行くのは構わないが、彼女とは遊びに行かなくていいのか?」

「え?彼女?やだなぁ、和樹!僕に彼女なんていないよ!」

…あれ?マジでゲームと全然違うなぁ。


「っていうかそういう和樹こそ彼女と遊びに行かないの?」


「「は?」」


俺の周りの温度が急激に下がった気がする。


「彼女いるの、和樹?」

「ふーん、あなた彼女いたのね?」

…二人がめちゃくちゃ怖いんだが!


「ま、正人!適当な事言うなよ、お前。俺には彼女なんていねぇよっ!」

「そうなのか~!ゴメンゴメン!」

…こいつ、ぶん殴っていいかな。


「ちょっとあんた適当な事言わないでよ!」

「全くその通りね。不確定な事を軽々しく言うものではないわね。」


「す、すみませ~んっ!!」

正人は顔が真っ青になっている。


「ま、まぁそれはともかく遊びに行くの週末とかはどうだ?」

「私は大丈夫だよ~♪」

「私も大丈夫よ」

「ぼ、僕も大丈夫」


「詳しい事はまた後で決めようぜ」

「うん!」「ええ」「…うん」


正人のテンションがテスト前よりも下がってしまった。


俺は理解した。

女の子を怒らせてはいけないとな。

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