第20話 日曜日2
…これ、ペアシートになってるんじゃね?
「どうかしたの?」
「あぁ…。座席がペアシートみたいなんだ」
「そ、そうなのね!…別に構わないわよ」
「そ、そうか」
それから席に座ったのだが、気づいた事がある。座席がやけにコンパクトになっている。
なので、二人で座ると身体が当たってしまう。前の方にもペアシートがあってそこにカップルらしき男女が座っているのだが、めちゃくちゃイチャイチャしている。
桜もそのカップルの方をガン見していた。
「…あんな風にするのね」
「ん?何か言ったか?」
「な、何も言ってないわよ!」
何か言っていたような気がするが、まぁいいか。少し動く度に桜の肩やら膝が当たるので、めちゃくちゃ意識してしまう。
桜の方を見ると桜も顔を赤くしているので、
お互い様か。
映画が始まった。モグちゃんの大冒険。
俺は詳しく知らないがテレビアニメがシリーズ化までされて放送されているらしい。
この劇場版は初見の人でも分かるようにと冒頭で大まかなあらすじが入っていた。
なのでテレビアニメを見ていない俺でもすぐに内容を理解できた。
映画の途中で桜の方をチラッと見ると、目が合った。
…咄嗟に目を逸らしたが桜は何でこっち見てたんだ?少し考えてもよく分からんので、映画に集中する事にした。
映画が終わった。
「いや~、結構面白かったな!テレビアニメシリーズも今度チェックしてみたくなったぜ!」
「そうね。モグちゃんの頑張りが非常に感動したわ」
俺達は感想を言い合いながら、グッズ売り場を見回っていた。
「ちょっと買ってくるわ!」
「ええ」
俺は桜にそう言ってレジへと向かった。
「何を買ったの?」
レジから戻ってきた俺に桜が聞いてきた。
「これだ。良かったらもらってくれねぇか?」
「…え?私に?」
「今日の映画デート記念にな」
俺が桜に渡したのはモグちゃんの小さなぬいぐるみだ。劇場限定バージョンらしい。
「ぬいぐるみとかいらなかったか?」
「ううん…ありがとう。大切にするわ」
桜は大事そうに抱き抱えてくれていた。
映画館を後にした俺達は喫茶店でコーヒーを飲みながら映画の感想を語り合った。
その後、本屋に行き桜に参考書を選んでもらったりしていると、あっという間に時間が経った。
「家まで送ってくぞ」
「ありがとう」
今は桜の家まで一緒に歩いている。
「今日はありがとう。とても楽しかったわ」
「俺も楽しかったぜ。ありがとうな」
「そ、そのまた一緒に映画観に行ってくれるかしら?」
「もちろん」
「ここまでで大丈夫よ。ありがとう。じゃあまた明日」
「おう、また明日」
「はぁ~」
桜は自分の部屋に入ってからため息をついた。彼とのお出かけはすごく楽しかった。
…でも一つ心残りがある。
「映画観ながら手を繋いでみたかったなぁ」
映画の途中、チラチラ彼の方を見ていると、目が合った。咄嗟に目を逸らしてしまったが
あの時がチャンスだったかもしれない…。
「次は頑張らなきゃ!」
桜はそう思いながら、もらったモグちゃんのぬいぐるみを抱き締めるのだった。
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